第67話:巨魔試験(3)
「今日はお祝いだな」
「本当ですか!」とアリアンナが嬉しげな声を上げる。
「美味しいモノでもたくさん食べよう」
「やったー! 私、蓬莱屋の桃饅頭を山ほど食べたいです!」
市場にある人気茶店の店名を答えるアリアンナ。
アリアンナはあそこの桃饅頭が大好物である。
最近何かにつけてお祝い事と称して外食する俺。
朱雀館で寝泊まりしているため宿泊代が浮いているのでお金が無尽蔵にある。
お金は使わないともったいないので、基本的にアリアンナやロゼとの交流に充てている。
二人の明るい笑顔は俺のスローライフの楽しみになっている。
隣の修練場にいるロゼにも声をかけて、俺達四人は市場へと出かけた。
市場までは徒歩でも10分程度の距離にある近場。
市場では、大勢の人が道を行き交っていて、明るく賑やかであった。
「皆さんを見てるとこっちまで明るい気持ちになりそうですね」
「ふふっ、アリアンナらしいわね。私もアナタと同じ気持ちよ」
年頃の少女のような笑みを浮かべ、ロゼはアリアンナの手を握った。
アリアンナも握り返して指を絡める。
「女の子同士の友情ってほんと素敵ですね。お饅頭70個です!」
凛花はキラリとウインクをした。
アリアンナとロゼの友情を尊いと感じている者は凛花だけでなく、道行く男性方も同様であり、美少女二人の姿にすっかりと見惚れている。
街を適当にぶらついて目的地の蓬莱屋へと無事到着する。
店内は落ち着きがあって、竹の装飾があちこちに彩られたオシャレな茶屋である。
テーブル席へと座り、お品書きを眺めながら適当に注文していく。
「あっ、ルクスさん! 桃饅頭は忘れないで下さいね」
「へいへい。店員さん、この桃饅頭も四個追加で下さい」
「かしこまりました」
「ねえ、凛花。ところでアナタはなにを頼んだの?」
「お団子二十串ですね。この説明文によると、どうやら三食の味を楽しめるらしいですよ」
「へえ、それは楽しみね。どれが一番美味しいかしら♪」
どうやら凛花はお団子を頼んだようだ。
普段からお饅頭と呟くので、無意識のうちにお饅頭を頼むとばかりと思ってしまった。
数分後、桃饅頭が人数分運ばれてきた。
俺達はそれぞれ手に取って一斉に口へと運んだ。
「おいひいですぅ」
「甘さ控えめだから無限に食べ続けられそうですね」
「この味は120点です♪」
女性陣の反応は上々のようだ。
アリアンナも幸せそうな顔をしてるし、ここに来て本当によかった。
その後も、凛花が頼んだお団子の山や、ロゼが注文した餡蜜が運ばれてきた。
俺達はそれらを四人で共有して楽しみながら食事をした。
「ところでルクスさん。気になってたことがあるんですがいいですか?」
「なんだ?」
凛花の質問に俺は首を傾げる。
「ルクスさんは旅人さんですよね。最終的にどこかに定住するご予定とかありますか?」
「あー。まだ考えてないなぁ」
「私としては、ルクスさんにこの街に留まっていただけるとすごく嬉しかったりします」
彼女は笑みを浮かべながら、俺達三人の顔を見渡しながら言った。
現状は、ここでも構わないかなと思っている。
ここには朱雀団や青龍団といった知り合いも多い。
スローライフを送る分には困らないだろう。
とはいえ、他の土地も気になっていないわけではない。
クエム地方も近々向かう予定ではあるし、すごく悩ましい限りだ。
俺が真剣に悩んでいると、凛花が慌てながら制止する。
「あっ、もちろんすぐに答えてもらわなくても結構ですよ。なんとなく気になっただけです」
「悪いな。いずれ決まったらちゃんと答えるよ」
「うふふ、嬉しい返事を期待しています。朱雀団の皆さんもきっと喜びますから!」
この街には俺達を受け入れてくれる人達が多くいることがわかった。
それだけでも大きな収穫と言えた。
【強さの段階】
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ルクス:化境の武人。
アリアンナ:エルフの女の子。
ロゼ:天魔の一人娘。
凛花:朱雀団のメンバー。
【読者の皆さまへ】
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