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第71話:巨魔試験(7)

 せっかくなので船内を探索してみよう。

 客室に荷物を置いた俺は、部屋を出て船内を適当にブラつく。

 ざっと眺めた感じだと、過半数が二流武人、一割が一流武人、ごく数名が超一流武人という感じだった。

 二流武人なのに巨魔になれるのかは、いささか疑問ではあったが、彼らは魔将級を目指しているのだろうか?

 たしかロゼの話だと教主もやってくるそうだし。

 まあ参加者ではない俺には大して関係のない話か。

 アリアンナと一緒にロゼを応援することだけに力を注いでいこうじゃないか。


 今後の動きを考えていると、知らない男が俺の隣を横切ってきて突然俺に肩バンした。


「いってぇ~!? おい、おっさん! いきなり人にぶつかっておいて謝罪一つねぇとか喧嘩売ってんのか!」


 見ての通りのチンピラである。

 頬に傷があり、目つきも悪い。どうしてチンピラは皆似たような相貌なのだろうか。


「ぶつかってきたのはそっちだろ?」

「なぁにぃ~!? 俺が悪いって言いてえのか! 生意気な奴め! 今からてめぇをズタボロのボコボコにしてやるよぉ! けっけっけ!」


 やれやれ、典型的な屑ムーブだな。

 こういう腐った輩は図に乗らせると面倒なのでこの場で処するかと考えていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あの時のおっさん!」


 青龍団の団長であるイーノックが嬉しそうな顔で走り寄ってきた。


「ああ、イーノックか。久しぶりだな」

「おっさんこそ異変以来だな。元気にしてたか?」

「毎日ゴロゴロと寝転がって暮らしてるよ」

「けっけっけ、おっさんらしいな」


 イーノックは快活に笑った。

 最初出会った頃は悪党面をしていたがシャルロット戦以来から毒気が抜け、ちょっと口が悪い程度の好青年になっていた。


 すると、先ほど俺にイチャモンつけてきたチンピラが悲鳴を上げる。


「い、イーノックだと!?」


 イーノックの名前に反応して、なにやらチンピラが激しく動揺する。


「イーノックと言えば、青龍団の団長であり、天魔神教の近衛部隊『真龍隊』のメンバー候補にも名前が挙がった一流武人じゃねえか! その実力はすでに魔将にも匹敵し、数年以内には巨魔級にもなるかもしれないと言われている超エリート!」


 説明乙。

 チンピラの言葉に周囲の武人達もざわつき始める。

 どうやらイーノックは世間ではそこそこ名の知れた武人のようで、先ほどまで偉そうにしていた武人もイーノックの名前を聞くと蛇に睨まれた小動物のように委縮していた。


「うん? 誰だてめえ。おっさんに何か用でもあったのか?」

「ああ、ついさっきこいつから肩バンを……」

「あひぃいいいい!? 私が全部悪かったです! イーノック様の知り合いとも知らず食って掛かった私をお許しください。こんな屑でゴミで存在価値のない私にどうかご慈悲を!」


 チンピラは即座に五点着地土下座をした。


「よくわからんが、話の邪魔だから目の前から消えろ」


 とイーノックは小物を見るような目で手を払う。


「はいいいいいいい!」


 チンピラは一目散にその場から消えた。

 すると、その一部始終を見ていた武人達が口々に噂話を始める。


「あのおっさん何者だ?」

「尊大なイーノックがめちゃくちゃ気さくに話しかけてるぞ。もしかしてあの男すごい奴なのか?」


 ざわ……ざわ……。

 やれやれ、目立つつもりは一切なかったのだが、イーノックと知り合いというだけで必要以上に目立ってしまったよ。


 まあいいや。

 チンピラも消えてくれたし、プラマイゼロってことで。


「おっさんも巨魔を目指してるのか?」


 イーノックが尋ねてきたので俺は首を横に振る。


「俺は今回ロゼの付き添いだ。試験に参加する予定はないよ」

「それは俺達にとって幸運だな。おっさんがいると巨魔の席が一つ埋まってしまうからな」


 どうやら彼らの目的もロゼ同様に巨魔への昇格であり、今回の機会を利用して一気に成り上がるつもりらしい。


「あ、あの……」


 すると、片目を前髪で隠してる少女が話しかけてきた。

 ロゼと同じくらいの年齢で、腰には短剣を二本装着している。


 見覚えのある顔だった。

 こちらから話しかけた記憶はないが、調査隊のメンバーとして参加していた子だったはず。

 名前は確か……なんだっけ?


「わ、わたし、ブランと言います。ルクス様にまたお会いできてすごく嬉しいです」


 伏目がちに、やや緊張した様子でブランのほうから自己紹介してくれた。

 目立つような性格の子ではないが悪い子でもなさそうだ。

 彼女の方から自己紹介してくれたので、俺の方からも改めて自己紹介する。


「こちらこそまたあえて嬉しいよ、ブラン」


 俺はそう言って手を差しだすと、ブランは顔を真っ赤にして俯きながら俺の手を握った。


「ブランの人見知りは相変わらずだな! 年の離れたおっさん相手に緊張しても仕方ないぜ!」

「ルクス様に手を握ってもらった……もう死んでもいい!」

「おい縁起の悪い事言うんじゃない!」


 青龍団も相変わらずだな。

 久しぶりに出会った知人達に俺は自然と笑顔になった。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

イーノック:青龍団の団主。

ブラン:青龍団のメンバー。内気な性格。


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