第12話:謎の少女(6)
食堂をあとにした俺達三人は市場へと出向いて砂漠越えの道具を購入する。
砂漠の巡行に関してはロゼがとても詳しいので彼女のアドバイスに従って購入していった。
正午を過ぎた頃には砂漠越えの準備が完全に整った。
「これだけあれば十分だと思うけど、出発はいつ頃にするの?」
「今日はもうお昼を回ってるし、出発は明日にしようかな」
「それなら今日もあの旅館に宿泊ですね!」
「いや、今日は普通の宿屋に泊まろうと思う。この地の標準的な宿屋も確認したいしな」
「流石ですルクスさん。色々なことを考えてますね」
「すごいわルクス。アナタって本当に先のことまで考えてるのね」
アリアンナとロゼが俺を称賛した。
美女二人に褒められるのはとても嬉しいことだが、調子に乗ると痛い目に合うことは長年の経験でわかっているので、俺は謙虚に返事を返した。
「当たり前のことを当たり前にやっているだけだ」
「当たり前のことでもそれを実践できるのが素晴らしいの。中々できることじゃないわ」
「そうですよ! ロゼさんのおっしゃる通りです! ルクスさんと一緒に旅をしていると安心感で満たされるんです!」
「……ったく、お前ら俺を褒めすぎた。体がむず痒くなってくるぜ」
「ルクスさん照れてるー! かわいいー!」
「うふふ」
今日一緒に行動を共にしたことでロゼともだいぶ打ち解けることができた。
彼女は見識があって、誰に対しても優しいすごく魅力的な女性だ。
異教徒である俺達への対応も嫌味がなく、むしろ安心感があるほどに親切だった。
「日が暮れるまでもう少し時間があるし、村の近くにある遺跡に行ってみる?」
「この近くに遺跡があるのか?」
「ええ。遺跡には、私の曽祖父……じゃなくて初代天魔が残したとされる"天衣無縫の神文"が記されているわ」
「"天衣無縫"だと!? ロゼ、それは本当か!?」
ロゼが口にした言葉に俺は思わず聞き返してしまう。
「ルクスさん。天衣無縫ってなんですか?」
「天衣無縫とは七大陣法に数えられる自在法のことだ。天と地が一体となることですべての攻撃を無力化することができるらしい」
「な、なんだかすごそうですね」
武功に疎い彼女でもその凄さを感じ取ったようで、アリアンナは息をのんでいる。
七代陣法は、頭文字に七大とつくことから七つ存在している。
・天衣無縫の陣
・鏡花水月の陣
・煌天鳳凰の陣
・暗花華心の陣
・雷天龍神の陣
・氷雪抹夜の陣
俺自身も名称を把握してるだけで、具体的にどんな内容なのかまでは把握してるわけではないが、どれも一騎当千に匹敵するほどの強さだということはわかっている。
(まさかこんなところで天衣無縫の名前を聞くことになるとはな)
俺はすぐに頷いて、ロゼの案内で遺跡へと向かった。
町を離れて歩くこと30分。
俺達はロゼの話した遺跡へと到着した。
神殿のような建物をイメージしたが実際は洞窟の中にあり、風景に擬態して上手く隠されていた。
さらに入り口のところには結界も張られていた。
「見てわかると思うけど、この遺跡に入るためには結界を越えなきゃいけないの」
「結界の術式は知ってるのか?」
「誰も知らないわ。この遺跡に入れるのはお父さん……じゃなくて天魔に選ばれた人だけなの」
「それじゃあどうやって遺跡に入ればいいんですか?」
アリアンナの疑問も尤もだ。
せっかく天衣無縫の術式があるかもしれない場所にやってきたのに入ることができないってあんまりだ。
どうにか入るものはできないか。
意地でも入りたかった俺は結界に向けて雷龍刀を放つ。
「迅雷一閃!」
巨大な雷の斬撃が俺の手元から放たれて結界へと直撃する。
すると、なんということでしょう。
俺達の行く手を阻んでいた結界が立ち所に消えてしまったのだ。
「え、ええええ!? うそっ、ありえない!? 巨魔級の攻撃でも傷一つ付けられなかった結界が破壊されるなんて信じられないわ!?」
「流石ですルクスさん!」
驚愕するロゼに対して目を輝かせているアリアンナ。
「よし、結界もなくなったことだし先に進もう」
俺達は結界の奥へとさらに進んでいった。
しばらく歩くと修練場のようなぽっかりと開けた空間に到着する。
さらに中央部分には巨大な石柱が突き刺さっていた。
「あれが伝説の天衣無縫の神文……」
ロゼも初めて目にしたようでとても感動している。
俺は、石柱に近づいてそこに記述されている文章を熟読する。
しかし…………
あ、あれ?
この文章……
雷天剣の奥義書で読んだことがあるんですけど……。
【強さの段階】
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ルクス:化境の武人。
アリアンナ:エルフの女の子。
【読者の皆さまへ】
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