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354・妖精演舞(ローランside)

 ライニーの激しい魔導を時には相殺し、防ぎ、避けながら隙間を縫うようにローランは魔導で応戦する。


「【ナトゥレーザ――】」

「【マジックミュート】!」

「【――ランサ】!」


 寸前早く放たれたローランの魔導によってライニーの集まりかけていた魔力が分散し、【ナトゥレーザ・ランサ】は不発に終わってしまう。


「もうやめろ! 俺達は……お前は! あんな奴らの為にこれ以上戦う事はない!」


 しばらくの間魔力の集まらない状況……。

 ローランはここぞとばかりにライニーに訴えかけた。必死に。切実に。

 彼女が痛めつけられ、憔悴(しょうすい)している事がわかりきっているからこそ、ローランは彼女に手を伸ばす。


 だが、闇に沈んだライニーの心は浮き上がる事はない。『隷属の腕輪』で逃げられないようにされ、暴力と暴言の嵐に晒された過去が、彼女の自由を妨げる。


「ライニには無理だよ……。無理なの! ローランはいつもライニを庇ってくれた。優しくしてくれた。傷の手当てをしてくれたし、パンも分けてくれた。だけど……!」


 ――だけど、自分は逃げる事が出来ない。


 そんな言葉が口から溢れる事すら恐れるかのように目の奥は怯えていた。

 人前では強気な態度を崩さず、時には小馬鹿にした様子を見せるライニーの、本当の姿だった。

 見ているだけで痛々しく、哀しみに溢れた姿。


「エールティア姫なら大丈夫だ。ライニーだって……他のみんなだって温かく受け入れてくれる。お前はもう一人じゃないんだ……!」

「ダメ……ダメだよ。頭の中から離れないの。怖かったこととか、痛かったこととか……全部!」

「ライニー……」

「……! 【エクレルレッシュ】!」


 ローランの放った【マジックミュート】の効果が切れた事を感知したライニーは、これ以上話す事はないとばかりに魔導を発動させる。

 空から降り注ぐ無数の雷の矢。まるで激しいスコールのように降り注ぐそれらに晒されたローランは、盾を上にかざしながらライニーとの距離を詰める。


「近づいてこないで! 【ドゥンナースト】!」


 近くまで接近されたライニーは後ろに下がりながらパチパチと雷を纏っている霧の魔導を発動させる。

 不用意に距離を詰めたローランは雷霧の中に突っ込み、痛みに顔が歪む。


 たかが霧。だがそのそれは鎧や服の僅かな隙間に入り込む。そして雷を纏っているということは――半ば物理防御不可能な攻撃に晒されていると考えても過言ではない。

 しかし、ローランは全身で感じる痛みを耐えながらでもまっすぐ進む。ライニーはふわふわと飛び回りながら再び【ドゥンナースト】を発動させる。

 拡散する雷の霧は広範囲を包み込み、ローランの視界を遮り激痛を与える。


「くっ……【ヴィントルナド】!」


 雷霧に苛まれながら発動したのは竜巻。その中に風の刃が複数紛れ込み、雷霧を巻き上げ、霧散させていく。


「ライニー!」

「もう話は終わりだよ!」

「……いいや、終わりじゃない!」

「【ナトゥレーザ・ランサ】!」


 自然界に存在する属性の宿る六本の槍が出現し、ライニーの周辺を回るように待機する。

 一本一本狙いを定めるように放つそれらを、ローランは見事に弾くように防いでいく。


(くそっ……どうやったら話を……)


 無下なくあしらわれたローランは、それでも諦める事はせず、更なる闘志を漲らせていた。

 ライニーはローランにとって、産まれた時から続く地獄を共に支え合い、生き抜いた大切な仲間だったからだ。

 そして……ライニーがなぜ頑ななまでに彼の言葉を拒み続けるのかも。


(ライニー……俺は絶対に諦めない。俺もお前も……ここで終わっていい訳がない。苦しかった分だけ……辛かった分だけ幸せにならないと嘘だ。今まで地獄の中にいたんだ。救われないなんて俺は絶対に認めない!!)


 確固たる意志は自我をより強固にする。己の力を更に高め、自らの目的を達成させる糧となる。

 ローランは自身の体中に力が溢れるのを感じた。決して諦めない。その決意が彼を支える。


「ライニー……」

「【エクレールアッシュ】!」


 振り下ろされた巨大な雷の斧は建物を斬り裂きながら振り下ろされていく。

 僅かに身体をずらして回避したローランは、頬の方に痺れるような何かを感じながら駆け抜ける。


「お前がその気なら、相手になってやる……! 打ちのめしたうえで、改めて話を聞いてもらうぞ!!」


 戦う決断をしたローランだったが、それでも剣を抜くことはしなかった。人造命具すら使わず、相手を見据える。


「……なら、人造命具使いなよ。ライニをバカにしてるの?」

「はは、話は終わりじゃなかったのか」


(イラっとした時に下唇を噛む癖、治ってないな)


 一度戦闘を決めたローランの心は不思議と落ち着いていた。

 周囲の人達は既に避難を完了しており、その場に残っているのが彼ら二人だという事も、彼にははっきりと理解出来た。


「さあ、来いよ。もう周りには誰もいない。思う存分、力をぶつけてこい」

「言われなくても! 【コートネル】!」


 ライニーの周囲にばちばちと音が響き渡る。全身に雷を纏って近接戦闘に備える彼女を見据え、頭の中で戦略を組むローランは、知らず知らず微笑んでいた。

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