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第13話 講義・3

新作始めました。二作品あります。是非よろしくお願いします。


『鋼の精神を持つ男――になりたい!』 https://ncode.syosetu.com/n1634ho/ 月水金0時投稿予定。


『相棒はご先祖サマ!?』 https://ncode.syosetu.com/n1665ho/ 火木土0時投稿予定。



 その後30分ほど雑談をし、お互い無茶な要求はしなかった。

 翔太郎が聞いたのは精々こちらの世界で使われている各種単位である。それも正確に地球と比較したわけではない。

 だが、十分な収穫ともいえる。何しろ時間に関しては1年365日、一日24時間制で、今も翔太郎の時計どおり大体10時過ぎだというのだから。これなら何回か太陽が南中する時に時計を確認すればいいと判断する。


『もしこっちの一時間と地球の一時間が同じだったらそのままこの時計が使えて便利だろうな。奮発して自動巻き買ってよかった。大事に使えば一生物だし。

 ……まあ、オレの寿命の方が早いワケなんだけど』


 ケンジたちは騎士を巻き込んでダンジョンや魔物について盛り上がっていた。

 それを少しだけ微笑ましいと思う翔太郎は、どこか吹っ切れた表情をしている。



 講義の後半は『戦国時代』の続きではあるが、王都中央学院・神学課主任のジェラール・デプイ氏の番から始まる。


 国が興っては消え、消えては興り、を繰り返すこと300年近く、後世『賢者』と呼ばれる、当時は魔物を研究していた魔術師が教会に、敢えて戦乱の仲裁をすべきだと訴えてきた。

『神は人の世の争いに関わらない』が当時の方針だったので始めは一研究者の訴えなど取り上げられることはなかった。


 その研究者は諦めず訴えを繰り返し、何度も話を聞かされていた神官が次第に一考の余地はあると考え始め、ついには教会上層部で協議されることとなった。

 その研究者の主張は『大異変から100年周期で魔物の氾濫が起こっている。次の氾濫まで数年しかない。人が争っている場合ではない』というものだ。


 教会関係者は『確かに約100年前にも魔物が一時期急激に増え、戦争で人手が足りない地域に大きな被害が出たことは記録にある。しかし、それが100年周期だという確証はない』と今一積極的になれない。

 研究者は言う『暗黒期は言うに及ばす、復興期の混乱、魔人の存在感の大きさ、神選王の乱という大きな事件があって目立たないだけ。魔物の被害が例年より多い時期は間違いなくあった。それが100年周期だ』と。

 教会側は半信半疑ながらも記録を調べる。記録と言ってもプタルカ教がこの地を総本山と定めたのは復興期の終わりごろでそれ以前の記録はほとんどない。それでも300年余りの記録が残っている。

 それを精査すると、大異変から500年後、『魔人撃退完了宣言』の数年前に大規模な魔族の襲撃が各地で起こっている。当時は魔人の最期の悪足掻きと考えられていた。

 大異変から約600年後については、戦国の混乱中で資料は少なかったが、辛うじて、例年より魔物が多かったので戦争にも影響が出た、という記録が見つかった。

 大異変から700年後になると記憶も記録もかなりハッキリしている。

 こうして資料を並べてみると、研究者の推測は一笑に付していいものではないと思われた。


 教会上層部に『半信半疑』から『事実かもしれない』程度に危機感が生まれた。

 神選王の一件以来、人間同士の争いについて安易に『神託』に頼ってはいけないという風潮があったが、魔物の氾濫となれば教会も他人事ではないと恐る恐る神に伺いを立てることにした。結果は『近年魔物の活動が活発になる』という神託が下りた。


 こうなっては疑う余地もない。

 だが、人間同士の争いに関わらないという方針が300年も続いていたため、教会としてどう動くべきかが真剣に話し合われた。

 その結論は、『戦いの仲裁はしないが、魔物氾濫の警告を出す』という。

 当時、教会は国としての体裁を持っていたが、その『神聖プタルカ教国』を含め12の国と地域があってほとんどの国に神殿、及び孤児院を兼ねた巫女を養成する施設があり、神官や巫女が派遣されていた。そこを通じて各国の代表者に通達が回る。

 反応はそれぞれ。

 この300年政治的軍事的には何も言ってこなかった教会がわざわざ『警告』してきたため本気で魔物の氾濫を警戒する国。

 また、魔物がいるのは当然だから警戒は常にしていると豪語する国。

『神託』が過去のものとなって久しいので半信半疑の国。


 数年後結果は出た。

 教会はすぐに魔物討伐専任の軍を組織した。これが今の冒険者ギルドの前身だといわれている。おかげで魔物の氾濫が確認できたものの被害自体は例年並に抑えることができた。教会の『警告』に従った国も同様である。

 それ以外の国は戦争と魔物の両面対策が上手く行かず甚大な被害が出た。


 このことで教会並びに巫女が再評価され、権威を強めることになるが、問題は『魔物の氾濫が100年周期で起こる』ことであった。

 このことを重く受け止めた人類は、今回『警告』を素直に受け取った国々を中心に終戦協定を結び協力して魔物に対処していこうという風潮が生まれた。

 ここを『戦国時代』の終わりと定義する説もあるが、魔物被害が甚大だった国で更に戦争を仕掛ける国もあってなかなか混乱は終わらず、敗戦後併合されたり、内乱で国体が変わってから講和する国も出た。

 その時残っていた国と地域は10。これが『現代』にまで続いている。これをもって『戦国時代』終結とする説が有力のようだ。『大異変』から実に820年後のことであった。


 戦争がなくなったため、多くの人間は帰農することになったが、それでもあぶれる者は出てくる。各国は教会と協議して『冒険者ギルド』を立ち上げた。これは職を与えるというだけの目的ではなく、来(きた)るべき100年周期の魔物の氾濫に対応するためでもあった。

 ちなみに『ステータス判別器』が登場したのもこの時期である。


 その後戦争がなくなり多くのものが帰農したため生産力が上がり冒険者が魔物を狩るので被害も減ってきた。

 そして大異変から900年後も魔物の氾濫が起こった。

 既に教会からの『御神託』による警告は出ていたので各地での混乱は少なかったといえる。また教会の権威が強まることとなった。


 教会側は、権威が高まりすぎるのも各国との軋轢が生まれかねないので、鉾先をかわすべく、100年前に教会に注意を呼びかけた魔術師の研究者に『賢者』の称号を追贈した。

 当時の教皇が宣言した、『彼が必死で訴えなければ我々は真実を知らず、今も戦乱の世が続き、今後も魔物の被害を防ぐことができなかったであろう。讃えられるべきは諦めず訴え続けた彼であり、『御神託』を信じ対策に余念のなかった各国である』と。


 この宣言は広く受け入れられ、各国と教会の関係は良好であり続けたという。


 そして100年近くの間、見事なまでの平和が続く。

 例の100年周期が近くなるが、今回も問題ないだろうと軽く考えながら代表の巫女が神に伺いを立てた。

 すると、『邪神の復活』『大異変と同じ規模の大氾濫』という世界を揺るがす神託が下りた。

 教会は上へ下への大混乱。

 ただし、巫女が重ねて対策に関して必死に伺いを立てたところ、『勇者召喚』という答えをもらい、神による対策があるのなら心配ないだろうと、各国に根回しを始めた。

 情報をもたらされたパンドア大陸南部の各国にも激震が走った。しかし彼らも為政者であり、無駄にパニックを起こさせないように、実際『勇者召喚』が行われるまでは民間に情報を漏らさないようにすることを各国で協議した。

『神託』自体は信じているが、そもそも内容が希薄で詳細がわからない。理由として『神と人間とでは思考能力が違いすぎ、巫女の特殊スキルといえどもこの程度が限界』という説と、『神は人間に試練を与える存在。厳しくて当然』という説がある。

 民間では後者の説が有力で、しばしば神は、『やさしい慈母ではなく厳しい父親』や『きめ細かく指導する学院の教師ではなく、技は見て盗めと言わんばかりの無口な親方』と比喩される。


 それはともかく、各国首脳が秘密裏に協議した結果、『勇者召喚』はここブレスト王国で行われることとなった。

 理由として、『大氾濫』の規模が不明であり、最悪北大陸から『魔人』も攻めてくる可能性も否めなかったため、その時は戦いの最前線となるであろう場所が選ばれたのだ。



 これが翔太郎たちが召喚された経緯であった。



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