第66話:巨魔試験(2)
日蝕異変が解決してから一か月が経過した。
俺は依然変わりなく朱雀館で暮らしている。
立場は無職……ではなく食客として正式に招かれた。
時々時間が空いたタイミングで気まぐれに団員達の稽古をつけている。
ほとんど暇つぶしみたいなもんで、昔の俺が見たら、とても仕事とは言えないようなぐーたら生活。
まあ、武人を引退した身としては案外悪くない生活と言えるだろう。
パシュン!
近くから、固い板に何か突き刺さるような気持ちがいい音が聞こえた。
ベンチの上で寝返りをうって、その音が聞こえた方を振り返る。
そこにはアリアンナと凛花の姿。
楽しげな様子で修練場で修行をしていた。
アリアンナが弓を構え、遠くの的に向かって弦を引き絞る。
すると、羽根から矢尻にかけて緑色のオーラが浮かび上がり、炎のようにバチバチと揺れる。
矢を放つと一直線に飛んで的の中央を綺麗に射貫いた。
いつ見てもアリアンナの弓功は流石だ。
これまで霊力を用いずとも高レベルの技巧を見せていたが、修行によって霊力を得て、さらに人並外れた弓力を手にいれた。
彼女の成長に父親のような嬉しい感情を抱いていると凛花が驚くような悲鳴が聞こえてきた。
なにかトラブルでもあったのかな?
俺はベンチから立ち上がり、二人の元へと走って向かった。
「どうかしたのか?」
「ルクスさん! 見て下さいよ、コレ!」
凛花は俺に一冊の本を渡した。
「これは?」
「サクラ小姐より送られてきた弓術の本です。朱雀館に今朝届いたんです」
サクラ小姐といえば、
たしかクエム地方にいる弓術の達人だったな。
どうやら以前から文通で連絡を取り合ってアリアンナの修行の相談をしていたようだ。
彼女は本当に面倒見がいい師匠だな。
行動一つひとつにアリアンナを一人前の武人として育て上げたいという一生懸命さが伝わってきた。
「それに書かれている文章の一説なんですが」
「なになに」
書物の文面へと視線を落とす。
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・霊力の籠め具合によって、放った矢の威力を飛躍的に上昇させる『緋想の頂』
・瞳功によって視力を引き上げ、地平線の彼方にいる蟻すらも捉える『千里眼』
これ、弓術の基礎にして極意なり。
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そのように書かれていた。
「『緋想の頂』と『千里眼』か。たしかにどちらとも弓術で大きく役に立ちそうだな。これになにかまずい所でもあったのか?」
「『使える』んですよ」
「使えるってなにが?」
「アリアンナさん! この二つの技をすでに習得しているんです!」
な、なんだってぇぇぇぇ!?
現時点で、
凛花がアリアンナに教えているのは、霊力の『発動』と『制御』の二種類のみ。
凛花は剣士であるため正式な弓術は教える事が出来ない。
そのため、サクラ小姐に引き継いだ際に円滑に修行が開始できるように、土台となる部分をしっかりと教えていた。
しかし、アリアンナはその才覚だけで弓功の極意とされる二つの技術を自然と身につけてしまっていたのだ。
「あ、あのー。もしかして私……余計なことをしちゃいましたかね?」
人差し指を突き合わせながら、困ったような上目遣いでおずおずと俺達に尋ねた。
◇強さの水準
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ルクス:化境の武人。
アリアンナ:エルフの女の子。
凛花:朱雀団のメンバー。アリアンナの現師匠。
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