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助けた犬獣人の破棄奴隷は伝説級の元冒険者?~そんなことよりもふもふしてもいいですか?~  作者: 有


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53/57

*注:修正前です2*

「奴隷はいつまでも奴隷じゃない。解放奴隷がいるでしょう?解放されれば奴隷じゃなくなる。奴隷じゃなくなったあと……、あなたの認める同じになったときに」

 バーヌが私の後ろに立ったのを感じます。

「バーヌは忘れない。ひどいことをした人たちのことを。……ボクは、いつまでもバーヌを奴隷ではいさせないよ?」

 冒険者がガタガタと震えだしました。

 奴隷がいつか復讐するなんて考えたこともなかったのでしょうか。

「おい、いい加減にしろよ。こんなところで言い争ってる場合じゃないだろう」

「そうだぞ。それに上級の冒険者が戦っている場に、素人の奴隷が現れても迷惑なだけだぞ。もうちょっと考えろ」

 他に二人の冒険者が、男の肩を叩きました。

「これを運べばいいのか?」

 大きな鍋を、二人がかりで運び、焼いた肉や揚げたフライを大皿に盛って運んでいきます。

 まだ加工していない肉類はどうしようかちらりと見ます。

 出張ギルドは、戦争のようなあわただしさです。

 いえ、モンスターとの戦争の真っ最中ですね。

「ダンジョン内で戦闘の際に負った怪我人の治療には、ギルドからポーションを無料支給します。早急に傷を治して、ダンジョンに戻っていただきます」

 フィーネさんが怪我人と、怪我人を運んできた人たちに説明している。

「効果上のポーションと中のポーションをすぐしようできるように、並べて。ダンジョン産で買い取った物で、足りないようなら、ダンジョンに入っていないC級以下の冒険者が持っていないか聞いて、購入価格に2割上乗せしてギルドが買い取ると言いなさい」

 次々と指示を飛ばしていました。

 肩を怪我したのでしょうかか。右肩から背中にかけて服にべっとり血の付いた長髪の男が、ポーションを飲み干してから立ち上がります。

 剣を手に取ると、ダンジョンのを向いて歩き出しました。私のすぐ横を通り過ぎるときに、ふらりとふらついて、とすんと、長髪の男が私にぶつかりました。

「すまない」

「あの、大丈夫ですか?まだ怪我が……」

「いいや。すっかりふさがったさ。ちょっと血が足りなくってふらつくがな」

 長髪の男の服を見る。本当に服にべっとりと血がついていて……ぽたぽたと流れ落ちた血の跡も見える。どれくらい血を流したのだろう。

「もう少し休んだ方が……」

「大丈夫だ、坊主。これでも俺はA級冒険者だ。血が足りないくらいどってことないさ。仲間が、待ってる……」

 って、長髪の男は血で汚れていないほうの手で私の頭をなでてから、再び歩き出しました。

 とても、大丈夫だっていう足取りには見えません。

「仲間……」

 ぼそりとバーヌがつぶやくのが聞こえました。

「ま、待って!」

 男を呼び止めます。

「坊主、休んでいる暇など」

 バーヌの運んでいる皿の上から、レバーのフライを取って男に差し出します。

「食べてくださいっ。食べ物が血になります」

 いくらレバーが貧血にいいと言っても、少し食べてすぐに貧血が収まるわけはない。だけれど、だけれど……みんなが必死に戦っているのに、何もしないでいることができなくて……。

「サンキュ」

 長髪の男が、フライをかじりながら再び歩き出した。

 あと、血を失った時には……そうだ。水分も必要だって聞いたことがある。

「何か、飲むもの持ってませんか?」

 周りの人に声をかけると、すぐに鍋を運んでいた冒険者が教えてくれた。

「喉が渇いたのならそこのポーションを飲めばいいぞ。効果微小で売り物にならない物が水替わりで置いてある」

 無造作に山のように積まれたポーションをいくつか手に持って、長髪の男を追いかける。

「血をたくさん流した時には水分も取らないといけないんです。だから、のどが渇いていなくても飲んでください!」

「分かった。そうだ、さっきのやつ、うまかったよ。これが終わったらまた食わせてくれ」

 長髪の冒険者さんがニッと笑って、ポーションに口をつけました。

 ん

 んん?

 ゴクリ、ゴクリと、のどを鳴らすたびに明らかによくなる顔色。

「【鑑定】」

【鑑定結果

 ポーション(ダンジョン産)

 続きはWEBで】

 長髪の冒険者さんの飲んでいるポーションを鑑定します。

 結果はいつもの通り。

 すぐに、検索窓のポーション(ダンジョン産)の後ろに、モモシシのレバーと単語を追加して検索。

 検索結果は2件のみ。

 理科の実験室みたいなトップ画像を持つブログみたいなページにつながりました。

【薬草が手に入らなかったので、代わりにダンジョン産の微小効果のポーションを大量に買ってきた。

 ダンジョン産のポーションに何かを加えると違った効果が現れると師匠に教わったことがあるからだ。

 しかし、ダンジョン産のポーションにわざわざ異物を加えるような人間は変わり者扱いされるため世の中には広まっていないそうだ。

 とりあえず、適当にいろいろなものを入れてみるが……問題は、出来上がった物の効果を自分では実験しきれないということだ。

 どうしたものか。】

 効果は分からないんですね……。

 ダンジョン産のポーションはそのまま使うのが普通。何かを混ぜたりはしない……。けれど、混ぜると、人工物のようにいろいろ効果が付属される可能性があると言うことなんですね。

 ダタズさんの奥さんたちは、何も「レアポーション」のおかげで特別に効果があったわけではなくて、効果が微小な普通のポーションでも、レバーと一緒に飲めば貧血を速やかに改善する効果が……ある、かも、しれない。

 検索ではこれ以上の情報は得られませんでした。

 ですが、十分です。可能性の話で。

「おいっ!」

 すっかり顔色がよくなって動きも機敏になった冒険者さんに話かけられました。

「坊主、今のポーションは何だ?ギルドから支給されたものにこんな効果は……高いものか?いくらだ」

 ん?

 え?

「あの、それギルドの……です。えっと、一緒に来てくださいっ!」

「は?」

 忙しく働くギルドの職員に声をかけるのは勇気がいります。確実ではなく可能性があると言うだけで……もし、違えば、時間を無駄にさせてしまうのです。ですけれど、効果があるのであれば、役に立つはずなので、声を張り上げます。

「フィーネさんっ!話があります、えっと、このA級冒険者さんの、話を聞いてくださいっ!大事な話ですっ!」

「は?おい、坊主、俺は、話なんてないぞ?それよりも一刻も早くダンジョンに……」

 冒険者さんが驚いて私の顔を見ました。

「ガラドゥーナさん、話とは?」

 フィーネさんがA級冒険者からというところで緊急性を感じたのかすぐに来てくれた。

「あ、いや、俺は」

「ポーションで怪我は治ったんだけれど、血を失いすぎて足元もおぼつかないくらいふらふらだったんです!」

 私の言葉にフィーネさんが眉尻を下げた。

「……ガラドゥーナさん、それは本当ですか?もし、戦闘に支障をきたすような状況であれば、いくら強制依頼とはいえ、休んでください。無理をして大切な冒険者を失うのはギルドとしても損失ですから」

 はい。そうですよね。無理して命を落とすのは駄目です。よかった。ギルドは冒険者を「奴隷」のように扱うことはないんですね。

 って、違います。今はそんなことじゃなくて。

「いや、大丈夫だ。違うな、本当は大丈夫じゃなかったな……。無理して逆に他の奴らに迷惑をかけたかもしれない。だが、今は本当に大丈夫だ。坊主にもらった食べ物とポーションですっかり元気になった」

 はい。言葉をいただきました。これで、フィーネさんは私の話も聞いてくれるでしょう。

「ガラドゥーナさん、ありがとうございました。今の話をフィーネさんにしていただけば、ボクは満足ですので、ダンジョンに向かってください。フィーネさん、続きはボクの話を聞いてください」

 フィーネさんはすぐに頷いて私の正面で姿勢を正しました。

「フィーネさんに試食してもらったフライと、そこに積まれている微小の効果しかないポーションの組み合わせで、薬草を調合して効果を高めるのと同じような作用がある可能性があります。貧血状態の人に試してみてください」

 私の言葉が言い終わるか言い終わらないうちに、すぐにフィーネさんは微小効果のポーションを4,5本ひっつかんで駆け出した。

「来て!君、名前は?」

「ユーキです」

 フライの乗ったサラをバーヌから受け取り、フィーネさんの後を追う。怪我人が集められている場所。フィーネさんは迷うことなく、冒険者の顔を見て血が足りなそうな一人の男の前に歩み寄ります。

「怪我は?」

「ああ、ポーションでふさがった。少し休んだら行くよ。A級の俺たちがこんなに抜けたままじゃ、ダンジョンから外に出てきちまうからな……それは防がないと」

「これを食べて、それからポーションを飲んで」

 フィーネさんがフライトポーションを手渡すと、何の躊躇もなくA級冒険者さんはフライを食べ、ポーションを飲みました。

「ん?頭の靄がかったのと、目の前のちかちかしたもんがなくなっちまったぞ?」

 貧血の症状が緩和されたようです。

「行けそう?」

 フィーネさんの言葉に男が頷いた。

「ああ、もちろん。元気が出たぜ。行ってくる」

 フィーネさんが私の顔を見ます。

「助かったわ……。ポーションでけがは治せても失った血まではどうしようもなくて、命は助けられるけれど、戦力が落ちていけば、応援を待たずして全滅なんてことにもなりかねないところだった……まだ、ある?」

 フィーネさんがフライに視線を落とします。

「はい。持ってきます」

「血の足りない者は、これを食べて、必ず一緒にこのポーションも飲むこと。あなた、微小のポーションをこちらへ運んできて」

 フィーネさんは相変わらずてきぱきと指示を飛ばしている。

「急ごう、バーヌ」

 バーヌと一緒にレバーフライを取りに行こうとしたら、フィーネさんがバーヌの腕をつかんだ。

「あなたの仕事は、ダンジョンへ行くことよ」

 フィーネさんがバーヌの顔を睨みあげました。

「!」

 バーヌが言葉を失って、フィーネさんの顔を見返しています。

 何も言わないバーヌの前に出て、フィーネさんの前に立ちます。

「それは、バーヌが奴隷だから、冒険者のために命を張れということですか?」

 フィーネさんが首を横に振った。

「いいえ、違う。彼……バーヌには人々を守れる力がある。だから、お願いしているの」

 バーヌに、人々を守れる力が?

「バーヌと、今は言うのかしら。あなたも分かっているわよね。今が緊急事態だということが。お宝祭りで冒険者の数は十分に足りているはずなのに、これほどの優秀な冒険者が怪我をして運ばれているわ。相手はS級モンスターなんかじゃなくて……SS級、もしくはトリプルかも……」

 フィーネさんの目はすでに私は見ていません。バーヌを見ています。

 バーヌの顔を見ると、バーヌが複雑そうな顔をしています。

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