店の事情
「でも、それを言えばパンをくれた冒険者もいい人だろ?」
「そうですね。でも、ユーキはそのあと、ポーションを飲ませてくれた。自分のためじゃないでしょう?ジョーンさんを助けるためだったでしょう?」
うっ。
「それは、だって……ジョーンさんには乗合馬車の中でいろいろ親切にしてもらったからだし……それに、そのうまくいけば孤児院の助けになるかなんて下心があってのことだし……」
なんだろう、この忠犬ハチ公みたいな絶大なる信頼感……。本当に、私、そこまでいい人じゃないですよ。
「もうこの話はやめやめ。2人で一緒にね協力しないと。バーヌに任せっきりにしたボクが悪い。獲物を取ってくてくれたのがバーヌだったら、取引するのはボクとか、分業したらよかったんだよ。ボクだけ楽しすぎちゃ駄目ってこと」
「いえ、でも、奴隷である僕のしごにょに」
ほっぺたびろーんの刑。また奴隷とか。
「ボクには鑑定があるから、いい人見つけることはできる。だから、いい人見つるから!」
ぐーきゅるるーと、お腹が鳴りました。
「すぐに見つけるよっ!」
と、店の外から店員を鑑定すること4回。
「あ、ここの人は正直でいい人そうだよ」
5番通りの3番食堂。
「なんか、あまり客が入ってないようですね」
そういわれれば、そうなんだけど。2組客がいるだけだ。
「いらっしゃいませ」
暖簾をくぐると、先ほど鑑定をかけた店の人から声がかかります。あ、暖簾は実際にはないよ。店に入ったと言いたかっただけです。
かなり使い込んで薄汚れているけれど、洗濯はしっかりして清潔そうなエプロンをした30代の男性です。
料理と客の対応と1人でやってるのでしょうか?だとしたら、あまり客が多くてもさばけませんね。
……もしかしてまずい店だった?いい人ってことだけしかチェックしなかったです。
「食材を買い取ってほしいんです」
バーヌの持っているものを店主に見せます。
「これは新鮮でよさそうな品ですね。全部で銀貨1枚といったところでしょうか」
おお、銀貨1枚?推定価格小銀貨5枚~8枚なのに。というか、一番初めのおかみさんなんて小銀貨1~2枚で買いたたこうとしたのんですよ。
ばぁっと明るい表情をすると、逆に店主が申し訳なさそうな顔になりました。
「これだけよい材料を使えば、美味しい料理が作れそうです。ですが、残念ながら、うちでは……これだけの材料を使い切ることができそうにないので……」
と言われ、店内を振り返るります。
うん、客が2組。人数にして5人です。
「ダタズの店はよ、味は確かなんだ。前はもっと流行ってたんだがなぁ」
客の一人が頭をかきました。
「奥さん、まだ具合悪いのかい?1人で店を切り盛りするのは大変だろう」
ん?
別の客がダタズさんに話かけています。
奥さんの具合?
ダタズさんが、小さく首を横に振りました。
「そうかぁ。早く良くなるように祈っとくよ。じゃぁ、ごちそうさん」
お客さんが剣を手に出ていく。
「お気をつけて。命より大切な宝はありませんから」
「おう、ありがとうな!」
命?




