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第96話:我が神の名の下に(2)

 戦闘が開始した。

 敵の数は二人。手の内が読めるとはいえ油断は禁物だ。

 前世のような失態を犯さないためにも、いかなる状況下でも冷静に対処する。

 たとえ敵の刃が首に直撃し、この命が果てようとも、意識がなくなる直前まで心の炎だけは絶やさない。


「………………」


 私は両手で剣を構えたまま、無言で二人を見据える。

 一向に動かない私に対し、二人は怪訝な表情を浮かべる。


「見れば見るほどセレナードみたいな構えだね。まるで生き写しだ」

「気持ち悪い事言わないでよ。アイツはもうこの世にいないわ」

「いずれにせよ、時間をかけると追手が来て面倒だからさっさと殺すか」


 ロベルトは剣突をこちらに向けて光線を放つ。

 防御を貫通する効果があり、剣で受ける事が出来ないのが厄介な点。

 だが、それだけで勝てる程、武の世界は甘くない。

 鼻先に触れるかどうかの限界まで光線を引きつけ、神聖剣の基礎となる《無拍子》でひらりと回避する。

 自身の左足に右足を交差させ、重心移動だけで妖精の羽根のように回避する技術。

 筋肉の動きに頼らないので敵に動きを読まれづらく、零距離からでも敵の攻撃を躱わすことができる神聖剣独自の足さばきだ。


「うん? 外れた?」

「もうなにやってるのよ」

「ごめんごめん。ちょっと距離があったからね」


 ロベルトは笑いながら今度は連発で光線を放つ。

 複数の光線が迫りくる。

 しかし、私は慌てず落ち着いて、それらも《無拍子》でかわしていく。

 ロベルトも違和感に気づいて舌打ちをする。


「くそっ。あの女。ボクの攻撃をギリギリまで引きつけてかわしているみたいだ。生意気な奴め」

「こら! 避けたら当たらないでしょ!」

「…………」


 しかし、こちらから反応はしない。

 奴らの集中力を乱すためにも、彼らのペースには決して乗らないようにする。


「ちっ! 無視すんなっ!」


 案の定、スカーレッドが剣を抜いて単独で向かってくる。

 私はロベルトの気配を捉えたまま、スカーレッドの攻撃に備える。

 スカーレッドの剣が炎に包まれて一振りすると巨大な炎が噴出される。


 スカーレッドの剣路を見極め、一番受けやすい距離感で迎撃する。


 キンキンキンキンキンキンキンキンキン!


 何十回と剣を高速で打ち合う。

 私は表情一つ変えず、移動も最小限に抑えて体力の消費を抑える。

 彼女が生み出す炎は、霊力が媒体であるため、霊力で止められない道理はない。

 現に、スカーレッドは炎の勢いで押し切ろうとしているが、すべて私の霊力でかき消されている。


「くっ! こいつ! 澄ました面で全部受けやがって! 大人しく消し炭になりなさいよおおおおおおおおおおお!」


 スカーレッドは私から一定の距離を取って、そこから霊力を高密度に凝縮させた斬撃波を放つ。

 しかし、私は剣を前方に向け、風車のように高速回転させて斬撃波を受け止める。

 膨大な炎が私の霊力に触れて、すべて霧のように消滅していった。


「あえて受けてみましたが、完全に期待外れの炎でした。暖炉の炎の方がまだ熱いですよ」


 ブチッ!!!

 と、スカーレッドの血管が切れた音がした。


「絶対に殺すっっっ!!!!! スカーレッドレイン!!!」


 スカーレッドは上空に跳びあがってそこから無数の炎の隕石を次々と落としていく。

 私はその隕石の軌道を予測し、降り注いでくる隕石の間を稲妻のような軌道で高速で飛び移りながらスカーレッドに急接近する。


「なっ!?」


 一瞬で膝元まで踏み込んできた私に驚愕するスカーレッド。

 それに合わせて、ロベルトの気配が私の背後に移った。

 その瞬間、彼らに見えない角度で、私は口の端を少しだけ引き上げる。


「我が神に感謝します。彼らを同時に葬れることに」

「隙あり!!」


 と、ロベルトの声が背後から響く。

 しかし、私はそれより何十倍も速く、抜刀できる。

 すでに鞘に納められた自身の剣に手を添え、技名を叫ぶ。


 鞘の内部に霊力を凝縮させて放つ最大加速の斬撃。


「神聖剣奥義『神に捧げるセプレット』」


 前方から後方にかけて、地面とは水平の軌道での回転斬り。

 前方のスカーレッドと後方のロベルト。

 彼らの胴体はそれぞれバラバラになり地面に落っこちた。

 生気を失った死体を一瞥し、死亡したことを確認した上で剣をゆっくりと鞘に戻した。

【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

セレナード:エメロード教の聖女。真の主人公。


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