第32話:快刀乱麻(1)
「いやはや流石でございますね! あの死風刀血を倒すとは! 朱雀団に依頼して大正解であります!」
恰幅のいい商人が満面の笑みを浮かべて朱雀団をべた褒めする。
ザイン、凛花を含めた朱雀団のメンバーは、引き攣った笑顔で商人の言葉を受け入れていた。
彼らは今回特に何もしていないので、プライド的にそれを受け入れがたいのだろうが、我らがリーダーである天魔宝剣様がお忍びの旅をしているもんだから、彼らには真実を話すのは控えてもらう。
今回の盗賊討伐依頼を出したのは、この町に拠点を構えている"鳳凰商団"のリーダーであるエンツォ。
結構大きな団体のようでお金やコネもたくさん持っているみたいだ。
今回の件で恩を売っていけば、今後の旅が楽になりそうだが、俺はすでにスローライフを送ると決めてるので、彼と知り合いになるつもりはない。
それに商人はより良い関係を築くのが若干面倒くさいので、関わらないなら関わらないに越したことはない。
ロゼも彼に対してあまり興味がない様子だしね。
俺達は、盗賊団を倒した同士の一人として、エンツォに歓迎されて彼の邸宅に招かれた。
そこで美味しい夕食を堪能した。
下処理したアヒルを丸ごと炉で焼いたお肉料理とかすげえ美味かった。
「ルクスさん。あーんして下さい♪」
「あーん」
「ふふふ、赤ちゃんみたいですごくかわいいです!」
一応アリアンナよりも俺の方が年上なんだが、彼女は母性があるからね。
「あんな美少女にあーんしてもらうなんてすごく羨ましい!」
「私もルクス様のような強い方にあーんしたいです」
「あの時のロゼ様すごくかっこよかったなぁ……」
朱雀団の団員はそれぞれ先の戦いの感想を述べている。
俺の戦いを見た人はほとんどいないので、大半がロゼの感想になっていたが、俺も知らないうちに彼らの中で強者みたいな扱いになっていた。
ちょっとむず痒い気持ちもあるが、人から褒めて貰えるのは案外悪くない。
目立ちすぎるのも考え物だけどな。
スローライフを送るのだからできるだけ目立たずに静かに暮らしたいものだ。
さて、今後の予定であるが、朱雀団の一員よりもう少し町に残って欲しいと懇願された。
どうやら俺やロゼに訓練をしてもらいたいご様子。
別に急ぐ旅でもないので俺達は快く受け入れた。
また、アリアンナもこのタイミングで獣王剣の基礎を凛花から学ぶようだ。
凛花は蛇の型なので直接的には関与しないが、同じ獣王剣の使い手なので共通する部分も多いであろう。
宿に関しては、朱雀団が全面的に支援をしてくれるようで、朱雀館の部屋を無料で貸してもらった。
旅費が節約できるのはすごくありがたい。
いくらお金をたくさん持っているとはいえ、節約できるところは節約した方がいいからね。
◆ ◆ ◆
一方その頃。
青龍団では、今回の朱雀団の活躍を好ましく思わない者が多数いた。
彼らは元々、四霊獣の中では第一位の評判だった。
しかし、今回の一件で朱雀団が巨魔級を倒した事で、第二位へとランキングが下落してしまったのだ
「くそっ! あいつらめ。まんまと成功して白龍商団から一目置かれているのが気に食わねえ!」
「全員死ねば良かったのに」
「今回の活躍で、朱雀団のランキングが一位になっちまったぞ。このままじゃ天魔本隊への推薦を取られてしまう! どうすんだよイーノック!」
「心配するな。俺に考えがある」
青龍団の団主であるイーノックは悪人面を浮かべてそう答えた。
剣術こそ一流であったが、性格にやや難点があり、武人にとって最も大切な良心に欠ける性格であった。
「ザインよ。巨魔を倒したからって、あまりいい気になるんじゃないぞ。貴様は必ず俺が殺してやる」
イーノックはそう呟いて手に握っているコップをぐしゃっと握りつぶした。
【強さの段階】
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ルクス:化境の武人。
ロゼ:天魔の一人娘。
アリアンナ:エルフ族の女の子。
【読者の皆さまへ】
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