売り上げ 宣伝
「すいません、数が足りなくなりそうなので、ここまででおしまいとなります」
声を張り上げる。
それから、紙とペンを出して、紙に「半額」とたくさん書いていき、それを一つずつちぎる。
「申し訳ありません。特製のタレがなくなりそうです。せっかく並んでいただいたのですが、ご購入いただけないかもしれません。お詫びにこちらをどうぞ」
半額とかいてちぎった紙を手渡す。
「こちらをお持ちいただければ、正規の値段の半分の価格でお売りいたします。手間をおかけするお詫びです。また、こちらを持ってきていただければ並ばずに優先的にお品をお渡しいたしますので。タレの補充が済み次第、夕食時間、もしくは明日にはまた出店いたしますので。申し訳ありませんでした」
と、頭を下げて半額券を渡していく。
「おお、いいのか?売り切れなんて別に坊主のせいでもなんでもないけどな」
「気にするな。遅かった俺たちが悪いんだよ。ダンジョンだって先に宝箱に到達した者に権利がある。のんびりしてた者が怒る筋合いじゃないからな」
なんか……。
「あ、ありがとうございます。皆さんがとてもよい方なので、次もおいしいものを提供できるように頑張ります。また、もっと手際よく販売ができるようにいたしますので」
せっかく並んだのに売り切れかよ!ふざけんな!と怒られると思ったので、先手を打って半額券を作った。
それでも、今食べたいんだよっ!という言葉を覚悟していたのですけれど……。
思ったよりも、皆さんよい方でした。
「これ、なんて書いてあるんだ?店のマークか?」
半額の文字を見て面白そうに眺める人。
日本語だから読めないどころか文字だとすら思ってない?
「今食べられないが、次に半額で買えるなら、得したなぁ」
半額券を嬉しそうにポケットにしまう人。
後ろから順に券を配りながら謝っていく。
「あと、30本となりました」
バーヌが私にも聞こえるように声を上げました。
ということは、あと数人で終わりのようです。半額券を持った人たちは列を離れていきます。急いで列の前に前に進んでお詫びと半額券配布。
とりあえず全部売れました。
「驚きました……ご主人様はにょんなやま」
また、ご主人様とか言い出したので、ほっぺたぶにーの刑です。容赦はしません。
「ユーキはどんな魔法を使ったのですか?」
はい?魔法?
「並んでいた人たちが素直に文句ひとつつけずに帰っていった」
「これです。あの、勝手なことしてすいません」
残った半額券を見せる。
「これ、半額券です。あの、次にここで販売するときに、並んでくださったのに品物がなくて買えなかった人は並ばずに半額で買える券です……。その、売り上げは少し減ってしまいますが、原価割れしなければ、えーっと」
ダタズさんが感心したように半額券を見た。
「それはすごい。こちらとしてはまた店に足を運んでもらえるわけか。何度か足を運んでもらえれば、あとは私の腕次第で、味を気に入ってもらえれば常連になってくれるかもしれないと言うことだな」
味、そうですね。試食が一般的ではないですが、味さえ知ってもらえればもっとお客が増えるのにという店もあるでしょう。
その点、ダタズさんのお店は味については満点です。半額券は試食のような役割も兼ねられるってことでしょうかね。
「あの、それで勝手なお願いなのですが、今日の夕食の時間帯か明日にでもまたここで料理してもらってもいいですか?」
バーヌが狩ってきたモモシシをちらりと見る。
「えっと、これがさっきの売り上げです」
ジャラジャラと銅貨と小銀貨を出して数える。




