表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
助けた犬獣人の破棄奴隷は伝説級の元冒険者?~そんなことよりもふもふしてもいいですか?~  作者: 有


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/57

回復

 鍋には形よく切られた野菜がどっさりと入って煮られている。

「シチューと言っていたし、味付けはダタズさんを待たないと無理でしょうが、先に柔らかくなるまで煮ておこうと思いまして」

 ふむふむ、そうだよね。日が暮れるか暮れないかっていう時間になったら夕飯の時間になるそうですし。シチューはじっくりに込んだほうがおいしいに決まっている!

「肉は、ずいぶん大きく切って入れてあるんだね?」

 2~3センチ角のイメージだったんだけど、とんかつくらいのサイズの肉が入っている。

 バーズが驚いた顔をした。

「え?そうですか?ああ、もしかしてユーキはまだ子供だから食べられる量が少ないからでしょうか?これくらい冒険者ならペロリですよ。肉だけお代わりする人もいますよ?」

 ん?

 もしかして、シチューってでっかい肉がどーんと中心に入った肉料理なのだろうか……。一人1枚肉、その周りに野菜シチュー……なるほど。異文化です。

「フライ、売れそうだから下ごしらえしてるね」

「おーい、おーいっ」

 ダタズさんの声が聞こえる。遠くに見えるダタズさんの隣には、少し痩せてはいるが自分の足で歩いている女性の姿があった。

 女性に何か話をしながら、こちらを指さしている。

「ありがとう、ありがとう!ユーキ、君のおかげで妻はこの通り」

 ああ、やっぱり奥さんなんだ。

「ありがとうございます。なんと感謝を伝えればよいのか……」

 深々とダタズさんと奥さんが頭を下げる。

「あの、お礼なら、モモシシを狩ってきてくれたバーヌや、ボクにレアポーションを売ってくれた出張販売所の人とか……えっと……」

 あまりの感激っぷりに、目が泳ぐ。

「バーヌさん?」

 奥さんがバーヌを見る。

「まぁ、奴隷……奴隷にお礼を言えと……」

 ドキリ。

 もしかして、私は言ってはいけないことを言ってしまった?

 でも、だって、私……からすれば、人間に上下なんてなくて、奴隷だって子供だって、部下だって、誰だってしてもらったことには感謝しないといけないって……。そう、神様だと言われるお客様だって「ありがとう」って言ってくれるよ?

 ぎゅっと奥さんが、私を抱きしめた。

「ありがとう。あなたのような優しい子に出会えて私は幸せだわ……」

 今まで床に伏せていたとは思えない。ふわりと花の香がした。

「バーヌさん、ありがとう。あなたの狩ってきたモモシシのレバーのおかげでこうして、また自分の足で立って動けるようになりました」

 奥さんは、私から離れるとすぐにバーヌにお礼を述べた。

「私は解放奴隷なの。主人が……お金をためて解放してくれた」

 え?

 奥さんがはにかんだ笑みを見せる。

「はは。まぁ、昔話はあとにして、準備を進めよう。下ごしらえをありがとう。うん、あと鍋にはクルルの実と、隠し味にはちみつを少し入れて、それから……」

「もう、あなた、隠し味をペラペラと人に教えないの!」

「ぷっ」

 思わず吹き出してしまう。奥さんにしょっちゅう言われていたというけれど、本当だったんだ。

「あは、そうだ、そうだったな」

 ダタズさんが嬉しそうに笑う。そうだろう。また、同じように奥さんの小言が聞けるようになったんだもんね。

「あら、これは何?」

 私が下ごしらえしていたものに首を傾げる。

「レバーを使った料理です。ちょっと待ってくださいね、すぐできますから、食べてみてください」

 揚げ焼きして奥さんとダタズさんに渡す。

「あら、美味しい!」

「本当だうまい!」

「よかったです。レバーは捨てるみたいなんで、嫌いな人が多いのかと思ったので……ほかにも何人か試食してもらったんですけど、売っても構いませんか?えーっと、材料はパンと小麦粉とニンニクと油と塩なんですけど、原価に問題なければ」

 ダタズさんが首を縦に振る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ