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1章 3
部屋の外も窓はなく、蝋燭の灯りが等間隔に並んでいる。
自分の横たわる輿に角度が着いた。頭の方が高くなり階段を上がっているのだと分かる。
それも、随分と長い距離の階段である。輿に伝わる振動から、一行が慎重に歩を進めているのは分かるが、それにしても相当な時間をかけて、暗い通路を上り切り、遂に輿の角度が戻った。
重い扉の開く音がしてすぐに、心地よい暖気が全身を包む。
黒一色の世界から一変した外の景色は、鮮やかな色に溢れていた。
首を傾けて見るといくつもの柱の向こうに四角い青空と、陽の光を反射する四角い水面が見えた。
回廊に囲まれた中庭の一辺を進んでいるのだ。
池を囲む色とりどりの花や青々とした草木。
極彩色の鳥が羽を休めているのも見える。
見覚えは無かったものの、美しい庭だと感心した。
角をひとつ曲がって直ぐに戸のない半円形の入口をくぐった。
目を引いたのは、霊安室の壁に掛けられていたのと同じ織物。
そして壁にくり抜かれた半円形の深い横穴。
その窪みの中に寝具が設えられていた。
輿はその横穴のすぐ傍につけられ、ギーダーを含めた数人がかりで寝床に移された。