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勇者とは

 城に帰ると、称賛の嵐だった。

 悠真たちは城のみんなに感謝され、まるで英雄のように扱われた。


 エレーナは戦いが終わっても後片付けが忙しく、顔を合わすことなく夜になってしまった。

 悠真は自分の部屋のベッドに倒れこみ、長い一日を振り返っていた。国の英雄に通常の客室に案内するなんて恐れ多いとのことで、一人一室を充てがわれたので、一人でゆっくり考えることができた。


 この国に来て、色々知ることができたな。

 まず、元々は勇者は別の人物だったということだ。神様が選んだ勇者はその人物で、名前はリザリオ。


 次に、今の勇者はそのリザリオを殺したことで勇者になったということだ。名前はレイ。勇者を殺すと勇者になれる……?

 このあたりがイマイチよくわからないけど、勇者のスキルを奪ったとか言ってたよな。つまり勇者と認定される条件として、「そのスキル」を持つ者と言う条件があるということか? 「そのスキル」を持っていたら誰でも勇者になれるのだろうか?

 ……このへんは考えてもわからないな。


 そして最後に、リザリオの生前の持ち物が何故かおれの収納(ストレージ)に入ってるということだ。

 この剣も、そしてこの銃もリザリオの持ち物だった。一体どういうことなんだ?

 それにリザリオが持っていたというこの短剣、触った途端にマップ探知ができるようになった。これはスキルなんだろうか……。もう一度祈りの部屋に行って確かめてみる必要があるな。

 スキルを覚える条件なんかも詳しく聞いてみたいところだ。


 そういえばもう一つ気になることがあったな。エレーナさんはおれとリザリオがどこか似てると言っていた。顔ではなく雰囲気が、と。うーん、リザリオももしかしてこっちの世界に転移してやってきたとか? おれの親族が?

 考えにくいけど……そうなるとリザリオって名前も偽名ってことになるよなー。んー、よくわからん。


 だめだ、結局わからないことが多すぎる。おれとリザリオは一体どんな関係があるっていうんだ。

「なんだか寝れなくなっちゃったな」


 悠真は部屋を出て城内を散歩することにした。そういえば街を一望できそうなテラスみたいな場所があったなと思い出し、行ってみることにする。


「あれ」

「あ、ユーマ」


 アリスが街を眺めてボーっとしていた。

「どうしたんですか? ユーマ」

「なんか考え事してたら眠れなくなっちゃって。アリスは?」

「わたしもです」

 アリスはふふっと楽しそうに笑った。


 悠真がアリスの隣に立ち、同じように街を眺める。

「ユーマは一体何者なんでしょうね」

「何者って、どういうこと?」

「あれだけ強くて、前勇者に似ていて、その人の武器を扱える。ってなんだかユーマ自身が勇者のように感じてしまいます」

「うーん、それは自分でもまったくわからないんだよね。前にも言ったとおり、おれは別の世界では平凡な人間だった訳で」

「……帰る方法、見つかると良いですね」

 言葉と裏腹にアリスは悲しそうな表情をする。

「そうだな」


 しばらく、二人の間に沈黙が流れた。しかし悠真にとってその時間は居心地の悪いものではなかった。


「ユーマはほんとにすごいです。だってまた国を救ったんだもの」

「成り行きだよ。おれが自分から動いたことはないよ」

 そう、ないはずだ。なのに毎回気づいたら厄介ごとに巻き込まれてるんだもんな。

「それでも、最後はやっぱり助けてくれるんですよ。ユーマは」

 アリスは嬉しそうに笑った。

 悠真は、この笑顔を見れるんだったらまあいいかな。とかキザなことを考えてしまう。


「じゃあ、わたしはもう寝ますね」

「ああ、おやすみ」


 帰る方法か。ほんとにあるのかな。なんだか無性にカップラーメンが食べたくなってきた。帰りたいな。

 悠真はしばらく夜の街を上から眺めて、部屋に戻った。


 翌日、悠真は部屋のドアをノックする音で目覚めた。

「よく眠れたか?」

「エレーナさん、おはようございます」

 寝ぼけ眼で返事をする悠真。


「今日は叙勲式があるんだ。ユーマたちも出席してくれないか」

「おれたちも?」

「ああ、ユーマたちがいなければヒュドラを倒すことはできなかっただろう。その功績を王様が讃えてくれるそうだ」

「堅苦しいのはめんどくさいんですけど……」

「まあそう構えなくても大丈夫だ」


 叙勲式は午後から行われた。エレーナや、他の活躍した兵士なども叙勲され、ユーマたちの功績も讃えられた。

 王様はなんだか頼りなさそうな人だった。たぶん実質軍のトップはエレーナさんなんだろう。


 叙勲式が終わると、エレーナさんが後で部屋に来るように、と声をかけてきた。

 それだけ聞くと、色っぽい話に聞こえるが、まったくそんなことはないのだろう。勇者についての話だろうか。

 それについてはおれも聞きたいことはあるんだよな。

 おれはまだこの世界のことを知らなすぎるのかもしれない。まあすぐ帰れると思ってたから知ろうともしなかったんだけど。


「よく来たな。まあ座ってくれ」

「はい、それで話があるんですよね?」

「そうだな、お前が持っている武器のことで、改めて情報を整理しておきたくてな」


 やっぱりだ。

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