表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/110

第34話:快刀乱麻(3)

「あらルクス。アナタも訓練場に来ていたのね」


 彼らの修練を眺めてると遅れてロゼが訓練場にやってきた。

 トレードマークの赤色のマントを纏っている。

 昨日まで、その下には包帯を巻いていたのだが、今日は包帯が取れている。

 先日の戦いで負った傷はもう完治したのだろうか。


「暇だったからな。ところで傷はもう大丈夫なのか?」

「ええ。もうほとんど活動に支障はないわ」

「そうか。ただ、あまり無理をするなよ。もし何かあれば遠慮なく俺を頼ってくれ」

「ふふっ、相変わらず優しいのね。それじゃあしばらくはルクスに甘えちゃおうかしら」


 ロゼは頬に手を当てて柔和な笑みを浮かべる。

 今みたいにこうして、まじまじと彼女を見ると、彼女は本当に美しいな。

 ロゼは、俺ですら成し遂げていない"心象具現"を会得している。

 心象具現は、超一流武人である証。

 人間ってのは不思議な生き物で、普段顔を合わせているはずの相手であっても、その人の優れた部分を見てしまうとより一層魅力的に映ってしまう。


「はわわ、天魔宝剣様がいらっしゃったぞ!」

「さっき以上に気を引き締めて剣を振るわないとね!」

「ロゼちゃん萌えー」


 朱雀団の団員たちは先程以上に威勢よく剣を振るっている。

 彼らに対しても、ロゼちゃん効果は絶大みたいだな。


「あっ、ルクスさんロゼさん。おはようございますです!」

「二人ともおはようございます!」


 と凛花に続けて隣のアリアンナも笑顔で手を振った。

 彼らはここ数日一緒にいる事が多い。

 凛花がアリアンナに対して獣王剣のイロハを教えているからだ。

 凛花は文字を書けないので口伝になるが、アリアンナも一生懸命に学んでいる。


 潜魔神書でのアリアンナの霊力値も5から50に急上昇している。

 俺やロゼが教えていた時は、一日あたり1~2程度しか上がっていなかったので、この上昇度は破格である。

 もしかすると、アリアンナは獣王剣や凛花と相性がいいのかもしれない。

 だとしたら嬉しい誤算であり、凛花のいるこの地からクエム地方に移動するのを少し遅らせてもいいかもしれない。


 優れた先生と巡り合うことは、高位の霊薬を得ることよりもはるかに勝る。

 霊力を増強する霊薬は一度食べればそれで終わりだが、先生ってのは霊力以外にもいろいろな事を教えてくれる。

 剣式、修行法、作法、生き方。

 どれも一朝一夕で学べる内容ではない。


「アリアンナちゃん。今日は獣王剣の《狐の型》を教えますね」

「はい。よろしくお願いします」


 アリアンナの元気のいい返事に凛花は笑顔を浮かべる。


「狐の型の大きな特徴は"爆発"です」

「爆発? なんだか物騒な響きですね……」

「あはは、みんな最初はそう思いますね。爆発というのは、体内の霊力を瞬間的に解放することです」

「ふむ、霊力の"発動"か」

「なんだか懐かしい響きね」


 と俺とロゼが隣で割り込む形で感想を述べる。


「お二人は、"発動"と"制御"のその先にある"霊力の掌握"に至っています。ですが、これは一流武人でなければできない領域です。アリアンナさんはまだそこまで修練を積んでいないので、最初は霊力の発動を目指すことになります」


 霊力の発動は、内功の操作に関わるトリガー的な役割を持つ。

 いわば三流武人と二流武人の境界線だ。

 内功を扱えるようになって初めて人は二流武人と見なされる。


「ふむふむ」


 アリアンナは真剣な表情で凛花の話を聞いている。

 おっといけない。俺達はあまり口を挟まないようにしないとな。


「狐の型は、"尾"という単位を用いて霊力解放の出力を調節します。説明するよりも実際の動きを見てみる方が早いでしょう」


 凛花はそう答えると、東洋の神秘、空手に近い構えを取る。


「霊力解放、一尾」


 普通のパンチよりちょっと速いパンチ。


「霊力解放、二尾」


 先程のパンチよりさらに早いキック。

 三尾、四尾と続くにつれて徐々に早くなっており六尾からは霊力武装に匹敵するほどのスピードで右ストレートを放つ。


「そして次に見せるこれが、最高位の"九尾"です」


 次の瞬間、凛花の姿がマジで見えなくなり、視線の先にあった壁に大穴を開けた。

 霊力武装を纏っていたとしてもあれを避けるのはほぼ不可能だろう。

 それほどまでに速い動きに俺やロゼは驚愕した。


「これが狐の型の概要です。獣王剣の開祖であるグランドマスターリリアは、この九尾を基本速度で戦場を駆け抜けて敵を葬っていたそうです」


 そりゃあ強ぇわけだ。

 九尾が基本速度とかチート以外の何物でもない。

 リリアが化境という話により真実味が増した。


 ただ、さらっと朱雀館の壁を破壊してるけど大丈夫なのだろうか?


「す、すごい……。一生懸命頑張れば私もこれができるようになるんですか?」

「はい。もちろんできますよ」


 凛花は少しも迷いを見せることなく断言した。

 こういうすっきりとした部分は師匠に向いているのかもしれない。

 その後、アリアンナは凛花と一緒に武術の練習に正午まで打ち込んだ。



 それから時間が経って夕暮れ。

 夜の街に遊びに出かけるためにみんなに内緒で訓練場の前を通ると、ロゼが頭から壁に刺さった間抜けな姿で尻を突き出していた。


 マジでコイツなにやってんだ……。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

アリアンナ:エルフ族の女の子。

凛花:朱雀団のメンバー。

ロゼ:天魔の一人娘。


【読者の皆さまへ】

この小説を読んで


「面白い!」

「続きが気になる!」


と思われたら、↓の☆☆☆☆☆ボタンを★★★★★に変えて応援していただけますと嬉しいです!

多くの皆様に読んでもらうためには、どうしてもブックマークと星が必要となります! 

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ