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第23話:獣王剣(3)

 朝にちょっとしたトラブルは起きたものの、その後は特に問題なく時間が過ぎていった。

 街を観光しながらアビスベルゼの風土を理解することができた。

 数多くの流派が健在するのは本当のようであり、各所に流派の旗が掲げられている。


 また、意外なことに、このアビスベルゼにも四大門派の剣術が存在していた。


 神聖剣、紅蓮剣、白氷剣、獣王剣。


 これらの旗を街で見かけた時は俺も目を丸くした。

 ロゼによると、「剣術に罪はないわ。悪いのはそれを扱う人よ」とのことだ。

 たしかに四大門派の使い手がすべて奴らのような屑とは限らない。

 全うに剣術を極めようとする者もいるだろう。

 俺はロゼの言葉に感銘を受けた。


 天魔神教は、武術の流派というよりも共同体に近い。

 武人の中で最も強いとされている当代の天魔を信仰するという共通の価値観の下で集まっているのがアビスベルゼの民の特徴だ。


 このタイプの組織は、現行のトップが強くなければ成り立たないのだが、どうやら当代の天魔は歴代最強と称されるほど強いそうだ。

 武術レベルは入神境。神の領域に足を踏み入れているとされている。

 紅蓮剣の開祖であるあの不敗炎剣ですら化境級なのだから、この入神級がどれほどすごいものか、俺には到底想像がつかない。


「やあ。可愛らしいエルフのお嬢さん。獣王剣に興味はないかい?」


 名所を巡って観光しながら仲良く道を歩いていると、突然、若い青年に話しかけられた。

 年齢は20代前半。

 彼は人の好さそうな笑みを浮かべていた。


「獣王剣といえばたしか……」

「そう、あの獣王剣。かの国では四大門派の一つに数えられるほどの一流の剣術さ。獣王剣はいいよ。たくさんの型があるから、剣術に自信がない方でも簡単に始めることができるんだ。このパンフレットを見てごらん」


 青年はアリアンナに一枚の紙を渡す。

 そこには獣王剣を始めてハッピーになった成功体験がこれでもかというほど記されていた。


「なんだか胡散臭い内容もあるわね。獣王剣を始めたおかげで科挙に受かったって、それ剣術関係ないじゃん」

「まあ勧誘パンフレットなんてそんなもんでしょ」


 と、俺とロゼは小声で会話する。

 アリアンナはというと、興味津々なご様子でそのパンフレットを眺めている。


「お嬢さんはいま何の剣術をなさっていますか?」

「いえ、私は武人ではないので剣術はやってません」

「ええ!? 本当ですか。お美しいのにもったいない。武人の女性はそうでない女性の何十倍も魅力的だと男性陣も言っていますよ」

「そうなんですか?」


 すると、アリアンナは俺の方を見た。


「必ずしもそうというわけではないが、武人の俺としては、やっぱり価値観の合う女性のほうが話しやすくはある」


 と、俺は正直な感想を述べた。

 彼女を強制するような言葉を使いたくないが、かと言って嘘を言ってもしょうがない。


「たしかに最近のルクスさんはロゼさんとばかり話してるような気がする……」

「いや、それはさすがに誤解だと思うぞ」

「そ、そうよ。別にアリアンナを仲間外れにしたいわけじゃないわ。私の地元がここだから自然と話す機会が多くなるだけよ」


 ロゼは顔を赤くしながら慌てて弁解する。


「なんにせよ、武術はやって損はないですよ。アビスベルゼは武人の社会的権力が高いので、強いほど色々と恩恵を得ることができます」

「うーん。ちょっと考えさせてください」

「はい。わかりました。嬉しいご返事をお待ちしております」


 アリアンナはその場での返事を保留にして、パンフレットだけを受け取ってバックの中に収納した。

 その後、夕暮れが近づいてきたので俺達三人は宿屋へと帰還した。


【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

ロゼ:天魔の一人娘。

アリアンナ:エルフ族の女の子。


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