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不穏な動き

 エレーナはため息を一つついて椅子に座った。先の戦いの後始末が忙しく、昨晩は一睡もせずに働き通しだったのだ。

「エレーナさん、疲れてますね」

 エレーナの顔色に気づいた悠真がそう言った。

「まあな、しかしまだやらなければいけないことはたくさんあるんだ。休んでもいられん」

 再び、大きなため息をつく。


「それでユーマ、お前の持っている武器のことだが」

「ああ、前勇者リザリオの持ち物なんですよね。やっぱりお返しした方がいいんですか?」

「いや、どういうわけかお前が持ってるならもうお前の物なんだろう。それに、お前ならきっと悪いようには使わないはずだ」

「そんなもんですか……」

「『魔銃バルバトス』を使いこなせていたということは、『魔銃術』のスキルも持っているんだろう?」

「はい、いつの間にかスキルを習得していました……そうだ! 聞きたかったんですけど、スキルってこんな簡単に習得できるものなんですか? いつまにかっていうか、あまり何かした覚えはないんですけど」

「いや、普通はそんな簡単にスキルは増えない。そうだな、光の剣と魔銃について、リザリオがどうやってそいつらを手に入れたか教えてやろう」


 エレーナの話はこんな感じだった。

 リザリオも元々、『魔銃術』や『光剣術』のスキルは持っていなかった。この武器たちはそれぞれダンジョンに眠っていた古代のアーティファクトだと。


 そういえばヴォルツの国王もそんなこと言ってたな。


 リザリオはそのダンジョンを攻略し、ダンジョンに認められたことでそれぞれのスキルを得たという話だった。


「つまり、本来はダンジョンを攻略したものにしか扱えない武器のはずなんだ」

「……ダンジョン攻略の報酬がその武器とスキルってことか」

「そういうことだな」

 つまり、仮に武器だけリザリオから奪ったとしても使えないわけだ。だけどおれはその武器とスキルの両方を持っている。


「ちなみに、他に武器は持ってないだろうな?」

 エレーナはジロリと悠真を睨んだ。

「い、いや、持っているといえば持ってるんですけど……」

「なにっ!? どういうことだ!」

 悠真は、収納(ストレージ)についてエレーナに説明した。

 収納(ストレージ)のスキルを持っていること。その収納(ストレージ)に最初から武器やアイテムがたくさん入っていたこと。入ってる武器を取り出すための魔力消費が大きすぎて取り出せないこと。


 ——光の剣を取り出すときも魔力オーバーして気絶したぐらいだもんな


「なるほど、収納(ストレージ)か。リザリオも同じスキルを持っていたな」

「リザリオも?」

 また新しくおれとリザリオの共通点が出てきたな。ここまで来ると偶然とは思えない。


収納(ストレージ)の中身、少しでいいから読み上げてくれないか?」

「ああ、いいですよ。ええっと——」

 英雄の剣カラドボルグ

 光の剣クラウ・ソラス

 神剣アロンダイト

 ……

 …………


「もういい。わかった」

「はあ……」

「その収納(ストレージ)の中身はリザリオのもので間違いない」

「ええ!? リザリオの収納(ストレージ)がおれに引き継がれてるってことですか?」

「わからん。一体どういうことだ……」

リザリオとおれに一体どんな関係があるっていうんだ……。


「まあ考えていても仕方ない。まだ出発はしないんだろ?」

「そうですね。レイの行方がわからないことにはなんとも……そうだ、この街にも教会ありますよね? あのマップが突然見えるようになったのも気になるので祈りの部屋でプレートを更新したいんですけど」

「おお、そうだな。街の東にあるから行ってみるといい」

「ありがとうございます」


****


「ヒュドラが倒されただと!」

魔界の五大魔王の一人、ベルハルトの城は騒然としていた。ベルハルトはヒュドラを倒せる人間がいるなど想像もしていなかった。

あの化け物を倒せる人間がいるとなると、あの街を攻め落とす為には相当な戦力をつぎ込む必要があるだろう。もしくは自身が自ら出向くしかないか。と、柄にもなく頭を使っていた。


「……使えんやつらめ。もういい、おれが行く」

「ベルハルト様が自ら!?」

「あの怪物ヒュドラを倒すことのできる人間にも興味がある。おれが直接この目で確かめてやろう」


ベルハルトの気が短いとはいえ、ベルハルト自らが人間界に赴くことは滅多になかった。

二年前に勇者が現れたときも、自らが相手にするまでもないと思っていたら、やっぱり同じ人間に、それも一緒に旅をしていた仲間に殺されたと聞いた。人間ごときが魔王に勝てるわけがない。ましてやその勇者とやらは魔神様を倒す為に人間の神に選ばれたという。

一度人間たちには身の程を知らせてやる必要があるな。

そんなことを考え、ベルハルトは城の玉座から腰をあげた。


「そういえば、別の勇者がまた現れているそうだな。ついでにそいつも殺しておけば、魔神様を倒そうなどど夢を見る連中はいなくなるだろう」

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