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467・幻惑の町

 どこか心地よい表情をしているジュールと一緒に町の中を歩き回りながら、ファリスに周囲を警戒させる。そうして進んでいくけれど……特に何も進展がなくて、ただ適当にうろつきまわっているだけだった。


「どう? 何か見つけた?」

「ううん」


 こっちでジュールを見守りつつファリスに怪しいところを調べさせているけれど……彼女視点からでは特に目立ったところは見つけられていない。

 というのもファリスは探索系列の魔導を一切覚えてない。そういう系統のイメージに欠いていると言ってしまえばそれまでだけど、ここでは割と致命的だ。なにせ判別手段が目視しか存在しないのだから。

 なら私が代われば良いと思うのだけれど――


「あ、ティア様! あそこに可愛らしいアクセサリーが売ってますよ!」


 お祭りの幻覚を見せられているせいか、ぐいぐいと押してくる。普段とは違ってどこか解放的な表情をしている。きっとこれも魔導の作用なのだと思うけれど……こうなってしまったら私もジュールを気にしながら周囲を探るような事は出来ない……というかする暇もない。


「ティアちゃん、やっぱりわたしじゃ限界あるよ。代わる?」

「もう少しだけたらね。普段色々溜めてるみたいだから」


 普段ジュールは色々と我慢している。だから少しでも発散させてあげたいのだ。それが例え仮初だったとしてもね。こんなに楽しそうに笑う彼女を見て、あっさり捨てる程冷たい訳でもないということだろう。


「夜になったら宿に戻るから、それまでは……ね」

「……別にいいけど」


 それに対してファリスは不満さを全開して抗議の視線を向けて来ている。それは『わたしだってくっつきたいのに』みたいな事を言ってきそうな感じだった。

 結局ジュールに連れまわされ、屋台巡りから始まり露店を回って、普通のお店に行って……まるで友達を連れてデートでもしているような気分を存分に味わわされる羽目になった。


 ――


 なんとも微妙な空気を夜まで堪能した私は、宿にファリスと疲れて眠ってしまったジュールを置いて一人町を歩いていた。外は相変わらず微妙に人が少なくて、夜が深まっていてもあまり変わらなかった。

 さて、ファリスが視認した以上の情報を見つけるなら、やはりこれしかないだろう。


「【サーチホスティリティ】」


 手のひらサイズの平面の地図が広がって、私を中心に魔力の反応を記していく。町の中だから敵も味方もない人物が多い。少なくとも現時点では敵ではない為、本当に薄い水色といった感じの色が行き交うけれど……その中で違和感があるとするなら真っ赤な点が一切動かずに光り続けているという事だ。

 私としてもこういう事にはあまり経験がないのだけれど……少なくともこの赤い点がジュールや町の人々に悪影響を与えているのはわかる。町の中心とそれを囲うように四つの点が存在していて、その全てが微動だにしない。見るからに怪しい。迂闊に近寄らない方が良いかな? とも思ったけれど、動かないのなら様子を見るだけでも出来そうだと考えを改めた。


 ここで気を付けなければならないのは薄い赤色の方だろう。これらは表面上は普通に接してくるけれど、私の敵であるという証拠だ。間者のようなものと言ってもいいだろう。

 やはり今も私を監視する為なのか、近くに一人がついている。宿の方にも数人が見張るようについていて、たったこれだけでもここが敵の手に堕ちていて、私達の動き次第でここが戦場になるという事が伝わってくる。


 ただ……まあ、私の監視役は一人。宿の方も片手で数えられる程度だからなんの問題もない。こちらの戦力を過小評価している。となるなら、まずは動き回って敵と相まみえる事が出来るような状況を作って行こう。最初の目的を極めたら後は単純。まず簡単に道を覚えて、袋小路になりやすい場所を選べばいい。

 という訳で、監視役を引き連れて戦いやすい場へと向かう事にした。


 のんびりと夜空の中を歩いているが、内心ではあまり穏やかではない。こんな大掛かりな事をしてまで名にをしているのか知らないといけない。人通りが少なくなって、地上では隠れる事が出来る場所もなくなり、通りがかりの人を装って私の隣を通り抜けようとする魔人族の男性の腕を思いっきり掴んであげた。


「痛っ! ぐ、う……な、何を……」

「あまり私を舐めないことね。たった一人で私の横を通り過ぎようなんて、随分甘い目論見じゃない」


 学生になって始めのリティアで襲われた時もこんな感じで細い路地のような場所で戦った。あの子よりは流石に成長しているという訳だ。軽く腕を捻っただけだから、それを振りほどいて私と距離を取る。


 逃げきれないと悟ったのか、腰に携えたナイフを取り出して私に殺気を放っている。

 いつでも飛び出せるようにしているけれど……所詮、監視や間諜を目的として鍛えてきた人たちだ。私が負けるはずもなく――接近してきたところを足で転ばし、魔導を数発叩きこむ。それだけで監視役の男はあっさり意識を失ってしまった。

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