第103話:西域(4)
その日の夜。
俺はロゼの寝室に呼び出された。
時間帯もあって叡智なことをしたいのかもしれないと期待していると、何故かアリアンナとセレナードもロゼの寝室にいた。
「いったいどういう状況だ?」
「見つかったのよ」
「見つかったってなにが?」
「私の友人が『西域』にいるかもしれないんです」
西域とは、ここから何千里も離れた先にある西方大陸の諸国を指す言葉だ。
文化も宗教もまるで違うので、天魔神教とはこれまで関わりは持っていなかった。
そんな場所にアリアンナの友人がいるとわかったのはいったいどういう経緯なのだろうか。
「先日、西域出身の商人がアビスベルゼにやってきて、リーシャらしきエルフ娘を西域で見かけたと話していたのよ」
とロゼが事情を説明をした。
「それは確かなのか」
「はい。間違いなくリーシャです」
「見つかって良かったじゃないか」
「ですので、リーシャを迎えに行くために、明日にはアビスベルゼを旅立とうと思っています」
アリアンナはいつにも増して真剣な表情でそう答えた。
どうやらお別れの挨拶をするために俺を呼んだようだ。
「ちなみにお別れをするのはアリアンナだけじゃないわ」
「え?」
「私もアリアンナについて行くの」
「へー。……ってえええええ!? ロゼもついて行くのか!? 小教主としての仕事はどうするんだよ」
「ちゃんと代理を立てたわ」
「いったい誰を代理にしたんだ?」
「シャルロットよ」
「なぜに?」
「本人がやりたいと言ってたから。実力もあるし、人当たりもいいから適任だと思ったの」
まあたしかに超一流武人だけど、こんな大事な役をシャルロットに任せるのは少々不安だ。
「心配しなくても、お父様に許可を貰ってるから大丈夫よ」
「先代がそうおっしゃるなら……。だけど、ロゼまでいなくなると寂しくなるな……」
三人いる妻のうち二人がアビスベルゼを離れるわけだから喪失感を覚える。
「ルクス。今生の別れというわけでもないのですから、ここはお二人のお好きなようにさせてあげましょう」
セレナードは二人の選択を受け入れているようだ。
セレナードの助言通り、素直に二人を送り出してあげよう。
俺は大きく頷いた。
すると、ロゼとアリアンナは嬉しそうに笑った。
俺が今できることは、二人の居場所を教主として守り続けることだ。
その後、俺はロゼ・アリアンナ・セレナードと一緒に朝まで楽しくスキンシップをした。
そして、ロゼ&アリアンナの壮大な旅が始まった。