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第64話:深淵の帝王(完)

 バルディッシュは約束を守って世界に太陽を返した。

 その際、陣法を用いて局所的に太陽を消していたことがわかった。


「ぐぬぬ……5年以上の歳月をかけてようやく造り上げた陣法なのに」

「殺されるよりはマシだろ」


 残念そうに項垂れるバルディッシュに俺はそう告げた。

 仮に俺が来なかったとしても、他の巨魔がいずれやってくるわけだから、バルディッシュの天下は決して長くは続かない。

 バルディッシュは、特性込みだと超一流武人の領域であるが、剣術の技量は一流程度に留まっている。

 不死の力を持つため、どうしても戦い方に甘えが生じるのだ。

 こんな大規模な真似をすれば、いずれ格上に殺されるのは火を見るよりも明らかであった。


 少なくとも神聖剣の使い手であるセレナードが相手ならほぼ確実に命はないだろう。

 性格を含めて絶対に油断しないからなアイツ。

 バルディッシュが勝てるビジョンが見えない。


 さて、異変も解決した事だしそろそろ帰るか。

 バルディッシュに別れを告げようと思うと、ドタドタと激しい足音が近づいて来て、扉の向こうからシャルロットが姿を現したのだ。


「た、大変です兄さん! 太陽がふたたび現れました。きっと誰かが私達の陣法を壊したんです!」


 前回までの余裕は一切感じられず、転げるように大広間にやってきたシャルロットは、慌てふためきながら大声でそう叫んだ。


 一方、俺はというと、

 死んだはずのシャルロットが生きている事実に驚いて言葉を失っていた。


(な、なんで生きているんだアイツ?

 仮にバルディッシュと同じ特性を持っていたとしても、アイツの肉体はすべて消し飛ばしたはずだ。

 肉体を失ったのだから蘇るはずがない)


 シャルロットの顔を茫然と見つめていると、シャルロットが俺に気づいて目が合った。

 数秒の沈黙後。


「ぎゃああああああああああああ!?」


 シャルロットは、恐怖の悲鳴を上げながらドスンと尻もちをついた。


「どどどどどどうしてこの人が兄さんと一緒にいるんですか!?」


 シャルロットは震える手で俺を指差す。


 先程から執拗に『兄さん』という不思議な言葉を口にするため、俺は首を傾げた。

 ここには、俺とロゼとバルディッシュの三人しかいない。

 シャルロットの兄さんなんていないはず……うん?


「あのー。つかぬ事をお聞きしますが、彼女とバルディッシュ陛下の関係は?」

「シャルロットは実の妹だ」

「へー、バルディッシュ陛下の妹……ってええええええええ!? 実の妹!? それマジで言ってんの!?」


 シャルロットが生きていた理由とか、そういうのがどうでも良くなるくらい、俺はその事実に驚愕した。

 顔も体格も一ミリたりとも似てないじゃん!

 絶対にありえない。

 俺はその言葉を聞いてもまだ信じられなかった。それほどまでに二人には面影がなかったのだ。


 一方、バルディッシュは俺達の反応には触れることなく、シャルロットに事情を説明した。


 一対一の真剣勝負で俺に敗北した事。

 勝負に敗北したので太陽を人間に返した事。


 それを聞くと、シャルロットは絶望の表情を浮かべて、がくりと膝をついて深く嘆き悲しんだ。


「ううう……私達の天下がこんなにあっさりと崩れ去るなんて……」

「シャルロットよ。今回はいさぎよく人間達に負けを認めて、また一から出直そうじゃないか」

「うん」


 どうやらシャルロットも納得したようだ。

 その後、俺はロゼと共に屋敷をあとにしてザイン達の所まで元来た道を引き返した。

 そして、彼らにも事の顛末を伝えた。


「千鬼谷にまさか吸血鬼達の帝国があったなんて!?」

「しかもそれを解決したなんてすごすぎですぅ! お饅頭3万個分です!」

「おっさんマジぱねぇ!」

「「「「「「ルクスさんすごい」」」」」」


 彼らは一同に俺を称賛し、大きな拍手をした。

 ロゼとイェルも同様に拍手を交え、誇らしげに笑みを浮かべていた。

 これにて、日蝕異変は閉幕となり、大団円を迎えたのだった。

次回から新展開です。


【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

ロゼ:天魔の一人娘。

バルディッシュ:異変の主犯。

シャルロット:バルディッシュの妹。


【読者の皆さまへ】

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