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417・攻略編成

 雪風が教えてもらった軍事拠点の場所目指して行動を開始する――のだけれど、流石に今の人数は多すぎる。

 確かに多ければその分団体としての力は強まる。けれど今必要なのは少数精鋭。迅速に動くにはむしろ人が少ない方が良いのだ。それに、万が一行き違いになった際、彼らはその近くの町の可能性が高い。そこにアミを張って欲しいという気持ちもあった。


「――という訳で、レアディとアロズはこの国で情報収集してもらっていい? エルフ族が怪しい動向をしていたら、そこは念入りにね」


 一度分かれて行動しよう……ということで、大部屋に集まった私達は若干狭さを感じながら今後の事について話し合いをしていた。

 それは他のみんなも同じように感じているのか、窮屈そうにしている。


「……なにが『という訳で』なのかはわからないが、まあ大体わかった。他にも役に立ちそうなのは集めておく。酒は――」

「意識を失わないなら別に朝から飲んでもいいわ。お金は……」


 ジュールと雪風とレイア。どっちにお金を預けておこうかと悩んでいると、ジュールがおずおずと私の前に出て来てくれた。


「あの……今回は私がお留守番いたします」

「いいの?」

「はい。雪風はどうやら……倒さなければならない人がいるようですので」


 本当はジュールも一緒に行きたかっただろう。ここでやっぱりみんな行くというのもなんて言ってしまいたくなってくるけれど……なんとか飛び出る前にこらえる。

 以前の彼女なら、何が何でも付いて行こうとしていただろう。それを自らが率先して留守番を申し出るなんて……彼女の成長が目にしみるような気がした。


「だったら私も留守番してあげる」

「……ファリス? 大丈夫?」


 ジュールもそうだったけれど、それ以上に予想外の事が起こった。まさかファリスも一緒に行かないなんて思ってもみなかったからだ。私の事がかなり好きな彼女だからこそ、私が何も言わないのに離れて行動しようと思っていたなんて全く知らなかった。


「うん。ジュールだけじゃ不安だしね」

「……それならお願いね。ジュールに何かあったら――」

「わかってる。任せて」


 ウインクで応える彼女にも心配は残るんだけれど……仲間を信じるのも私の仕事だろう。

 それに何事も経験って言葉があるんだし、全く組んだ事のない人物と一緒に行動するのも経験ということだ。


「それじゃお願い。お金はジュールに大目に渡しておくから、レアディ達は酒代を極力抑えるように、ね」

「わかった。エールティアの姫様が戻ってくるまでは情報収集に尽力させてもらうぜ」


 へへっ、と嬉しそうに笑っているレアディにジュールが疑惑の目を向けている。やっぱりこの二人を残すのに不安が残る。雪風よりも相性が悪そうだし……。


「あまり気にすんな。俺も出来るだけ仲良くやってやるからよ」


 信じようと決めた端から心配事を溜め込む私を見透かすようにレアディは不敵な笑みを浮かべる。

 ……彼の行動に原因の一つがあるんだけど、そこを追求したら終わらない。


「ファリス、本当に頼んだわよ」

「おい」


 結局残されたファリスに念押しすることになった。レアディが何か言いたげだったけれど、まず態度から改めた方が良い。

 こっくりと頷いてくれるファリスだってもちろん心配だけど……彼女は私の言う事はきっちり守ってくれるからそれに賭けよう。


「それじゃ、ジュールはこれをお願いね」


 私は今手持ちの金貨が入った袋をジュールに渡した。いざという時の為にかなり多く持ってきたから大丈夫だろう。これで足りなくなったら本当に知らない。


「任せてください!!」

「レアディのお酒の代金はそっちから出してね。だけど、決して高すぎるものを注文しないように。あんまり巫山戯た事をするなら――」


 スーッと空気が冷たくなったような感覚。凍りつくような視線をレアディとアロズに向けて牽制しておく。

 お酒というのは高ければ美味いという訳じゃない。適切な時期や温度。それとちゃんとそれを味わえる舌がなければ安酒を飲んでてもさほど変わりはしない。


 それにお酒を飲んで情報収集というのは酒場くらいのものだし、わざわざ高い物を選んで飲む理由もない。


「――遠慮なく私に言ってね」

「は、はい!」


 ジュールが嬉しそうに返事をする一方、レアディは不満そうにしていた。


「信用ねぇな」

「まだ合流したばかりだもの。ずっと一緒にいたジュールの方を信じるのは当然でしょう?」

「違ねぇか。ま、俺も信じられるようにするか」


 いまいち信頼されていないのを気にしているけれど、彼が結果を出してくれればそれなりに信じる事が出来る。今は時間が必要というわけだ。


「こっちは準備が整いました。そちらは大丈夫ですか?」


 剣を携え、鎧を身につけたベアルと、私達と同じようにあまり武装を整えていないヴァティグが部屋をノックして入ってきた。

 それだけでヴァティグが人造命具を扱えるのがわかった。不要な武具は枷になるだけだしね。


「……ええ。こちらも準備は整いました」

「わかりました。それでは向かいましょう」


 こちらが武具を装着していないのを確認したヴァティグは先に部屋を出ていく。

 それを見届けた私は雪風とレイアの二人と頷きあった。


「それじゃ、後はよろしくね」

「お任せください!」

「わたしに任せてね」

「こっちは気にせず暴れてこい」

「お二人ともお気をつけて」


 四人の言葉に見送られながら、私達も部屋を出る。

 目指すはダークエルフ族の拠点。四人というのは心細い気もするだろうけど、私は何も心配していない。

 いざとなれば…….守る手立てなんて、いくらでもあるのだから。

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