表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/110

第78話:巨魔試験(14)

 病院を離れた俺は、港近くの浜辺で、体育座りの体勢で海を眺めていた。

 風はなく、波の音だけが等間隔で聞こえてくる。

 俺の複雑な感情とは対照的に、夜の海は混じりけのない心のように落ち着いていた。

 しばらくその場で波の動きを観察していると、背後から足音が聞こえてきた。

 俺は肩越しに後ろを振り返る。

 正体はロゼだった。

 黙々と歩いてくる彼女は、俺の右隣に立つと、「よいしょっ」と呟きながら俺の右隣に座った。

 彼女の表情は柔らかく、俺の目を真っすぐと見ていた。


「イェルさんめちゃくちゃ怒っていたわよ。アナタに無視されたって。ダメよ、女の子の話を無視するなんて」


 冗談を言うような口調で、少し笑いながらロゼがそう伝えた。

 言われてみればすれ違いざまに話しかけられたような気がする。

 怒らせてしまったのならあとで謝らないとな。


「そうだな。反省してる。本人には俺の方からあとで謝っておくよ」

「よろしい。……で、私がここに来た理由なんだけど、当ててみる?」

「説明してくれるんじゃないのか?」

「普通に話すだけだと普段の会話と変わらないでしょう。せっかくバカンスに来てるんだから、普段と趣向を変えてみるのも面白いと思わない?」


 正確にはバカンスではなく巨魔試験を受けるためにここに来たのだが、そんな細かい事を指摘してたら面倒くさい奴と思われそうだ。


「セレナードの件か?」

「誰よそれ。また知らない女?」


 どうやら全然違うらしい。

 そらそうか。

 ロゼとセレナードは直接の面識がない。

 セレナードが持病で倒れたというのは、俺が関係してる時点で一応把握してるが、彼女自身はセレナードに対してあまり興味がないのか、俺が病院に残ると答えた際もあまり反応を示さなかった。

 尤も、いまは自分の試験に集中したいというのもあるのだろう。


 セレナードが違うとなると、本当に何の理由でここまでやってきたのだろう。

 順当にアリアンナか?


「アリアンナか?」

「大正解♪」


 やったぜ。

 今度は正解できたようだ。


「アリアンナがどうかしたのか?」

「別にどうもしてないわよ。普段と一緒。元気笑顔で太陽みたいに眩しいわ」

「アリアンナらしいな」

「そんな彼女が、今のアナタを見たらどんな表情をするかしら?」


 ロゼは、いたずらっぽい笑みを浮かべながら意地悪な質問を投げかけた。


「まるで今の俺が笑顔ではないみたいだな」

「だって今のアナタの表情、とても苦しそうだもの」

「……」


 ロゼは、俺の右手に自身の手を重ねる。

 彼女の優しい温もりが肌を通してじんわりと伝わってきた。


「私はアナタの事が大好きよ。きっとアリアンナも私と同じ気持ち。だから、全部自分一人で抱え込まないで。悩んでいることがあるなら、私達を信じて、全部打ち明けて欲しいの」


 誰かを信じる。

 簡単なようで難しい課題だ。

 でも、アリアンナを信じて馬車でロベルトのことを打ち明けた時、少しだけ気が楽になった。

 だから今回もロゼを信じてみよう。


 俺は、自分がパーティを追放された事と、その仲間の一人があの子である事を全部打ち明けた。

 俺の話を全部聞いたロゼは、満面の笑みを浮かべてその場に立ち上がった。


「そんな小さな問題なら簡単に解決できるわ!」

「小さくはないと思うが……」

「私からしてみれば小さいわ。だってコレで解決できるもの!」


 ロゼはそう告げると、俺に剣を渡した。

 宝剣とは別にロゼが普段から携帯している訓練用の剣。


「ルクス! アビスベルゼで意見が対立した時、どうすれば一番シンプルに解決すると思う?」


 この流れ……。

 もしや……。


「そう! あの子と決闘すればいいのよ! お互いに剣を交わせばすべて伝わるわ!」


 ……とまあこんな具合で急遽、俺とセレナードの決闘が決められてしまった。

 当然俺達に拒否権などなく、数時間前に手術したはずのセレナードをロゼは病室から叩き出して、首根っこを掴んで力任せに決闘場まで引きずっている。


 あ、あのロゼさん?

 この子、いまはぜったい安静にしてなきゃいけないんですけど……。

 彼女を担当している主治医が慌てて止めに入るが、ロゼは主治医の顔面をぶん殴って気絶させた。


 ちなみにセレナードはマジで動揺しており、現在なにが起きてるのか理解できてないご様子。

 というか、理解できる奴はおそらくこの世にいないだろう。



 相談する相手を絶対間違えた。

 俺は心からそう思った。


 断言できる。

 ロゼは、俺が出会った奴の中で一番ヤベー奴だった。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ロゼ:天魔の一人娘。


【読者の皆さまへ】

この小説を読んで


「面白い!」

「続きが気になる!」


と思われたら、↓の☆☆☆☆☆ボタンを★★★★★に変えて応援していただけますと嬉しいです!

多くの皆様に読んでもらうためには、どうしてもブックマークと星が必要となります! 

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ