おかみさんとの攻防
「おや、ずいぶん新鮮そうだね。取り立てのリリラか。ちょうど食べごろのいい物ばかりだ。ヌルクは、傷が見当たらないけれど、どうやって仕留めたんだい?」
「素手で」
そこでおかみさんがふっと顔を上げた。
「素手?まさか、どこかの飼育場から盗んできたんじゃないだろうね?」
検索結果。
料理の味は良い食堂のおかみさん。
商売上手でがめつい。
相手を見て態度を変える手腕は立派だ。
だが、商売相手として取引はしたくない。足元見て値切られるどころか、いっぱい食わされたという者もいます。
料理はおいしいのですね。
ですが、なんか、あまり人柄としては褒められていないようです。
同じ料理でも金を持ってそうな人には高く売るのでしょうか?それとも、同じ値段の料理でも、盛り付けに差があるとか?
「まぁいい。買い取ってやってもいいが、2人分の料理と現金で支払ってほしいんだったかい?うちの料理はそこそこの値段がするからね、料理は出すけどお金にはならないよ」
という言葉に、バーヌが残念そうな顔をした。
「そうですか?小銀貨3枚くらいにはなるかと思ったのですが」
ウサギサイズの獲物2匹。どれくらいで売っていたでしょうか。2000円として2匹で4000円、果物1個100円で10個で1000円。合わせて5000円。そこから食事代1000円を二人分引いて現金をもらえば、3000円、小銀貨3枚くらいですね。うん、私の感覚とのずれもないです。
「何だい?文句があるのかい?いいんだよ、別によその店に行ってもらっても。だけど、お前みたいな奴隷から出所が怪しいヌルクを買い取ってくれる店がどれだけあるか」
言いがかりをつけて買いたたこうって言うのでしょうか?
「あーあー、傷のないヌルクの毛皮が手に入るんだから通常より高く値段つくと思うがねぇ」
ぼそりと客の一人のつぶやきが耳に入りました。
やっぱり、おかみさんの基準はほかの人からしてもおかしいんだ。
「バーヌ、どうしたの?」
店の中に入り、バーヌの横に立ちます。
「おかみさん、バーヌが何か失礼を働きましたか?」
おかみさんが私を上から下まで眺めました。
「あんたが奴隷の主人かい?」
怪しむ顔つき。そりゃそうですよね。子供が奴隷つれて、現れたら。
「いいえ。ボクの父がバーヌの主人です。父が、護衛にとバーヌをボクにつけてくれています。獲物の出所がボクが保証します。バーヌが街の外で捕まえてきたものです」
というと、おかみさんがふぅーんと言って、少し試案する様子を見せました。
「出所が分かればうちも安心して買い取ってあげられるよ。食事2人分に小銀貨2枚」
ああ、足元見てますね。
子供と奴隷の組み合わせ、なんとでもなると思っているに違いません。
紙とペンを取り出し日本語でメモを取ります。とはいっても、特にこれといって意味のない言葉を書くだけです。
「バーヌ、ありがとう。調査は無事に終わりました。この店の評価は☆1つですね。味がいいと評判でしたから期待しておりましたが、物の価値を正当に評価できないようです。次の店に行きましょう」
紙とペンをしまうと、バーヌに小さく頷いておかみさんに背を向けます。
「は?調査?いったい何の話?」
おかみさんが驚いた顔を見せています。




