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369・情報交換の場

 玉座の間から場所を移した先――応接の間と呼ばれている場所で私達は互いに腰を落ち着けて話し合った。


 ダークエルフ族の事。シュタインが話した彼らの目的。蘇った原初のスライムに複製体の数々……それこそ話し疲れてしまうほど。

 ただ、なぜ副都にダークエルフ族がいたのを知っていたか。彼らの仲間がどれだけこちらに寝返っているのかは秘密にしておくことにした。初代魔王様の複製体の話なんてしたって、余計に混乱するだけだしね。


「……なるほど。それが貴女(きじょ)の知りえた情報という訳か」


 北国の濃いお茶で話し疲れた喉を潤している間、マンヒュルド王は頭の中を整理しているようだった。

 後ろに控えている彼の側近もまた同じで、眼鏡を掛けて如何にも利発そうな彼からは、何か妙案でも出てきそうな雰囲気が漂っていた。


「それほどの事を知っている――という事は内通者がいると?」

「……そうですね。他にもお父様直属の諜報員を借りております」

貴女(きじょ)のお父上は、有名なリシュファス公爵だったな。なるほど、かの御仁の諜報員であれば、納得がいく」


 本当は大分違うんだけど、ここで有効活用しておけば、これから先に色々知りえても同じ言い訳が成立する。

 後々バレたとしても、その方が信憑性があったとしておけばいい。


「しかし……そうなればこの程度で済むはずがないだろう。その原初のスライムとやらも王都には現れておらぬし、未だ複製体達も温存しているのだろう。あの中身のない鎧――アーマーゴーレムばかりが出てきたのが良い証拠だ」

「アーマーゴーレム?」

「うむ。名前がないと不便であろう? 学者共がそう呼んだおったから、そのまま採用する事にした」


 確かに中身の無い鎧とか動く鎧とかよりもきちんとした名称があった方がいい。安直といえばそうだけど、悪くはない。


「わかりました。そのアーマーゴーレムはどの程度この国に?」

「一軍に匹敵する程の数は確認しておる。他にも数人程人影らしき姿は確認したらしいが……こちらの兵が交戦した中には見当たらなかった」


 多分、アイビグとかレアディとかだろう。シャラと呼ばれていた鬼人族は敵だったみたいだけど……全員把握しているとは言いづらい。これは後でしっかり問い詰めたほうが良いだろう。


「なるほど……つまり、まだその人影はこの国にいる可能性がありますね」

「その通りだが……見知らぬ二人組が鬼人族と交戦していたのを見た者がおる。しばらくは動向を探る予定だが、こちらに敵対する意思がなければ放っておく事になるだろう」


 それは意外な回答だった。国こそ自らである――そんな考え方をする人は、国に攻め入った事自体に嫌悪感を抱いているのなら徹底的に排除してもおかしくないのに。


「……意外、か?」


 顔に出ていたようで、なにやら生暖かい笑顔を向けられてしまった。


「陛下のような御方ならば、敵対者には容赦しないと思っておりましたので……失礼致しました」

「はは、構わんよ。確かに本来なら許されぬ事だが……竜人族の男と鬼人族の男、後はスライム族だと名乗っていたらしい女の三人による被害報告は受けているが、その三名は撤退している事が確認されておる。無論、引き返した可能性もあるが……それは詮無い事であろう」


 つまり、今は被害報告を受けていないから見逃す予定だ……という事かな。

 多分、マンヒュルド王は私のところに複製体達がいる事に感づいている。確証がないからこそ、こうやって引き出そうとしているのだろう。


 この考え自体が想像の域を出ないのだけれど、マンヒュルド王は中々仕事の出来る男性だ。今も私と落ち着いた会談を続けているけれど、その瞳の奥には鋭さが宿っている。

 私から少しでも多くの情報を引き出そうとしているのが良い証拠だ。


「滞在しているであろう者達の中には件の鬼人族と一戦交えたであろう魔人族と狐人族の男もいるかもしれぬ。出来得るならば、話を聞いてみたいものだが……」


 うーんと唸りながら考え込むようなポーズを取っているけれど、明らかに視線は私の方に向いている。

 何か知っているのなら教えろ、と言われているようだ。


「そうですわね。どのようにして仲違いする事になったのか……私も是非知りたいものです」


 出来る限りとびきりの笑顔で微笑み返す。こちらは全く知りませんとアピールしておく。

 情報の共有は確かに大切な事だ。お互いの知っている事を(さら)け出して認識を深める。それでこそより深く物事を理解出来るのだけれど……そんなものは真に心から信頼し合っている人達でしか成立しえない。


 マンヒュルド王が私に何か隠しているように、私も彼の事を信用していない。

 だからこれ以上何も教えるつもりはない。


 しばらくの間、なんとも言えない空気が二人――いや、三人を包み込む。

 互いに一歩も引かない威圧感が満ちた部屋の中。先に折れたのはマンヒュルド王だった。


「……そうだな。今はまだ国内の混乱を収める事が先決だ。腰を据えて取り組むようなことではない。その事は重々承知しておるよ」


 諦めるように笑顔を返してくれたマンヒュルド王だけど、その奥はいつまでも私を鋭く射貫いていた。

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