第70話:巨魔試験(6)
巨魔試験。
開催時期はランダムで、天魔の意思によってごくまれに開催される。
筆記・実技・面接
このような一般的な試験とは大きく趣が異なり、殺し合いや超危険任務といった参加者が死亡する事を厭わない、道徳という概念を一切無視した試験である。
非人道的な試験である代わりに、合格した時のリターンは大きい。
巨魔という地位はこの国の超特権階級とされており、巨魔の地位に就けば莫大な収入と権力が同時に手に入る。
人生勝ち組確定。
薔薇色の人生。
参加できる条件もとても緩く、魔卒以上の領民なら任意で参加可能だ。
合格すれば誰でも超特権階級になれる。
それが巨魔試験の一番の触れ込みだ。
また、最悪巨魔になれずとも、視察に来ている天魔が気に入れば魔将や魔頭といった地位にランクアップできるため、それ目当ての参加者も多いそうだ。
そして現在、
俺達はその巨魔試験に参加するために開催地である『インフェルノ』行きの港へと向かった。
港には大勢の武人達が集まっておりとても賑わっていた。
船着き場の方には一隻の巨大な船が碇を下ろしてとまっている。
「噂で聞くと、今年の巨魔試験の参加者は1000人。
でも、巨魔の座席数は上限30名と決まっているから、今の時点で巨魔の地位に昇格できるのはたったの3人だけなの」
ロゼが説明口調でそう言った。
「どうして巨魔の座席が現在三つ空いてるんですか?」
アリアンナが不思議そうな表情でロゼに尋ねた。
「ルクスには前に話したと思うけど、ここ最近《巨魔殺しの白狐》が国内を跋扈してウチの幹部を殺しまくってるのよ。そいつのせいで巨魔が三人殺されたから、三人分の空きができたってわけ」
「なんだか物騒な世の中ですね。ただ、そんな危険な方がいるのに呑気に試験なんて開催してて大丈夫なんですか?」
「相手は上弦巨魔を倒した化け物だから大丈夫よ」
「???」
「要するに、相手はもはや災害みたいなもんだから気にするだけ無駄ってことだよ。出会ったら自分の不運を呪って諦めろって意味だと思う」
俺は遠い目をしてロゼの発言を意訳した。
最近ではロゼのトンデモ台詞もスゥーっと頭に入るようになった自分が怖い。
「えぇ……要するに大丈夫な要素が一欠片もないってことじゃないですか」
「今日明日死ぬかもしれない。毎日そんな気持ちで生きられて素敵よね」
「素敵ちゃうわ! ルクスさん、私この国に来てから命の危険を感じる事が多くなった気がするんです」
アリアンナの言葉は尤もであり、俺自身も薄々そんな気がしていた。
普通、超一流武人と戦う機会なんて、戦争という特殊な状況下じゃなければ一生に一度あるかないか程度なのに、この数か月で何度も戦わされた。
もしかしてこの国って平和とは真逆の道を突き進んでいるのでは?
俺はそんなことを思いながら震えているアリアンナの頭を撫でた。
今回、試験に参加するのはロゼのみであり、俺とアリアンナは付き添いとして同行している。
が、どうやら参加者以外は船に乗れないようなので同乗を拒否されてしまった。
「残念ですね」
「まあ試験だもん。仕方ないよ」
俺とアリアンナは残念に思いながらもその対応に納得してると急に警備の者が驚き始めて、掌を返したように俺達の同行を許可した。
俺はその反応を見て、まさかと思ってると、何とロゼは宝剣を見せる事による職権乱用で俺達の同行を許可させてしまったのだ。
「ロゼさん。まさかアナタ……!」
「おいおいマジかよ……」
「だって二人とお別れするの寂しいんだもん」
ロゼの言葉に呆れてものも言えなかった。
【強さの段階】
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ルクス:化境の武人。
アリアンナ:エルフの女の子。
ロゼ:天魔の一人娘。
【読者の皆さまへ】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思われたら、↓の☆☆☆☆☆ボタンを★★★★★に変えて応援していただけますと嬉しいです!
多くの皆様に読んでもらうためには、どうしてもブックマークと星が必要となります!
よろしくお願いします!




