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第35話:快刀乱麻(4)

「なにやってんの……?」

「その声はルクス!? ち、違うの! これには深い事情があるの!」

「逆に深い事情がなかったらこえーよ」


 壁に上半身突っ込んで下半身だけ突き出してる無様な状況。

 喩えるなら壁尻だろうか。


「ルクスは、凛花が朝に狐の型を見せたの覚えてるかしら」

「ああ。シンプルながら強力な武功だったな」


 あれ一つだと見切られやすいが複数の型に絡めて使えば非常に効果的だろう。

 元々獣王剣は無数の型で相手を制圧するのを得意とする流派だからな。

 他の型式で翻弄しつつ、一番重要なタイミングで九尾を発動すれば一撃必殺の技になる。


「暗化神剣には一度見た技から使い手をイメージして戦うトレーニング方法があるの」

「イメトレってやつか」


 イメージトレーニング。

 世間ではよく馬鹿にされる訓練方法だが、実際はそうじゃない。

 超一流の武人達はそれを用いて技の対策を行う。

 超一流は、その時見た風景を、超高解像度で忠実に再現することができる。

 俺自身は超一流武人ではないが、イメトレをすればイメージ上の凛花をその場に召喚できる。


「そうそれ。イメトレ上だと、凛花自体は余裕で倒せるけど、凛花がチラッと言っていた基本速度『九尾』はどうやっても倒せないの」

「あー。リリアのことか。あれは完全にバグってるから参考にしない方がいいと思うぞ」

「でも倒せれば化境の領域に一歩近づけるじゃないの」


 なるほど。

 たしかにそういう考え方もあるか。

 実際のリリアは九尾+αで立ち回るだろうからもっと狂ってるんだろうが、基本速度『九尾』に対応できないことには化境の領域なんて一生無理。

 ロゼの言っている内容は理にかなっていた。流石14歳にして超一流武人になった天才だ。考え方が平凡ではない。


「言いたい事はわかったが、それと今の状況がどう関係するんだ?」

「イメトレしてたら修復中の壁穴に頭から突っ込んだの」

「お前頭大丈夫か?」

「酷い!? 真面目に説明してるのに!」

「今の話から大体の流れがわかったよ。再現性を上げるために目を瞑って、さらに実際に体を動かしてイメトレしてたんだろう?」

「流石ねルクス。今の説明でそこまで状況を把握できるなんて。アナタ素質あるわよ」


 何の素質だよ。

 壁穴に頭を突っ込む素質なら一生遠慮したい。


「というか、いつまでそうしてる気だよ」

「思った以上にすっぽり入っちゃったから抜けないのよ」

「えー」

「助けてルクス。私、このままじゃ一生ここで暮らさなきゃいけないわ」


 たしかにこのままでは天魔神教の恥になりそうだ。

 天魔宝剣ならぬ天魔宝尻。

 やれやれ、理由が理由だけにまともだし、ここは助けてやるか。


 俺は尻の真後ろに来て、畑の大根を引き抜くような感じでお腹周りに腕を回した。


「ひゃっ!? ちょ、ちょっとどこ触ってんのよえっち!」

「仕方ねえだろ。俺だって好きで触ってるわけじゃねえんだから。不可抗力だよ」

「だからってお腹周りを触るのは、あはははくすぐったい!? た、たんまたんま!」


 自分の名誉のために言っておくが、俺は別にエッチな事をしてるわけではない。

 ちゃんと真面目にロゼを助けようとしている。

 いまのロゼが予想以上に敏感すぎるだけだ。ちょこっと体に触っただけですごく反応する。

 たぶん相当集中していたんだろうね。


 てか、中々抜けないな。

 マジでどんな動きをすればこの壁穴にぶっ刺さるんだよ。

 俺はより一層ロゼに密着して先程よりも強く引っ張る。


 ギューギューギュー。


「はぁはぁはぁ……なかなか手ごわい尻だな」

「その言い方、横から聞くと完全に変態のソレなんだけど」

「仕方ない。こんなしょーもないことで雷龍刀を使いたくなかったが……」


 俺は袖から小刀を取り出して構える。

 その後、ロゼが傷つかないように霊糸を壁一面に張り巡らせ、絶招を発動する。


「絶招二式『雷撃抗戦』」


 次の瞬間、霊糸を通して壁に俺の霊気が走る。


 ズドーン!

 と、大きな音を立てて壁が細切れに切断された。

 それによってロゼは壁穴から脱出することができた。


「ふう……助かったわルクス。アナタは命の恩人よ」

「どういたしまして」

「何かお礼がしたいわ」

「それなら今度、暗花神剣の剣式を教えてくれ」

「もちのロゼよ」

「は?」


 最近、ロゼの優れた一面を見て尊敬の念を抱いていたが、こうしたドジな部分も合わせて知ると、普通の女の子のようにも感じる。

 武人仲間としてではなく純粋な友達として、お互いに気を許し、徐々に打ち解けてきた証拠だろう。

 その後、俺はロゼに夜の街に出かける途中であると説明した。


「それなら私もついていくわ」

「それじゃあ一緒に遊びに行こうか」

「ふふふ、アリアンナには悪いけど、たまにはこういうのも悪くないわね」


 なぜそこでアリアンナの名前が出てくるのかわからないが、俺は気にせずロゼと共に夜の街に出かけた。


【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

ロゼ:天魔の一人娘。


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