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第74話:巨魔試験(10)

 乗客の悲鳴が聞こえたので俺は甲板へと駆けつけた。

 するとそこで驚くべき光景が繰り広げられていた。

 7歳くらいの幼女が自身の何十倍も大きさのあるクラーケンと互角に渡り合っていたのだ。

 戦況は幼女側がかなり優勢であるため、俺はあえて手を出さず、幼女の戦いを静かに見守る。

 クラーケンが複数の触手を伸ばすと、幼女は最小限の動きでそれを回避していく。


「あの若さでこの剣の技量……イェルのような童仙人か?」


 つい最近、化境の仙人『白桃仙』と出会ったばかりなので、自然とイェルの顔が脳裏によぎった。

 イェルの戦い方とは随分と違うが、並外れた剣技の持ち主であった。


「私がどうかしましたか?」

「……? わあっ!?」

「人の顔を見て驚くなんてとても失礼な男です」

「すまんすまん。イェルが船に乗っているなんて思いもしなかったから」

「私がこの船に乗っている理由は、ロゼさんがまた無理をして体を壊さないか気がかりだったからです」


 わからない理由でもないが、すでに退院した患者のために医者がそこまで献身的に動いてくれるものなのだろうか。

 別の理由があるような気もするが、彼女がここにいる理由を咎める権利もないので、俺はイェルの言葉を素直に受け入れた。


 するとそのタイミングで、別の男性の悲鳴が聞こえてきた。


「わあ! あの子が触手に捕まったぞ!」


 声につられてそちらを向くと、あの幼女が触手に拘束されて宙づりになっていた。

 胴体を触手でぐるぐる巻きにされていて、締め付けられて、苦悶の表情を浮かべていた。


 これはいかんな。早く助けないと。

 俺は即座に前に飛び出すと袖から雷龍刀を引き抜いて大きく一振り。


「絶招一式『迅雷一閃』」


 雷のエネルギーが込められた剣で、幼女を拘束してる太い触手を一刀両断。

 そのまま幼女を空中で抱きとめて地上へと降り立つ。


「きゃっ!?」

「怪我はないか?」

「や、やっぱり……! どうしてアナタがここに……?」


 幼女は眼を見開いてそう言葉を返した。

 言葉の内容的に、この子と以前どこかで出会った事があるのだろうか?


「ルクス、後ろから攻撃が迫ってきてます!」


 イェルの声が届く。

 振り返ると間近に眼前に触手が迫ってきていたが、俺はそれを雷のバリアで弾き返す。

 今のは霊力武装の応用みたいな使い方。

 ある一定以上の武人は身に纏った霊力を硬化させて身を守る事もできる。


 そして、右腕で幼女を抱えながら、左手を前にかざし、集約した霊力を前方へと放出。


「絶招四式『雷撃槍』」


 霊力によって形成された雷の槍が放たれてクラーケンの頭部を貫く。

 そのまま大量の雷撃が奴の全身に流れて奴は消し炭になった。


 敵が死んだのを確認すると、俺は幼女を地上におろした。幼女の表情には驚きと困惑の二つが内在していてジッと俺の目を凝視していた。

 警戒してるのだろうか?

 相手は小さな子供なので、俺もできるだけ笑顔を浮かべて話しかける。

 ただ、慣れないからちょっと引き攣ってるかも。


「…………あっ、返事が遅れてすいません。先ほどは助けて下さってありがとうございます」


 幼女はペコリとお辞儀をした。

 その反応を見て、俺はホッと胸を撫で下ろした。


「さっき敵に捕まっていたが、どこか痛い所はないかい?」

「え、ええ。身体の方に異常はありません」

「それならいいんだ」

「……あの、先ほども聞きましたが、どうしてルクスがここにいるんですか?」

「うん? 俺を知っているのか?」

「!!」


 俺の言葉に幼女がハッとしたような表情を浮かる。


「あ、それは……」


 しかし、そこで言葉が詰まって俯いてしまう。

 返事にとても悩んでいるようなので、俺は幼女の頭に手を乗せて優しく撫でる。


「答えづらいなら無理に話さなくてもいいよ」


 俺はできる限り優しい口調でそう伝えた。

 相手は7歳くらいの幼女だからね。自然とこっちの口調も柔らかくなってしまう。


「私の時と比べて随分と態度が柔らかい気がするです……」


 隣のイェルが不満そうにぼやいた。

 本物の幼女に嫉妬する千歳の仙女なのだった。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

セレナード:エメロード教の元聖女。前世ではロベルトに殺害されたが、なぜか7歳の少女に転生した。前世での行いを反省し、ルクスのような白道の武人を目指している。

イェル:仙人。外見は幼女だが年齢は千歳を超えている。「~です」という変わった語尾を使う。


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