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間章3:勇者パーティの敗走

 ルクスがパーティを去って一か月が経過した。


「くそっ! また例の陣法だ。みんな撤退だ!」


 ロベルトの言葉に私達は前線を離脱する。

 当然敵が襲ってくるがジョニーとキャッシーをしんがりにして逃げ延びる事ができた。

 彼らの犠牲は無駄にはしない。


「ふぅー。危なかったねセレナード、スカーレッド。あの二人が死んでくれたおかげで敵を撒くことができた」

「そうですね。彼らも私達のために死ぬことができて本望でしょう」

「私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない……」


 私はロベルトの会話に合わせて適当に同意する。

 現在の気分は最悪極まりないが他に方法がなかった。

 ロベルトの行動は戦略的には正しい。

 誰かが死ななければならないのなら私以外であって欲しい。

 スカーレッドに視線を向けると彼女は俯いたまま一人ブツブツと呟いている。

 彼女はこの一か月の連敗で精神を病んでしまったようで、自分の心を守るために、ひたすら自己防衛のような発言を繰り返している。


 私を含めてもはやこのパーティにまともなのは残っていないと言える。

 さて、話は変わるが、私はあの日スカーレッドを殺さなかった。

 理由はシンプル。

 彼女を殺せば戦力を失うからだ。

 エメロード教の教義ではスカーレッドは神敵なのだが、私の目的は魔王討伐なので、彼女は生かした方が得だと考えた。


 まあそれも今となっちゃ関係ないが。

 見ての通りスカーレッドは精神的にも限界だ。

 かなり病んでいる。


 聖女代理としての重圧の中で長年生きてきた私とは違い、彼女は温室で育ってきた根っからのお嬢様。

 最初からこのパーティでやっていけるわけがなかったのだ。


「ロベルト。敵の攻撃が熾烈さを増してきてます。このまま戦いを続けていけば死ぬのは必至。ここはいったん姿を隠しましょう」

「そうだね。背に腹は変えられない。くそっ、あの忌々しい陣法さえなければアイツらなんて簡単に倒せるのに! ルクスの奴めえええ! アイツさえいなければ!」


 ロベルトは剣を振り回して怒り狂う。

 私もロベルト同様にルクスに対して恨みを覚えた。


 ルクスが抜けたとはいえ、私達には天下第一のロベルトがいた。

 だから戦況には大きく響かないと思っていた。

 だが、とある陣法の出現で、当初の計画とは大きなズレが生じるようになった。



 剣罡という言葉を知っているだろうか。

 剣罡とは、一流以上の武人が使用できるビーム光線のことである。

 ロベルトはこの剣罡の扱いに長けている武人だ。

 《無敵剣罡》と呼ばれる防御陣法を貫通する世界最強の剣罡を放てるため、どんな敵も一方的に倒すことができた。

 ロベルトが天下第一の武人と呼ばれているのもそれが理由だ。


 剣、防具、バリア、陣法。

 そのすべてがロベルトの無敵剣罡の前には無力。

 一撃必殺の技だった。


 だが、ある日を境に無敵剣罡は無敵ではなくなった。

 魔王軍が無敵剣罡の解析に成功し、さらにはそれを上回る防御陣法を編み出したのだ。


 剣罡封じの陣法『ラグナロク』

 この陣法によってロベルトの剣罡は無力化され、ロベルトの持ち味を活かせなくなった。

 最大戦力の弱体化。

 これは戦局に大きな影響をもたらした。


 さらに敵も学習してきたのか、スカーレッドにとって相性の悪い、水属性の剣士を頻繁にぶつけるようになった。


 スカーレッドは一流の剣士であるが相性差を覆すほどの圧倒的な強さは備わっていない。

 弱点属性や物量で押されると途端に劣勢になってしまう。


 こっちの手の内が完全に読まれていると言っても過言ではなかった。

 今日の戦闘もそれが原因で敗走した。


 これまでこのようなことは一度もなかった。

 ルクスがいなくなってから頻繁に起こるようになった。

 きっとルクスが私達の情報を売ったに違いない。


「セレナード。身を隠す場所にアテはあるかい?」

「ミッドバレルに私の知人が暮らしています。しばらくはそこで身を隠しましょう」

「うん。そうだね」


 ロベルトも私の提案に頷いた。

 私達三人は力を蓄えるためにミッドバレルへと向かった。


 だが、まさかあそこであんな悲劇が起こるなんて、当時の私は想像もしていなかった。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

セレナード:エメロード教の聖女。腹黒。

ロベルト:勇者。

スカーレッド:勇者メンバーの一人。病んでいる。


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