スキル
悠真たち四人はヨキアの教会を訪ねていた。悠真が他の三人に教会に行くと話すと三人も一緒に着いていくと言ったのだ。魔族を相当数倒したので、皆レベルがどのくらい上がったか知りたがっていた。
悠真が祈りの部屋に入る。もう三回目ともなると慣れたものだった。
しかし、祈りの部屋ってのはどの街の教会でも同じ作りをしているんだな。小さな部屋の真ん中に台座があり、その少し奥に光の球体が浮かんでる。確かこれも古代のアーティファクトなんだっけ。
悠真は台座にステータスプレートを置いて目を閉じた。ステータスプレートの情報が更新される。
名前 :ユーマ
種族 :ヒューマン
歳 :26
レベル:84
属性 :雷、光
魔力量:620
スキル:身体能力常時10倍、収納ストレージ、取り寄せアポート、魔銃術、光剣術、探知、スキル移動
「うわっ、レベルがめちゃくちゃ上がってるぞ。ヒュドラを倒したからか?」
それに……『探知』はあのマップのようなものが視えるスキルだよな? この『スキル移動』ってのは一体?
そういえば『???』の表示がなくなってるぞ。どういうことだ?
悠真は心の中で神様に尋ねてみる。ただのアーティファクトのはずなので受け答えはできないのだが、悠真だけは何故かやり取りすることができた。
(やーやー久しぶりだね。ヒュドラを倒してしまうなんてすごいじゃないか)
頭の中に声が響いてきた。
(……? 誰だお前? 前の神様はどこ行ったんだよ)
(何言ってるんだい? ぼくがそうだよ)
(喋り方が違いすぎるぞ?)
(ふふ、あの喋り方の方が神様っぽいでしょ? 最初からこの喋り方だと信用してもらえないかなと思ってね。まあ喋り方なんてなんだっていいんだよ)
(……まあいいや。色々聞きたいことがあるんだ)
(そうだろうね。いいだろう、今回は少しだけ君に説明してあげよう。まずはスキルについて)
(そうだな、おれがスキルを習得する条件について教えて欲しい。なんでこうも簡単にスキルを習得できるんだ? あともう一つ、前まで『???』という項目がスキルにあったんだけど、なくなってる)
(いいだろう、実はその二つの質問は一つの回答で答えることができる)
神様の話はこうだった。
今まで表示されていた『???』というスキルが実は『スキル移動』というスキルということ。今まで表示を隠していただけで、このスキルはずっと発動可能だった。というか発動していた。
この『スキル移動』というスキルは自分のスキルを物に移すことが可能になるというものだった。また、逆も然りで、物に付与されているスキルを自分に移すことも可能だ。
別に物にスキルを移してもその物自体がスキルを発揮できる訳ではないので、効果は何もないのだが、例えば同じスキルを持っている人間がいれば、物を介してスキルをの受け渡しなんて事も可能だという事だった。
ただし、このスキルは超レアスキルで、現時点でこのスキルを確認しているのは悠真一人だけという事だ。
「つまり、このスキルがあったから『魔銃バルバトス』や『光の剣クラウ・ソラス』を触った時にスキルがおれに移動したってことか? 武器にスキルが付与されていた?」
悠真は思わず口に出して言ってしまったが、その問いにも神様は反応した。
(そうだね、正解だ)
(じゃああの短剣にも?)
(ああ、短剣には『探知』のスキルが付与されていたはずさ)
なるほど、ようやく合点がいった。それでおれは次々にスキルを習得していったというわけか。
(でも、なんで最初は表示が『???』だったんだ?)
(君の人間性を見ていた。君が悪い人間ならこのスキルのことは隠し通すつもりだったんだ。まあ無意識にいくつかのスキルは取得してしまっていたけどね)
(なんでそんなことを?)
(このスキルを使えば、君は前勇者と同等の力を手に入れることができるからさ。この世界に散らばってる前勇者リザリオのスキルが付与されたアイテムを全て回収すればね)
(やっぱりおれが後から習得したスキルは前勇者のスキルだったんだな!)
(そうだよ。ただ、君が悪いやつなら全部回収されると大変なことになるからね。スキルの存在を隠して起きたかったってわけ)
(……なんでおれにそんなスキルが?)
(その話はまた今度教えよう)
(何か知ってるんだな?)
(ふふ)
(わかった、それはいいとして、もう一つ。なんでおれの『収納』に前勇者の持ち物が入ってるんだよ?)
(持ち物もスキルも、君に渡したかったからだ。賭けだったけどね。今のところその賭けは成功してると言える)
(……どういうことだ?)
(いずれわかるよ。さあ、話はここまでだ。また会おう)
(おい! 待てよ!)
(あ、そうだ。ここから東のダンジョンにリザリオが残したアイテムがある。そのアイテムには『スキル探知』のスキルが付与されてるはずだ。それを習得すればスキル回収が捗るはずだよ)
(え? いやちょっと待てって!)
それから神様は全く反応しなくなった。いつも一方的に話を切りやがって。
祈りの部屋を出ると三人が悠真を待っていた。
「ユーマ、遅かったですね」
「あ、ああ。ちょっとね」
「?」
三人は不思議そうな顔をしたが、悠真は気にせず外に出ることにした。
色々わかったこともあったけど、結局目的がわからない。疑問は増えるばかりだった。




