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渦巻く戦線

「みんな無事か!?」

「「ユーマ!」」

 よかった。みんな大きな怪我はないようだ。でも——

 周りを見ると、遊撃部隊で生き残ってるのはもはや数人しかいなかった。


「エレーナさん、ボルマーさんが……」

 アリスが悲しそうにエレーナを見る。

「そうか、優秀な男だった。わたしが死なせてしまったようなものだな……」

 エレーナはアリスのその表情で全て悟ったようだった。

「とにかく、まずは周りの雑魚を片付ける!」

 エレーナが大きく手を広げるとエレーナの周りに無数の槍が現れた。槍は全方位に切っ先が向いていた。

「うおー! すごい、なにそれ!」

 フリーダが簡単の声をあげる。

「わたしは『武器支配(槍)』のスキルを持っている。槍を生み出し、自在に操る。まあ魔力の限り、だがな」

「おいおい、おれたちに当てないでくれよ」

「クラウス、わたしを誰だと思ってる。そんなヘマをするか」


 エレーナの周りに浮いてた槍がフワッと動いて、ドラゴンを追尾し始める。ドラゴンと、それに騎乗する魔族に次々と槍が襲いかかった。

 何本もの槍に貫かれた魔族たちは次々と落ちていった。


「さて、あとはあの怪物だけだな」

「あんたも十分怪物だよ」

 クラウスが呆れ半分、敬い半分といった表情でツッコんだ。


 ヒュドラを見ると、悠真が先ほど潰した頭が再生し始めていた。

「嘘だろ!?」

「ユーマ、あいつは頭をいくら潰しても再生するみたいなんだ。やるなら胴体だ」

「なるほどな。ではあの胴体を貫けばいいというわけだ」

 エレーナは自身の上空に長さ五メートルほどの槍を出現させた。エレーナが腕を振り下ろすと、その槍が高速でヒュドラ目掛けて飛んでいく。


 ヒュドラの頭の一つが口をパカっと開いた。

「——! またあれが来ます! みなさん避けて!」

 ヒュドラが口から光線を吐くと、槍は一瞬のうちに消え去ってしまった。

 後ろで轟音が響く。今度は地面がえぐられていた。

「さっきの光はあれだったのか……」

 ユーマは後ろのえぐられた地面を見て寒気に襲われる。あんなの直撃したら全員消し炭になってしまう。


「三人とも、まだ魔力は残ってるか?」

「わたしは少しだけなら」

「俺はこれ以上魔法を使うと気絶しちまうだろうな」

「わたしは大丈夫ー」

「じゃあアリスとクラウスはこれを飲んでくれ」

 悠真は収納(ストレージ)からエーテルを取り出し二人に渡す。

 たぶん、勇者の持ち物なんだろうけど有り難く使わせてもらうことにしよう。


「おれがいく、みんなは援護してくれ」

 悠真は『光の剣クラウ・ソラス』を鞘から抜いて右手に持ち、左手には『魔銃バルバトス』を構えた。


 魔銃を一発撃って牽制する。当たれば一撃で頭を吹き飛ばせる威力だ。そして飛行板から思いっきりジャンプしてヒュドラに近付く。

 クラウ・ソラスで一つ目の頭を切り落とした。その隙にフリーダは別の頭に飛び乗り雷の爪で動きを止めている。

 エレーナの無数の槍と同時にアリスの炎がヒュドラの背中に降り注ぐ。更にクラウスの鎌鼬のような風の刃が襲いかかった。


 悠真は次の頭に狙いを定めてジャンプし、頭を切り落とす。その瞬間別の頭が悠真を狙い口をパカっと開けた。

「ユーマ、危ないっ!」

 アリスがそれに気づき叫んだが、光線は悠真を目掛けて放たれた。

「ユーマ!!」

 だが、光はユーマの目の前でフッと消滅した。

「「——!?」」

 その場にいた全員が目を疑っていた。

「おれには収納(ストレージ)があるんだよね〜」

 悠真はとっさに光線を収納(ストレージ)に格納したのだ。

 ——魔法も格納できたから大丈夫だとは思ってたけど、ビビった〜。

 内心はすごく焦っていた。とっさに収納(ストレージ)を発動できてよかったー!


 悠真は距離を取るため、自分が乗っていた飛行板までジャンプして着地する。

「おいユーマ、どうやったんだよ!」

「ユーマすごいー!」

「お前、まだ何か隠し持ってたな」

 皆、目の前で光線を消し去った悠真を見て興奮していた。

「ユーマ、あまり無茶しないでください!」

 一人を除いては。アリスは悠真がもう少しであの光に飲まれていたかと思うと、気が気じゃなかった。

「わるいわるい」


 ——でも、いいこと思いついちゃった。


「みんな、ちょっと離れてて」

「——?」

 みんなが離れたのを確認し、悠真はヒュドラに向かって構える。


収納(ストレージ)からさっきの光線を『取り出す』!」

 すると、悠真からヒュドラが放っていたのと同じ規模の光線が放たれ、ヒュドラに直撃する。

 轟音とともにヒュドラの残りの首全てが悲鳴をあげた。


「どうだっ!」


 ヒュドラはまだ倒れていなかったが、見るからに致命傷だった。

 ふふ、自分の攻撃は効くだろう。

 ——しかし、かなり魔力を消費してしまったな。あれだけのエネルギーを出し入れしたんだもんな。


 ボロボロのヒュドラがそれでもなお咆哮を上げ、戦う意思を示す。

 しかし切り落とした頭もなかなか再生しないし、これはすでに虫の息だろう。


「あいつ、とんでもないやつだな……」

 エレーナが悠真を指してそう言った。

「おかしいでしょ? あいつが一番の化け物だったな」

 クラウスが呆れて続く。

「さっすがユーマだなー!」

「ユーマはなんというか、規格外ですよね……」


 悠真はエーテルを飲みながら魔銃を構える。

「とどめ!」

 ヒュドラに向かって魔銃から光属性の攻撃が放たれ、ヒュドラの胴体に穴を開けた。ずずーん! と地鳴りを上げ、ヒュドラが地面に倒れこみ、やがて塵になっていく。


 周りの兵士から歓喜の声が上がった。

 あのとんでもないバケモノに勝利したのだ。

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