第54話:神医(7)
シャルロットは俺の乱入に動揺の色を見せた。
しかし、その後の対応はとても冷静であった。
地面から刃を引き抜いてすぐさま俺から大きく距離を取ると、俺の全身を舐め回すように観察する。
「恐ろしく速い縮地ですね。私の《制空園》を一瞬で掻い潜るなんて血の気が引きましたよ」
「ただの挨拶代わりだったんだけどな。現にお前の首はまだ繋がっているだろ?」
「アナタの善意に感謝しないといけませんね。ですが、さっきの一撃で私を殺さなかったこと、後悔しても知りませんよ」
シャルロットはそう返事を残すと、全身に紅色の霊力を纏った。
一流武人以上の証、『霊力武装』である。
身の丈を遥かに超えるまでに霊力が膨れ上がり、まるで紅い炎が全身から噴き上がるようであった。
次の瞬間、
シャルロットの姿が音もなく消える。
俺の首元を過ぎ去るように『紅い風』が駆け抜ける。
ガキンッ!
と、金属と金属がぶつかり合う音が響いた。
「……ッ!」
俺の背後から、シャルロットの驚く声が聞こえた。
一方、俺は肩越しに振り返って雷龍刀を見せる。
「俺が生きている事が信じられないか? ちゃんとコレで防いだんだから死んでるわけがないだろ?」
「だったら、攻め方を変えるだけです」
シャルロットの姿が音もなくまた消えて、死角から死角へと移動するように続けざまに連続攻撃を仕掛けてくる。
しかし、そのすべてを剣を以て対処していく。
武器の大きさでは彼方に分があるが、俺の武器は雷龍の牙で造られた名剣である。
たとえ神の一撃を受けようと、俺の心が折れなければ、決して折れることなどない。
絶え間なく攻撃を仕掛けても俺が淡々と止めてくるので、シャルロットも徐々に焦りを見せてきた。
あえて隙を作り、こちらの攻撃を誘ってくるような仕草を取るようになったのだ。
格上を殺す際によく用いられるカウンター攻撃を狙っているのだろう。
思慮が浅いな。
それが通じるのは何重にも策を練って敵の心に油断が生まれた一瞬だけだ。
油断しなければただの的に過ぎない。
敵の要望通り、その地点めがけて斬撃を放つ。
間髪入れずにシャルロットがそれに反応し、カウンター攻撃を放つが、来ると分かってる攻撃など怖くもなんともない。
渾身の一振りをもって、容易くそれを上から捻り潰した。
「なっ!?」
彼女にとっては完全な想定外。
愕然としたシャルロットの顔が見えた。
だが、嘆いてる暇はないぞ?
続けざまにもう一発攻撃を放つ。
「かはっ……!?」
シャルロットの喉元には俺の剣が深々と突き刺さっていた。
彼女の動きが硬直する。
それを確認し、俺は何の遠慮もなく、風を切るようにシャルロットの全身をバラバラにした。
一瞬にして肉片と化し、絶命してしまう彼女。
「絶招一式『迅雷一閃』」
そして、俺は『油断』をしない。
俺は手を横に振って、シャルロットの肉体があった空間一帯を雷撃によりすべて消し飛ばした。
これで、吸血鬼特有の超再生能力があったとしてもまず復活ができない。
やりすぎ?
そうかもね。
でも、勝負の世界だから。
相手が美人だからって俺は手加減しない。
どんな相手でも全力で殺す。
それを徹底できるから俺はこれまで生き残れた。
なによりそれで仲間の命が守れるなら俺は喜んで心を鬼にしよう。
【強さの段階】
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ルクス:化境の武人。
イェル:神医。
ザイン:朱雀団団主。
イーノック:青龍団団主。
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