ダンジョンの近くへ
うん、やっぱりこの人たちもいい人です。鑑定なんてしなくたって分かります。ダタズさんの奥さんを気遣ってダタズさんに声をかけていましたし。それに食べ方もきれいでした。
「あの、実は……」
思いついたことを話してみまする。
「へー、それは面白そうだね。いいと思うよ、手伝うよ」
と、2人組の冒険者は、私と一緒に店に戻ります。
……いい人すぎですね。
「あの、せっかくのお宝祭りなのに、いいんですか?」
歩きながら二人に尋ねます。
「あー、そうだな。だけどな、冒険者を長いことやってると、毎日無事な姿を喜んでくれる人ってのは、貴重なんだよ」
「毎日、店に顔を出すと本当にうれしそうな顔をしてくれるんだ。いろいろ事情があって、一月近く顔を見せなかった後なんて、泣いて無事を喜んでくれたことがあったなぁ」
2人は40代でしょうか。冒険者の中でもかなりのベテランと呼べる年齢でしょう。
「恩人だよ。冒険者なんて、途中で何が目的か、優先順位が何なのか分からなくて無茶する者が多い。お宝、金、名誉……」
「俺たちも、無謀なことしたこともあったが、ダタズのおかげで、命以上に大切な物はないって思うことができた。俺たちが生きていることを喜んでくれる、死んだら悲しむ人がいると、それだけで、優先順位を間違えずにやってこれたんだ」
そうなんですね。そっか……。うん。
分かります。
自分のために生きるのって時に辛いことありますもん。
この世界に突然放り出されて、一人っきりで、どうしていいか分からなくて、怖くて辛くて、もう死んだほうがいいみたいに思ったこともりました。
けど。
望結がいます。
この世界に望結が。
だから、私は生きなくちゃいけないのです。
あ、今はバーヌもいる。
「あの、いったいどういうことで……」
店に入ると、困惑したダタズざんがいました。
それでも、私がお願いしたようにパンや包丁などいろいろ準備をしてくれています。
焼くなら火も必要だろうと、薪や串、気がつけば荷物の量はかなり多くなっています。
「じゃぁ、行こうか。こっちだよ」
「え?あれ?お二人も、何か忘れ物でも?」
2組の冒険者が荷物を持つ。
「これが特製のたれですね」
壺の蓋を取って中をのぞく。
ぷぅーんと鼻に飛び込んできた匂いは、まさに焼肉のたれでした。
絶対、これ、美味しいやつですね!
「早く行きましょう!」
壺にしっかり蓋をして、両手で抱えます。
「ダタズさん、早く食べたいので、料理お願いしますね!あ、お店にはクローズの看板とカギを忘れずに。行きましょう!」
2人組の冒険者には事情を説明しましたが、バーヌとダタズさんには話していません。バーヌはお得意の(?)忠誠心なのか、私のすることを信用しきっているのか何も尋ねてきません。
ダタズさんは、子供に見える私が、お腹が空いて早く食べたいと言っているのに逆らえないのか……言われるままに店を閉めてついてきました。いいひとすぎます。
20分ほど歩くと、ざわざわと騒がしくなってきた。街よりもたくさんの人が集まって活気がありそうです。
「ああ、ダタズ、とうとう店、つぶれちまったのか?それで冒険者になろうと?」
すれ違う冒険者がダタズさんに声をかけてきた。




