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第40話:聖女の白刃(1)

 ミッドバレルまでの道のりは決して楽なものではなかった。

 魔王軍に存在を悟られてはいけないので、一般人に扮して移動する必要があった。


 最初に根を上げたのはスカーレッドであった。

 王都での贅沢な暮らしに慣れ親しんでいたため、庶民と同じ生活に耐える事ができず、定期的に財布を持ちだしては嗜好品を収集していた。

 また、ロベルトも同じであった。

 彼もこの数年間で贅沢の味を覚えてしまい、スカーレッドと共に夜の街に毎晩繰り出している。


 一方。

 私は毎晩、誰もいない夜の修練場で剣を振ってる。

 昼間は訓練をしない。

 人に努力してる姿を見られるのは好きではないからだ。

 凡人だと思われたくないという理由もある。

 人々が求める天才を演じる必要があった。

 誰にも弱みを見せたくなかった。

 聖女は、エメロード教の頂点でなければならない。


 凡人らしい部分を一瞬でも見せれば、私の評価は一転し、私はその時から聖女ではなくなり『神聖剣の扱いが優れているだけの武人』に戻ってしまう。


 それだけは嫌だった。

 私は聖女であり続けたい。

 エメロード様に認められたい。


 エメロード教のため。

 自分にそう言い聞かせて、いままで多くの危険因子を排除してきた。

 幹部達もそんな私だからこそ最終的には認めてくれた。



 絶対的なエメロード教への忠誠心。

 絶対的な神聖剣の実力。



 私の聖女としての価値はこの二つにあると言っても過言ではない。

 現在、戦況は良くないが、幹部達には『最終的に魔王を倒せば問題ない』と判断されている。

 その理由はシンプル。


 実際に戦場に出るのは私一人だからだ。

 彼らは安全な位置で贅沢三昧。

 それゆえに、現場の私が多少のミスをしても、自分達に被害がなければ大目に見て貰える。


 とはいえ、あまり負け続けるのもエメロード教の信仰力に影響が出るので、そろそろ戦に勝利したい所だ。

 そのためにもロベルトやスカーレッドの双方には頑張ってもらいたいが、なかなか上手くいかない部分がある。


 すると、夜の闇に紛れるように、一匹の魔人が姿を現した。


「げへっへっへ。聖女様が一人で出歩くなんて、まるで俺に犯してくれと言わんばかりだな!」


 見たところ、ウルフハングという種族のようだ。

 頭部は狼で体は人間。

 獣人の中ではかなりケモノ寄りですね。

 個人的に、ケモミミと尻尾くらいで獣要素は充分だ。


 大斧を背負っているところから見てパワー型の魔人だろう。


「生憎、魔族に抱かれる趣味は私にありません」

「余裕を保っていられるのも今の内だぜ。お高く留まったその美しい面が恐怖に歪むのが今からでも楽しみだぜ」

「下賤な輩ですね。吐き気がします」

「げへっへっへ! それにしても、見れば見るほどいい女だ。じゃあさっそく行くぜ!」


 ウルフハングは大斧を両手に抱えて勢いよく迫ってきた。


 私は焦ることなくゆっくりと静かに剣を抜いた。


「へへへ! そんな弱そうな剣、一発でへし折ってやるぜ! なんたって俺様は魔将様だ!」


 戦いにおいて、余計な移動は嫌いだ。

 霊力の無駄遣いだから。

 ウルフハングの攻撃を刃でいなし、最短歩数で流れるように奴の首を刎ねた。

 刀身にこびりついた返り血を、剣を振って振り払い、音もなく納刀した。


「そうですか。それは怖いですね」


 胴体と首が切り離された哀れなウルフハングに、そう適当に返事をして、静かに修練場をあとにした。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

セレナード:エメロード教の聖女。腹黒。

ロベルト:傲慢な勇者。

スカーレッド:尊大な貴族令嬢。


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