第51話:神医(4)
「ルクス。私もアナタに同行していいですか?」
「イェルが俺に?」
「はいです。目的が同じなら人数が多い方がさばけると思うです」
たしかにイェルの提案も尤もだ。
俺もイェルの武術を拝見したいと思っていたところだったので快く了承した。
一緒に行動すれば自ずと見る機会もできるだろう。
病院の外に出ると外は暗闇に覆われていた。
月の光がない新月の夜なのでいつも以上に暗い。
このままでは動きづらいので、俺は眼に霊力を集中させる。
すると、夜目が効くようになり、遠方まではっきりと見通せるようになった。
「ルクスの『瞳功』は群青色なんですね」
「そういうイェルは黄緑色なんだな」
イェルも瞳功によって俺同様視力を強化していた。
彼女の霊力の色は黄緑色。
そう考えると、土属性と風属性の霊術が得意なのかもしれない。
さて、俺達が使用している瞳功だが、これは内功が扱えるなら誰しも使用できる一般的な武功である。
対象の霊力値を測ったり、暗闇でも遠くを見通せるようになるなど利便性が高い。
そして、瞳功を発動してる時に浮かび上がる霊力の色だが、それは以前にも話した属性が大きく作用している。
群青色は天候を操る色とされ雷属性の影響を大きく受けている。
「私としては桃色が良かったです」
「それはどうしてだ?」
「桃が大好物だからです」
「そ、そうか。イェルの髪色がピンクなのもそれが影響なのか?」
「よくわかりましたね。桃を食べ過ぎて髪がピンク色になりました」
「マジ!?」
「くすくす、そんなわけないじゃないですか。これは地毛ですよ」
イェルは口元を隠しながら上品に笑った。
幼女ではあるが、彼女の妖艶な雰囲気は、俺の心にキュンとするようなトキメキを与えた。
元々、余裕がある感じの女性が好きなので、イェルは性格だけで言えば俺の好みと言えた。
しかも!
俺より年上の可能性がある。よってこのトキメキは合法と言える。
しかし、彼女の外見は完全な幼女であるため、俺の想いを熱く語ればペド野郎として扱われ、社会的地位を失ってしまうのだ。
しばらく二人で仲良く道を歩いていると向かう先で武人同士の言い争いが起きていた。
武人達と即座にわかった理由であるが、俺達と同じように瞳功を用いて行動していたからだ。
提灯といった灯りが必要なくなるのですごくわかりやすい。
ある程度近づくと、集団の中に俺の知り合いが混じっている事に気づいた。
二十人いるうちの五人ほどは『朱雀団』のメンバーであった。
全員俺の顔見知りで、その中には団主のザインと、アリアンナの師匠である凛花がいた。
ちなみにアリアンナ本人は見当たらない。
大人しく朱雀館でお留守番中なのだろう。
「いったいなにやってるんだ?」
「あっ、ルクスさん!」とザインが笑顔で反応し、
「なんだぁ? てめぇ?」
と人相の悪い男が口汚く俺に威嚇した。
チンピラに毎回反応するのも面倒なので、俺はそれを無視してザインに何をしてるのか尋ねる。
すると、ザインは状況を説明した。
「《日蝕異変》を調査するようにと上から緊急で依頼があったんです」
日蝕異変。
世間ではそのように呼ばれているのか。
たしかに太陽が闇に侵食されてたしな。
わかりやすいし、案外悪くないね。
気に入った、俺もこれからそう呼ぶとするか。
「上からって天魔からか?」
「いえいえ、天魔様が直接依頼するほど僕達すごくないですから。あくまで調査です。本格的な解決は巨魔級の方々がなさると思います」
ザインは謙遜するようにそう答えた。
「けっ! こんな雑魚共に依頼するとは天魔神教の上層部もほんと節穴しかいねえな!」
と先程俺に威嚇してきた男性がつまらなさそうに喚いた。
「ところで彼らは?」
「彼らは青龍団の人達です。以前話した四霊獣の一つですね」
「ふむふむ。とすると、今回の調査は合同調査になるのか?」
朱雀団と青龍団の二つが揃っているのだから、俺は一緒に調査するものだと思い、そう尋ねた。
すると、青龍団のメンバーが一斉に大笑いをする。
「俺達がこいつらと協力? そんなバカなことをするわけねえじゃねえか!」
「おいおっさん。ここらじゃ見かけねえ顔だが、青龍団を知らないなんて遅れてんな!」
「むかああああ! ルクスさんはただのおっさんじゃないです! かっこいいおっさんです!」
と凛花が激怒しながら俺をフォローする。
でも、俺がおっさんなのは否定してない。
一応まだ二十代前半なんだけど、彼らから見るともうおっさんなのか……。
俺はすごく悲しい気持ちになった。
「ルクス。ヨシヨシです」
沈んだ気持ちで項垂れる俺の頭を、イェルは背伸びをしながら丁寧に撫でてくれた。
◇強さの水準
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
ルクス:化境。
ロゼ:超一流武人。
アリアンナ:三流武人。
【読者の皆さまへ】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思われたら、↓の☆☆☆☆☆ボタンを★★★★★に変えて応援していただけますと嬉しいです!
多くの皆様に読んでもらうためには、どうしてもブックマークと星が必要となります!
よろしくお願いします!




