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27・エールティア、呼び出しを受ける

 決闘とかそれの結果、得られた権利とか……色んな事をしていたら、いつの間にかクォドラの次の月――メイルラの3の日になっていた。

 その日も私は変わらず学園でリュネーやレイアと一緒に穏やかで楽しい時間を過ごそうと思ってたんだけれど……ホームルームが終わったと同時に、私はベルーザ先生に呼び出しを受けてしまった。


「どうしたんですか?」


 もう決闘が終わって大分経つし、その後の私は特に何の問題も起こしてない。一年生にはそれなりに人気だし、二年生や三年生とはそもそもあまり会わない。会ったとしても私がそれなりの態度を取れば、先輩方も別に何もすることはないしね。ただ……何故か決闘が大好きで、生意気な上級生を力尽くで『わからせる』一年生って噂が広まってたのは気に入らないけどね。

 だけどそれ以外は特に何もなかったし、ベルーザ先生も何も言ってこなかった。それだけに、今日の呼び出しは不思議で仕方なかった。


「エールティア、君の魔導について聞きたいんだ。決闘でも使っていただろう?」

「ええ」


 クリム先輩との戦いの時に見せた『コキュートス・プリズン』の事を言ってるんだろう。あそこではかなり得意げにしてたけど……今更ながらに少し恥ずかしかった。なかったことにしたいくらいだ。


「あんなの見せつけられるとなぁ……一年生の魔導の授業じゃ、退屈だろう?」

「それは……まあ、そうですけど……」


 この学園の一年生は、まず魔導の基礎である魔力を練り上げる行為と、発動する為のイメージに磨きをかける事を重点にしてる。それでうまく魔導が扱えるようになったら、その後はひたすら反復練習。イメージさせるものも、最初は炎の剣だったり矢だったり……それなりに簡単な物になってる。


 初心者にも入りやすいし、一定の水準は物にすることが出来る。後は本人の才能次第ってところもあるけどね。

 で、肝心の私は……転生する前の世界で既に魔導はある程度極めてしまってる。それこそ結構無茶なイメージも再現できるくらいにはね。おまけにこの身体――エールティア・リシュファスに生まれ変わってからは、更に魔力の量が増えちゃって……少なくとも昔の私以上の魔導を行使することが出来る。

 そんな私が今更魔導の基礎を勉強しなおすなんてそれこそベルーザ先生の言う通り、退屈なだけだった。


「うん、だから特例として、魔導の授業だけ、君は特待生として特別授業に参加してもらおうと思っている」

「特待生?」

「ああ。諸事情で学園に入学することが出来ないが才能を感じさせる子や、明らかに他の生徒達よりも優れている者たちが集まる特別なクラス……と思ってもらっていい」

「なんで私がそんな場所に……?」


 自慢じゃないけれど、私は魔導を含めた戦闘以外の事は人並み。王族の一員っていうだけでそれなりの教育を受けてるだけで、基本的に他の生徒達とあんまり変わらないくらいだ。当然のことながら、頭の良さそうな響きを持つ『特待生』だなんてあまり似合わないと思ってる。


「君の場合、他の……特に教養関連の勉強は貴族のそれくらいはあるが、その域を出ていない。かと言ってその魔導の才能を燻ぶらせておくのは惜しい……そういう訳でこのような処置になった。通常は一年生のクラスメイト達と授業を行ってもらう。魔導の授業や戦闘の訓練などの時は特待生クラスに行ってもらう……。そういう事になった」

「そういう事に……って、拒否権は?」

「ない。と言うより、あっても君みたいなのが退屈にしていると、授業の進捗に響くんだよ。座学はともかく、戦闘関連はお前になんとかしてもらえばいい。そんな空気になって欲しくないからな」


 そんな風に言われるとはっきり『嫌だ』と言える訳がない。私も一応この国の王族だし、国民の成長を阻害するような事は出来る限り避けなきゃいけない。むしろ訓練中に他の生徒の戦い方を見て、教えてやってくれなんて言われなくてよかったくらいだ。


「……わかりました。では今日の午後の授業は――」

「ああ。向こうの先生にも話を通してるからそっちに行くようにしてくれ」


 あまり気は進まないけれど、変に意固地になったって仕方ない。その特待生クラスっていうのが、どの程度のところかは知らないけれど……少なくともここで普通に授業を受けてるよりは良いかも知れないからね。


「ああ、エールティア。一つ言い忘れていたことがあるんだが……」

「なんですか?」


 ベルーザ先生があまりにも真剣な表情をしてくるものだから、私の方も真面目な顔になる。もしかして特待生クラスにはなにか重要な事があるんじゃ……。そう思わせるくらいの本気さがあった。


「向こうに行っても、あまり揉め事は起こさないでくれよ? 僕も決闘の手続きばかりしたくはないからね」

「……先生が私の事をどういう風に思っているか……よくわかりましたわ……」


 散々引っ張っておいてこれなんだもの。苦笑いしか出ない。

 私だって別に好きで決闘してる訳じゃないんだけど……今までの出来事のせいでしばらくはこんな風に扱われるんだろうなぁ……と思うと、ため息しか出なかった。

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