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第94話:聖法力がなかったので(2)

 クエム地方は、敵の急襲を防ぐためにあちこちに影が潜んでいる。

 影は、優秀な諜報部員として、国中の情報を交換している。

 聖女時代の経験もあるので、私は彼らを手足のように動かす事ができる。

 前世では不穏分子の抹殺に使っていたが、今世では人々の安全を守るための目として使っている。


 そんなある日、影からある情報が届いた。

 数日前、クエム地方に怪しい男女がやってきた。彼らに接触すると、いきなり攻撃を仕掛けられ、数名の影が負傷したそうだ。

 その男女は徐々にこの町に近づいて来ている。

 アビスベルゼの武人ではないようだが、女性の使用する剣術が四大門派の『紅蓮剣』に類似していることがわかった。

 紅蓮剣という言葉に、私は指を止める。


 私の中で、紅蓮剣という言葉を聞くと、スカーレッドがまず一番に思い浮かぶ。

 男女二人の武人というのも気になる。


 彼らである可能性は低いが、いきなり危害を加えてきた時点で領主代理として無視することはできない。

 影に彼らの居場所を探るように伝え、私は外出の準備を始めた。


 マチルダを呼んで、外出用の衣装を持ってくるように伝えた。

 その際、普段着ているの衣装ではなく、普段は押し入れにしまっている『エメロード教の神官衣装』を持ってきてもらった。


「この衣装……特注で見繕ったのに、お嬢様が一度も着ませんでしたので、お気に召さないのかな? とずっと心配しておりました」


 マチルダは、私に衣装を着せながらそう言った。

 たしかに事情を知らない者が見たら、私の行動は奇妙に映るだろう。


 私が現在着ている衣装は、聖女時代の神官衣装を模したもの。

 クエム地方の領主令嬢に転生し、自身の立場も大きく変化した。


 価値観が合わないから排除する、というような過激な行動はしなくなったが、私が秩序神エメロードの忠実なしもべであることは今も変わっていない。


 エメロード教の理想とする秩序のとれた世界は、私の領地経営の指標である。

 白道の武人としてエメロード教の理想統治を目指すことは、前世よりも遥かに難しいことだ。


 世の中には、殺さなければ解決しないような、どうしようもない輩が一定数存在する。

 そのため、私の白道への考え方は、そういう意味では中途半端な思想と言える。


 しかし、黒道に堕ちた経験がある私だからこそ、見えてくる世界があった。




 自分の人生を犠牲にしても、世界はより良くなるとは限らないことだ。




 前世の私は正しい行動をしてるように見えて、実際はたいへん傲慢な考えだった。

 そんなシンプルな答えに気づくことができず、私は理想を貫き続けた。

 その結果、後悔だけが残ってロベルト達に殺された。



 幸せになりたい。

 聖女として認められたい。



 どちらも嘘偽りない本当の気持ち。

 現に私は、いまも聖女として評価されたいと心の底から思っている。


 その名残がこの神官衣装だ。

 もしルクスがこの衣装を着ている私を見れば当時のトラウマが蘇ってひっくり返るだろう。


 姿見鏡に映る私を眺めながら、当時の自分を思い返す。

 昔の私はたしかに間違った道に進んでいたかもしれない。しかし、そんな自分がいるからいまの私がいる。


 私は、傲慢な聖女であった過去を決して忘れない。そしてこれからも、傲慢な聖女であり続けよう。

 世の中を少しでも良くしていきたいから、民の笑顔が少しでも増えて欲しいから、大切な人と少しでも長く一緒にいたいから。


 私一人が頑張ったところで世界は決して変わらない。しかし、それが聖女としての歩みを止める理由には決してならない。

 秩序神エメロードの代行者として、『少しでも』というプラスの気持ちを胸に、私は最前線を常に走り続ける。


 それこそが、私なりに解釈した、エメロード教の聖女としての在り方だ。


 剣を手に取り、自身の鼻先に近づけて嗅いでみる。

 昔のような血の匂いはしなくなっていた。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

セレナード:エメロード教の聖女。転生後は反省して心を入れ替えているが、腹黒なのは変わっていない。


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