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第19話:砂漠越え(5)

 扉を開けた先にいたのはスカーレッド。

 アーケディウス家の出身で彼女が会得してる紅蓮剣は四大門派の一つとして数えられている。

 エメロード教のような社会的な役割はないものの、紅蓮剣は魔物を駆逐する上でとても重要視されており、使い手の数も多い。

 そのため、紅蓮剣の門派は国内だけで100万人以上存在するといわれている。

 そして、アーケディウス家は紅蓮剣の名門であり、彼女の曾祖母は『不敗炎剣』の異名を持つ。

 その剣術レベルは超一流を超えた超超一流。

 神に至る一歩手前、人としての極みとして『化境』と呼ばれている。


 入神>『化境』>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人


 このように最強クラスの武人として評価されているので、その曾孫であるスカーレッドも周囲から期待されているのだ。

 彼女自身もとても優秀であり、13歳にして一流武人となっている。

 このまま剣の技術を重ねていけば超一流武人、ひょっとすると化境に至る可能性もあるだろう。


 そんなエリート街道を突き進んでいる彼女が現在私の目の前にいる。

 なにか私に用でもあるのだろうか?


「スカーレッドさん。こんな夜遅くに何か用ですか?」

「えっと、セレナードの部屋から叫び声が聞こえたから何かあったのかなと心配に思って」


 彼女は隣の部屋に泊まっている。

 もしかすると壁が薄かったのかもしれない。

 先ほどの発狂を聞かれていたようだ。


「心配をおかけして申し訳ありません。ゴキブリが現れたのでびっくりして叫んじゃったんです。ですが、奴はすでに浄化して、この世から消したので、今は問題ありません」

「よかった。てっきり魔人がセレナードの部屋に来たのかと」

「聖女である私が魔人ごときに負けるわけないじゃないですか」

「そうよね……あはは……」


 スカーレッドは笑いながら答えるが、なんだか声に力がない。

 よくよく見ると表情も暗い。


「スカーレッドさんの方こそ、顔に疲労が出てますが、お体は大丈夫ですか?」

「え、ええ。私は平気よ」


 全然平気そうには見えない。


 仲間の不調は今後の旅にも影響する。

 勇者のロベルトが不調な今、スカーレッドまで戦えなくなれば、誰が魔王軍と戦えるだろうか。

 それだけはなんとしても避けたい。


 頭の中で現状を分析しつつ、最善の結果になるような行動をする。


「平気そうには見えませんよ。体の疲れが取れる霊薬を出しますので部屋にあがってください」

「そう。じゃあお邪魔するわね」


 スカーレッドを部屋へとあげて、彼女に霊薬を振る舞う。


「こ、これ。白霊薬じゃないの。食べれば一年分の霊力がたまる超一級品の薬」


 スカーレッドは私が渡した霊薬を手に取り、目を見開いて驚愕する。


「教会から取り寄せたものです。たくさんあるのでお食べください」

「教会の財力は底なしね……」

「国内のみならず支部が大陸中にありますからね。魔王を倒すためなら支援を惜しまないそうですよ」


 私はそっけなくそう答えた。


 私は現在、国内での最高責任者である聖女だ。

 私の言葉は秩序神エメロードの神托として国内の全教徒を動かすことができる。


 だが、完全無欠の地位ではない。

 私と同等の地位を与えられている"枢機卿"が国内にいるからだ。

 この枢機卿の役割は、私の監視役兼教育役。いわば枢密顧問官のような役割がある。

 私が聖女としての地位を正しく全うできるように、楼蘭ろうらんより派遣されている。


 楼蘭ろうらんとは、ここからはるか遠くに存在する西方の国で、エメロード教の本場とされる国。

 そこから派遣された顧問官の意思に沿って、私は動かなければならない。


 枢機卿はいつも私に言っていた。


『エメロード教こそ、この世で最も優れた宗教でございます。

 聖女であるアナタの役割は、エメロード教の絶対的な権威を国内に示すことです。

 魔王を倒すためなら我々は支援を惜しみません。お分かりですね?』


 その言葉が脳裏に反芻する。


 "魔王を倒すためなら支援を惜しまない"


 一見するとプラスの言葉に聞こえるかもしれないが、逆に考えれば、魔王を倒せなければ私の地位が脅かされるということだ。


 不適格。

 →偽聖女。

 →この世から抹消して別の聖女を擁立する。


 これが起こり得る可能性が十分考えられる。


 なぜなら私は、聖女なら必ず持っているはずの"聖法力"が備わっていない。

 これを覆すための功績作りとしての魔王討伐なのだが、やはり多くの場面で支障が出ている。

 幹部からの期待が大きい分、それを達成できなかったとき、自分がどうなるのかわからないのが一番恐ろしい。


「もちろん理解していますよ、枢機卿。たとえ聖法力がこの身に宿らずとも、私は聖女ですから」


 スカーレッドには聞こえないほどの小声で、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。


「ルクスの件なんだけど……」


 ふと、突然。

 スカーレッドが口を開いた。彼女の口から出てきたのはいま一番聞きたくない男の名前。


「あの裏切り者がどうかしましたか?」

「えっと、あの……やっぱりパーティに引き戻したほうがいいんじゃないかと思ったの」


 は?

 こいつはいったい何を言っているんだ?


【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

セレナード:エメロード教の聖女。

スカーレッド:勇者パーティに所属する貴族令嬢。

ロベルト:傲慢な勇者。


【読者の皆さまへ】

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