第5話 今度は邪神ですか?
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翔太郎はパーナード司祭の説明を聞きながら、ふと思いついたことを聞いてみることにした。それはある意味無宗教の日本人らしい発想だった。
「あの、途中で口を挟んで済みませんが、質問いいですか?」
「ええ、どうぞ」
「千年前の大異変ですが、原因は何だったんですか? 神サマは何もしてくれなかったんですか?」
「む……」
「おい! 神に対して不敬であろう!」
「そうだ! 神罰が落ちるぞ!」
「むしろ我らが神に代わって……」
パーナード司祭は渋面し、今まで黙って説明を司祭に任せていた3人の助祭は激しく翔太郎を責め立てた。
「まあ、3人とも落ち着きなさい。ショータロー殿は騎士爵ですよ。不敬はあなたたちです」
「「「しかし!」」」
「まあまあ。それに彼は召喚されたばかりです。何も知らなくて当然。それこそ幼子のように教え諭すのも神官である我らの職務ではないかね?」
「あ、そ、そうでしたね」
「ショータロー卿、無礼をお許しください」
「申し訳ありません!」
司祭の説得によって3人は翔太郎に謝罪した。
当然翔太郎は受け入れる。
「いえ、こちらこそ言い方がまずかったです。お許しください。ですが、純粋な疑問です。お答えいただけますか?」
「ふむ。そうですな、詳しくは後日と思っておりましたが、いいでしょう。
大異変の原因は『邪神』の仕業です」
「え? 今度は邪神ですか?」
「はい。ご神託で伝えられたそうです。何でもこの世界を手に入れようとしたとか」
「はあ、そうですか。で、邪神はその後どうなったんです?」
「創造神プタルカが封印したとのことです」
「あ、結局神サマが助けてくれたんですね? しかし、残りの魔人や魔物の対処はしてくれなかったと。あ、もしかして千年前も勇者を召喚したとかですか?」
「いえ、そうではありません。当時の御神託によると、『全てを神に頼ってばかりでは人間にとってよくない。これを試練と考え、乗り越えよ』ということらしいです。それから千年、我らはこうして生き残り、戦い続けてきたのです」
「それはご苦労なことですが、すみません、私にはもう一つ矛盾に思えてならないことがあるんですが」
「まだ説明は終わっておりませんが、まずはその矛盾とやらをお伺いしましょう」
「では、また失礼な内容だったら謝罪しますが、今までの話を総合すると、南の大陸からは魔族を追い出し、人間の住む土地になった。北大陸は魔族の支配地。もしその状況が長く続いているのなら、安定と言っていいのではないですか?
ならば何故大異変の時は召喚しなかった勇者を今更呼ぶのでしょうか。必要ありますか?
国土回復というなら単なる領土問題です。他人が関わっていい話ではないでしょう」
「魔族の問題は単なる領土問題ではないのですが、まあ、それは今すぐ理解しろと言うつもりはありませんのでおいておきましょう。
ですが、今回勇者召喚を御神託によって行った理由、まだ言ってませんでしたね、それは千年前に封印された邪神が再び現れるからです」
翔太郎は唖然とした。そういうことは一番先に言ってほしかったと。
「……えーと、それは神サマが又封印してくれるのでは……」
「そうでしょう。そのとおりでしょう。
ですが、千年前と同じように魔物の大氾濫が起こります。先ほどの説明に補足しますが、南大陸から排除できたのは『魔族』、すなわち『魔人』のみです。
魔物は、各地にあるダンジョンや魔力溜まりの多い山林で無限に湧き出します。排除しきれないのです。
それに加えて邪神の影響による大氾濫が起こるとなると、今の人類では太刀打ちできないかもしれないのです。
ですから今回神は勇者召喚という手段で我々に手を差し伸べてくださったのです」
演説に近いパーナード司祭の最後の説明が終わった。
翔太郎はしばし今聞いた情報を頭の中で咀嚼してみる。
「……よくわかりました。御説明いただきありがとうございます」
「こちらこそ。納得いただけて幸いです」
「ですが、私が勇者として役に立つかは、また別問題です。ご覧ください、このひ弱な身体を。後ろの騎士の方はおろか、助祭の3人と比べても頼りないでしょう?」
翔太郎はスーツの前を肌蹴てひ弱アピールをした。
何故なら戦いなど御免だからだ。
「ハハハハ。御心配には及びません。勇者には『神の加護』があると聞いております。ギフトと呼ばれる特殊なスキルもあるそうです。ですから少し鍛えればすぐに強くなれますとも」
テンプレどおりの勇者仕様であった。パワーレベリングもあるらしい。
だが、もう一つ翔太郎には断らなければいけない理由がある。
「いえ、実はですね。私はがん……」
「失礼する!」
翔太郎の発言は突然のドアの開く音と力強い声に遮られる。
更に後ろに控えた騎士二人がガシャッと剣を抜こうとしたような音を立てたので思わず息を呑んでしまった。
現れたのは大広間で別れた騎士団長であった。
「司祭殿、進行状況はいかがですかな?」
「ええ。こちらの方は理解が早く助かっております」
パーナード司祭は椅子から立ち上がり騎士団長を迎え入れながら返答した。
3人の助祭も立ち上がったので、翔太郎も自然と続く形になった。
部屋の中に入ってきたのは騎士団長だけでなく、何か荷物を持った騎士数人と、神官服とは又違ったローブを纏った、ハッキリ言えば『魔法使い』みたいな人物も数人いる。
「それはうらやましい。代わってほしかったですな。といっても、説明は助祭の方と魔術師に任せましたがね。
おっと、時間も遅いですし、話を進めましょう」
騎士団長の発言で再び席に着くことに。ちょっとした席替えになった。
翔太郎の前にはパーナード司祭が陣取っているのは代わらないが、その両脇には騎士団長と年配の魔法使いが座る。残りの魔法使いと助祭たちは騎士たちとともに立ったままだ。
仕切り直しということで、改めて自己紹介となる。
騎士団長はグレン・ミリアードと名乗り伯爵家の三男で自身も男爵であるそうだ。
年配で顎鬚の白い、入室してから厳しい眼差しで翔太郎を見つめている魔法使いはフェロメール・ヒンデン。子爵で、なんと宮廷魔術師団の総長という地位にあるらしい。
翔太郎は少し居心地の悪い思いをする。
「ヒンデン卿、そんなに睨んではショータロー殿が緊張されますぞ」
パーナード司祭が場を和まそうとしてくれている。
「む。しかし、アヤツらのことを考えると腹も立つわい」
魔法使いことフェロメール宮廷魔術師総長の渋面は変わらない。
「向こうはそんなに酷かったのですか?」
「そのとおりよ。やれ『家に帰せ』だの、やれ『腹減った』だの、文句ばかりで躾がなっておらん貴族のバカ息子同然じゃ。極炎魔法で焼き払ってやりたいのを我慢するのに苦労したわい」
「それは災難でしたな。ですが一応は御神託による勇者候補、巫女長に神のご意思を再確認してもらうつもりはありますが、それまでは御自重ください。
ですが、ショータロー殿については問題ありません。おお、忘れておりましたが、ショータロー殿はあちらの世界で准貴族相当だそうです。受け答えはしっかりしてますし、なにより政治に参与していたほどの高い理解力の持ち主です」
「おお。そうじゃったか。これはすまぬな」
「いえいえ。とんでもありません。それより、知り合いでもないとはいえ同じ国の人間が失礼を働いたようでお恥ずかしい限りです」
ハッタリが効いたのか、異様に持ち上げられる翔太郎。特に誇らしい気にはならなかった。ボッチで微コミュ障である彼だが、10年も社会人をやっていれば自然と身につくスキルである。不良少年と比べられても困ると言うのが本音だった。
「で、そのような相手でも、お二人がここに来たということは、向こうでの説明は終わったと考えてもよろしいですかな?」
「はい。説明に苦労はしましたが、勇者候補であることと、ステータスの存在を教えると急に興奮しだしまして、何故かダンジョンや冒険者ギルドのことにも詳しいようでかなりやる気を出していましたね」
答えたのは騎士団長。
その発言の中に翔太郎にとって気になるワードが在った。
『ステータスに冒険者ギルドって、やっぱりあるんだ……また後出しかい!』
次話4月8日金曜日0時投稿予定です。
以後この作品は作者がエタらない限り毎週月水金0時に投稿します。
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