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第26話:獣王剣(6)

 スローライフの醍醐味といえば旅仲間との交流が一つ挙げられる。

 夕食を済ませて寝室で寛いでいる時、なんとなくあくびをするとアリアンナが近づいてきた。

 そして、背後からそっと俺に抱きついて俺の耳元で囁く。


「なんだか眠そうですね。先ほどの手合わせできっと疲れが溜まっているでしょう。ルクスさんが良ければ私が癒して差し上げますがいかがですか?」


 アリアンナの癒し。それはとても魅力的だ。

 エルフ族は元来より光属性の霊力を秘めている。

 それはアリアンナも例外ではなくヒーリングなどの治癒魔法を習得している。

 魔法という単語は西方大陸由来の言葉であり、俺達の国ではあまり馴染みがなく、言語として使用する者はごく一部だ。

 意味合い的には《剣技》とほとんど同義なのだが、剣技以外でも広く用いるため、霊力を用いる技術全般をそう呼ぶのだと認識している。

 俺がこの言葉を知っているのは《西方見聞録》という本を読んだからだ。

 さて、俺の知識自慢はおいておくとして、特に断る理由もないのでアリアンナに癒してもらおう。

 彼女の治癒魔法(ヒーリング)を待っていると、なぜか俺を膝枕して耳かき棒を取り出した。


「何やってんのキミ?」

「癒しの王道といえば膝枕耳かきです。エルフ族に伝わる書物にもそう記されています」

「そういう行為は恋人同士でするものじゃないのか?」

「私はリーシャに良くやってもらいましたよ」


 どうやらエルフ族の間では親友同士でもよくやるそうだ。

 人間とエルフ族の文化の違いなのだろうか。

 少しだけ気恥ずかしいが、彼女なりの信頼の証だと捉えて膝枕耳かきを受け入れた。

 旅仲間と接する時はその者の文化を最大限尊重する。

 これは俺なりのポリシーである。


「これは竹の耳かき棒です。硬くてよくしなるので、感触がよく、すごく気持ちいいんですよ」

「それは楽しみだな」

「では早速始めますので右耳を上に向けて下さい。はい、ゴローン」


 そのように説明し、笑顔のアリアンナは俺を膝の上に寝かせた。

 そして、右耳の入り口から奥にかけて丁寧に耳掃除をしてくれた。

 彼女の耳かきテクニックは一流であり、両耳の耳掃除が終わる頃には、体に溜まった疲れが完全に吹き飛んでいた。


「はい、おしまいです。私の耳かきはいかがでしたか?」

「すごく良かったよ。また今度やってくれ」

「はい、毎日でも」

「毎日はやらなくてもいいかな」


 アリアンナの天然なセリフに苦笑した。

 それからベッドに入るまで、アリアンナとおしゃべりをして過ごした。

 余談であるが、ロゼも近くにおり、耳掃除の間、終始赤い顔を浮かべていた。

 どうやらロゼの価値観的には恋人同士で行うやり取りのようだ。

 初々しい素直な反応で大変可愛らしい。



 翌朝、起床して朝食を済ませた俺達は獣王剣の道場へと赴いた。

 理由としては、昨夜アリアンナが言っていた弓矢を用いる型が存在するかどうか確かめるためだ。

 偶然にも当道場の師範代がロゼと知り合いだったのであっさりと謁見できた。

 師範代は、白髭を生やした優しそうなお爺さん。

 彼に聞いてみると、存在はするがその型を扱える使い手が希少で、ここにはいないとのこと。

 その代わり、クエム地方にいるシロナ小姐が弓矢の高手であることを教えてくれた。


「クエム地方ってどんな場所ですか?」

「南西部にある山岳地域よ。クエム地方は羊肉がとても有名で、美味しい(あつもの)がたくさんあるのよ」


 (あつもの)とは肉類や野菜で味付けしたスープ料理のことである。

 ここだけ切り取ると地方のグルメに精通したツアーガイドみたいだ。


「次の目的地が決まりましたね。出発はいつ頃にしますか?」

「別に急ぐ旅でもないし、出発は数日後にしようかと考えている。長旅になるから荷物を乗せるラクダも仕入れたい」

「了解です。ロゼさんもルクスさんの案で大丈夫ですか」

「構わないわ。私は二人と一緒に旅をしてるだけで楽しいもの」


 なんて嬉しいことを言ってくれるんだ。

 アリアンナも感動してロゼに抱きつき百合百合する。

 美少女二人が仲睦まじくしてるのは見てて癒されるね。


 それから数日間、俺達はこの街に滞在してスローライフを満喫した。


 そして、あっという間に出発の日。

 俺達は早朝のうちに街を出発した。

 クエム地方まではそこそこ距離がある。

 途中、いくつか山越えが必要。

 山賊などが出現する危険性があるので道中には注意を払いたい。

 歩き始めて半日が経過し、一つ目の山に足を踏み入れる。


 草木が鬱蒼と生い茂っており、視界はあまり良くない。

 全方位に意識を張り巡らせながら慎重に進んでいく。

 すると、草木をかき分けるような不審な物音と霊力を感じ取った。

 道の左右になんかいるな。


 以前、ロゼから貰った《潜魔神書》を確認すると霊力値35前後の人間達が道の左右に潜んでいる。

 ざっと数えたところ20人前後。

 数値は低いが、やけに多いので山賊の類だと考えられる。

 隠れたままなかなか姿を現さないのは俺達が油断するのを待っているのだろうか。


 先手必勝。

 敵が油断してる隙をついて、道の右側にいる敵に向けて雷を落とした。

 すると大きな悲鳴が上がった。

 と、同時に道の左側から十人前後の武装した男どもが一斉飛び出してきたので、雷龍刀を袖から射出する。

 周りに張り巡らせていた霊糸を介して山賊共をまとめて一掃する。


 バリバリバリバリ!


「「「「ぐわああああああ!?」」」」


 戦場全体に電撃が流れて奴らは全員気絶した。


「流石ですルクスさん!」とアリアンナが笑顔で俺を称賛する。

「周囲に敵がいるのはわかっていたけど、こんなにたくさん潜んでいたのね」


 ロゼは地図を眺めながら眉根を寄せている。

 盗賊達に対しては、嫌悪感を宿したような表情を向けている。


「数は多くとも一匹一匹は弱いから関係ないよ」

「流石ねルクス。アナタのような《化境》の達人が一緒なら安心して旅ができるわ」


 ロゼの発した化境というワードに俺は苦笑する。

 化境とは超一流達人を超えた存在。

 世界全体を見ても十本の指に収まるほどだ。

 四大門派の一つである紅蓮剣の開祖と同じくらいの強さ。

 そう考えるとなんだかむず痒いな。


「とりあえず、奴らの目的を聞き出そう」


 俺はそう返事をして気絶した山賊の一人を叩き起こした。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

アリアンナ:エルフ族の一人娘。

ロゼ:天魔の一人娘。


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