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助けた犬獣人の破棄奴隷は伝説級の元冒険者?~そんなことよりもふもふしてもいいですか?~  作者: 有


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55/57

*注:修正前です4*

「逃げるな、皆で狙え!」

「大丈夫だ、全員で押さえこむんだ!」

 ダンジョンの入り口で何かが起きているようです。

 はっと見上げるほど大きな尾が、持ち上がり、ドシーンと地面を冒険者をつぶすようにたたきつけられた。

「ついに、ダンジョンの外に被害が……」

「見ろ、もう一つ尾がっ!」

 まるでティラノサウルスかなにか、よくわからないけれど、恐竜ののようなものが、怒りにかませて冒険者たちを攻撃している。それが2本。

 ルクマールさんはなんて言っていました?

 9つの頭のあるドラゴンで……分かれてそれぞれの頭と対峙……してるんじゃなかったですか?

 尾も9つあるんですね……そして、尾だけを相手する人はいないと……。

 もしかして、怪我をして運ばれてきていた冒険者さんたちは、あの尾にやられたのかもしれません。ところどころ鋭い角のようなキバのようなものが飛び出しています。

 ああっ。

 今も、ダンジョンの外で尾に向かっていった冒険者さんがその突起で傷を負いました。血が噴き出しています。

 思わず両目をつむって震える。

「配慮が足りなかったは、ユーキ、しばらくはこれで持つと思うから、街へ避難しなさい。ジョジョリを護衛につけます。作り方を教えながら移動してもらえる?」

 ぽんっと震えている私の肩をフィーネさんが叩いきました。

 嫌。

 嫌。

「怖いでしょう、ごめんなさい」

 怖い。

 怖い。

 だけれど、怖いのはドラゴンの尻尾じゃないです。

 怖いのは、ドラゴンと戦っているバーヌが傷つくことなんです。

 いいえ、バーヌだけじゃない。

 今戦っている人たちが、目の前で命を落とすことを想像すると、怖くて、怖くて……。

「フィーネさん、怖いです。誰も死なないですか?誰かが死んじゃうんじゃないかと思うと、怖くて……」

 フィーネさんが私の頭を撫でました。

 そして、ちょっとだけ困った顔をします。

「ごめんなさい……。犠牲者が出ないようにギルドとしてもできる限りのことをするけれど……」

 フィーネさんが4本に増えた尾を見て口元を引き締めます。

 ああ、そうなんです。

 私だけじゃないのです。

 みんな……誰も死にたくないし、死なせたくない。だから、必死に戦っているんです。

 目を閉じて現実から目を反らしても、何も終わらない。

 いいえ、そうじゃないんです。何かが終わってしまうんです。そうして、後で、あの時なぜこうしなかったのか、ああしなかったのかと、悔いだけがのこるのです。

 嫌です。嫌です。

 ギリリと大きく目を見開いて、ドラゴンの尻尾を睨みつける。

「【鑑定】」

「え?ユーキは鑑定もちなの?何か分かる?」

「ボクの鑑定は精度が悪いです。でも、何か人と違ったことが時々表示されます」

【鑑定結果

 名前:ナインヘッドドラゴン

 続きはWEBで】

 相変わらず役に立たないです。

「フィーネさん、あのモンスターの名前は『ナインヘッドドラゴン』」

 フィーネさんが私の顔を見て頷き、すぐにジョジョリさんに指示をします。

「モンスターの名前が判明。ナインヘッドドラゴン、情報収集を」

 現れたすでにナインヘッドドラゴンという文字列が入っている検索窓に、弱点と検索ワードを追加して虫眼鏡マークを押す。

 検索結果、ゼロ。

 ダメか!

 ナインヘッドドラゴン、倒し方。

 検索結果、1。

【倒し方が分からない】

 これもダメです!

 なんでもいい、情報が欲しい!

 ナインヘッドだけにして検索。

 検索結果はわずか20ほど。

 何、これ。

 上から順にみていくけれどめぼしい情報は何もありません。そして、一番下の情報。

【九つの頭を持つ龍。ナイトヘッドドラゴンと名付けよう。ああ、だが、この記録は、誰の手にも届かないかもしれない……】

 え?

 ええ?

 ちょっと待ってください、ナイトヘッドドラゴンと名付けたけれど、その情報が誰にも届いていないと言うこと?他の人は正式名称を知らないままなの?

 それで、検索に引っかからないの?

 そんな……それじゃぁ、どうにもならないというんじゃ……。

 バーヌに名前が上書きされてしまったことを思い出します。バーヌの情報は白紙……になってしまいました。過去の別の名前だったときの情報は無くなりました。

 どうしたらいいんでしょう。

 もっと、もっと便利に検索できないの?

 鑑定魔法って、レベルが上がるものでしょう?私の鑑定の能力も上がらないの?

 お願い!

 お願い!

 ピロロロンと、頭に機械音みたいな音が流れました。

 驚いて検索結果を見ると、検索窓の下に「除外検索」という窓が増えています。

「まさか、これって……」

 除外検索に、ナイトヘッドドラゴンという単語を。そして、検索窓に9つの頭 ドラゴンと入れて検索ボタンを押しました。

 検索結果が1000件を超えました。

 急いで単語を追加していきます。

 9つの頭、ドラゴン、弱点、倒し方

 検索結果12件。

【9つの頭を持ったドラゴンに遭遇。弱点も分からないし、倒し方も分からない】

【討伐依頼が来た。SSS級モンスターだという。大規模な討伐隊が組まれたが、なすすべもなかった。討伐はあきらめ、封印することになった。ドラゴンの弱点とされる首の付け根に集中攻撃を試みたが、全く効果がなかった。最高位鑑定魔法を用いても倒し方につながる情報は得られなかった】

 似たような結果ばかりだ。

 倒せない、倒せないんだ。でも、封印はできたんだろうか。それで危機が回避されるのであれば……。

 検索の単語を変える。

 9つの頭、ドラゴン、封印

 検索結果24。

 運よく一つ目に封印の方法が書かれている。

「フィーネさん、メモをお願いします」

「あ?は、はい」

「9つの頭を持つドラゴンを封印した。闇の魔導士12名により、二重六芒星を用いる。二重六芒星の設置場所に追い込むために、光の魔導士40名による高度結界魔法で取り囲んだ。暴れるドラゴンにより、幾重にも重ねた高度結界魔法は次々に解除され、最後まで結界を維持した光の賢者が魔力が尽きて命を落とす」

「ユーキ、いったいこれは……」

「分かりません、すいません、鑑定では弱点も倒し方も何も出てこなくて、ただ、その、封印方法が……」

 フィーネさんはまだいろいろと聞きたそうな顔を見せましたが、私の両手をぐっと握った。

「封印の方法でも十分よ」

 フィーネさんが出張ギルドのもう一人の職員に声をかけました。

「しばらく指揮を頼みます。私はすぐにギルドへ。封印に必要な魔導士の招集そのほか現状報告などしてきます。ユーキ、一緒に街へ」

 首を横に振ります。

「そう。分かったわ。気を付けるのよ」

「フィーネさんも気を付けて」

 検索とは違う。目の前に対象物がないと鑑定は使えません。

 もう一度、視界にドラゴンの尾を入れる。

 9つの頭、ドラゴン、封印

 もう一度鑑定結果を見ていく。

 8つめの結果。

【酔っぱらって夢でも見たんだろうと、誰も信じてくれねぇ。だが、嘘じゃねぇ。俺は、確かに9つの頭を持つドラゴンを見たんだ。きっと、大昔に封印されたっていうドラゴンに違いない。うっかり、封印されている場所に足を踏み入れちまったみたいなんだ。なのに誰も信じてくれない。

「もし、それが本当なら、お前が今生きてここにいるわけないじゃねぇか」と、酒飲み仲間はげらげらと笑いやがる。

「無事に生きて逃げられたのは酒のおかげだ」と説明を始めれば、ははは、そりゃいいやと、さらに笑う。

 本当なんだ。嘘じゃない。

 驚いて腰を抜かした俺は、持っていた酒壺を落とした。すると、その酒の匂いを嗅いだドラゴンがまるで酔っぱらったようにくてんとなったから、そのすきに無事に逃げることができたんだ。

「ドラゴンが避けに酔っぱらうなんて聞いたことねぇぜ」

「本当なら、ドラゴンとは友達になれそうだな」

 何度話しても、酒飲み仲間は面白そうに笑うばかりで信じてはくれない。】

 酒?

 これは本当の話なの?

 それとも、本当に酔っ払いのただの妄想?

「うわー!出てきた!」

「に、逃げろ!距離をとるんだっ!」

 検索結果に集中するあまり、騒ぎに気が付くのが遅れてしまいました。

 ダンジョンから、ついにナイトヘッドドラゴンが全貌を現しています。

 ダンジョンの入り口にいた冒険者たちが一斉に距離を取り始めました。単に逃げているわけでもありません。E級F級の身体能力が劣っていて逃げ送れそうな人の手助けをしながらの撤退です。

「だ、誰か、お酒を、強いお酒を持っていませんかっ!」

 声の限り叫ぶけれど、誰もこちらの言葉に耳を貸してはくれません。

「おい、坊主も早く逃げろ!」

 あ!

「ダタズはどうした?」

 初めに屋台を手伝ってくれた冒険者さんです。

「もう街に逃げています」

「そうか、街……ももう安全だとは言い切れない。なるべく森の方へ誘導を試みるだろうが……街の人間にも避難指示が出ていると思う、坊主お前も逃げろ」

 冒険者さんが私の身を気遣ってくれています。ですけど……。

 逃げない。バーヌを置いて逃げたりしない。

「お酒、持っていませんか?できるだけ強いお酒」

「なんだ?怪我か?消毒か痛みを飛ばすのか?ポーションが必要なら」

 ああ、そうですね。お酒って、傷の消毒などにも使うんですた。痛みを飛ばすとはなんでしょう?

「ポーションじゃ駄目なんです、お酒でないと……」

 検索結果が本当かは分かりません。

 正解も不正解もいろいろと混じっています。それに、人間だって、お酒に強い人も弱い人もいます。モンスターにも個体差があるかもしれません。

 いいえ、それどころか、9つの首の竜にはいろいろな種類がいる可能性だって……。画像検索も試みましたが、写真ではなく、記憶の中で美化されたようなイラストと、封印されている場所での画像なのか薄暗くてよく分からない画像、恐怖のせいでしょうか焦点が合わずにぶれている画像と、はっきりとした画像は見つかりませんでした。

 ですから、今、目の前に現れた巨大なナイトヘッドドラゴンと同種だとの確証もありません。

「料理にでもつかうのか?今はそれどころじゃないだろう、逃げるぞ!」

 冒険者さんが私の腕をとりました。

「必要、なんです。ここにないならば、街に行けばありますか?」

 必死に訴えると、冒険者さんはまだ何か言いたそうに開いた口を閉じました。

「理由は分からないが、本当に必要なことは分かった」

 冒険者さんは逃げていく冒険者の腕をつかんで引き留めて、酒を持っていないかと尋ね始めた。

「は?ねぇよ!離せ!」

「じゃぁ、持ってそうな奴、しらねぇか?」

「知らないっ!」

「すまん、引き留めて悪かった」

 と、そのようなやり取りを何度も繰り返す。

 ああ、巻き込んでしまいました。

「ありがとうございます。でも、その、逃げてください、あとはボク一人で……」

「はっ。俺は冒険者だぜ。有事に守るべき人間を見捨てて一人だけ逃げるような真似はしねぇよ。お前だって、誰かのためにここにいるんだろう?」

 ありがとうございます……と、その言葉がもう、のどが詰まってうまく声にならなかった。

「酒?そういやぁ、何日か前に酒飲んで悪酔いして騒ぎを起こしパーティーがいたぞ?」

「ああ、いたな。ギルドに厳重注意の上、酒は没収されてたぞ」

 その情報を聞いて、すぐに出張ギルドへと走り出します。

「あの、ありがとうございました、没収した酒がないか、聞いてきます!」

 これ以上巻き込みたくないので、冒険者さんには両手を振ってさようならです。

 振り向きません。

 フィーネさんもジョジョリさんも姿が見えません。もう一人の会話したことのないギルドの人に話しかけます。

「あの、お酒は、お酒はありませんか?」

「は?こんな時に何を言っているんだ。邪魔だ!」

 肩をトンっと押されました。

「お酒です、数日前に没収したと聞きました」

「しつこいな、今は酒なんてどうでもいいだろう、早く逃げろ、あれが見えないのか?」

 見えています。

 大きなドラゴンが、四方八方に9つの首を伸ばし、9つの尾を振り回しています。


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