第85話:天魔城砦(完)
ギルファードを撃破したタイミングで、城全体に鈴の音が鳴り響いた。
ロゼに確認したところ、一次試験終了の報せのようだ。
試験期間は三日と聞いていたが、ギルファードが出現したので予定が変わったのだろう。
もしくは別の要因か。いずれにせよ、試験が終了したのならそれに従うだけだ。
しばらくその場で待っていると、アリアンナと合流することに成功した。
アリアンナの側にはザイン達がいて、朱雀団のメンバーは全員無事であった。
「うわーん! ルクスさーん!」
アリアンナは涙交じりで俺に抱き着いてきた。
試験に参加した事で精神的にも強くなったかと期待したが、あまり効果はなかったようだ。
「ルクスさんも試験に参加なさっていたんですね」
凛花が話しかけてくる。
俺は試験に参加した事情を説明した。アリアンナを救出するためと伝えると彼女は納得した。
さらに数分後、今度は青龍団とも再会した。
イーノックはもちろんのこと、目隠れ少女のブランも生き残っていたようだ。
「ザインよ。朱雀団は合計でメダルを何個手にいれた?」
「え? 27個だけど」
「ははは! 俺達青龍団の勝ちだな。こっちは37個だ」
イーノックは勝ち誇ったように笑う。ザインは悔しそうな表情を浮かべた。
凛花は呆れた表情でイーノックに対してため息を吐いた。
「ル、ルクスさん。一次試験が終了しましたが、二次試験のためのメダルはお持ちですか?」
目隠れ少女のブランがおどおどしながら話しかけてくる。
表情は緊張しており、心なしか頬も赤い。
俺は別に二次試験に行きたいわけではないのだが、尋ねられたからには答えるのが一般的だろう。
俺は手提げ袋からメダルを出した。
じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら!
「「「「「「「 !!!!!!? 」」」」」」」」
その場にいた全員が驚愕した。
「る、ルクスさん!? そのメダルの数はなんですか!?」とザインが慌てる。
「かかってきた奴らを全員倒してたら自然と集まったんだ」
「だ、だとしても多すぎです!? これいったい何枚あるんですか!?」
「えー。俺が記憶してる限りだと最低でも50枚は超えてるだろうな」
「最低50枚!?」
その言葉にザインは尻もちをついた。
「おっさんすげぇ……!」
と、イーノックが尊敬の眼差しを向ける。
尋ねてきたブランはというと驚きのあまり放心状態だ。
やれやれ、別に驚かせるつもりはなかったんだけどな。
少し反省しながら俺はみんなと一緒に天魔城砦をあとにした。
それから半日後、イェルがぷんすか怒りながら病院まで戻ってきた。
どうやらあれからずっとアリアンナの行方を捜索していたようだ。
完全に行き違いになってしまったようで、俺達が帰っていた事にも気づかず、城の中をひたすらウロウロしていたイェルに同情した。
「アリアンナさんと再会できたらすぐに合図を送るって、城に入る前に約束したじゃないですか。アナタが連絡しないからずっと一人で探していたんですよ」
イェルは怒気を強めてそう言った。
「すまない。完全に忘れていた」
「……はあ。まあ別にいいですよ。アリアンナさんも無事に見つかったみたいですから」
イェルは拗ねたような仕草でそう言った。
その後、イェルはトボトボと一人ホテルへと戻っていった。
 




