合流
フリーダは空中に飛ぶドラゴンの背中を次々と踏み台にして前線に向かっていた。
ついでに騎乗している魔族を下に落としていく。そうすれば、下にいる迎撃隊が対処してくれるだろう。
フリーダはそう思っていた。
「あ、いた——」
フリーダの視界がアリスとクラウスを捉える。
視界に捉えた二人はヒュドラを目前に茫然としていた。魔族が今にもアリスを襲おうとしている。
「なにボーッとしてるの!? 危ない!」
フリーダがドラゴンの背中を思い切り蹴り、大きくジャンプして、紙一重でアリスを助ける。
「大丈夫!?」
「あ、フリーダ……」
アリスの顔にいつもの力がなかった。
「フリーダ助かったぜ。でも、きついぜこれは……」
クラウスがヒュドラを見る。つられてフリーダも目をやると——遠くから見てわかってはいたけど、大きい!
その迫力に圧倒されそうになる。
「……どうやったらあいつ倒せるかな」
フリーダはヒュドラを射るよう見た。まるで獲物を狙う猫のような目だった。目の前でこの大きな怪物を見て尚、フリーダは真剣に倒す手段を考えていた。
「頭を破壊してもすぐに再生しやがった。狙うなら胴体がいいかもな」
「しかし、あの大きな身体に攻撃が通るでしょうか?」
三人が会話してる間にも魔族たちは襲ってくる。
「くっ、その前に周りをうろちょろしてるこいつらをなんとかしないと落ち着いて相手できねえぞ」
「むぅー、キリがないね!」
「——二人とも! ヒュドラの様子が!」
アリスの声で二人がヒュドラの方を向く。
今までただ進行してくるだけのヒュドラだったが、様子がおかしい。九つある頭のうちの一つが口を大きく開けている。
口の中が光り始めている。
「——まずいぞ! 避けろーーっ!」
三人は散り散りになってヒュドラの正面から離れた。
その瞬間——光が放たれたと思うと遥か後方で轟音が唸った。
後ろを振り返ると、街を逸れて山に当たったようで、山が一つ消し飛んでいた。
その光は敵味方関係なく巻き込まれて、魔族たちも数体消し去ってしまっていた。
「おいおい……」
「こんのぉーー!」
クラウスが後ろの惨状を見たとき、フリーダは光線を吐いた頭に向かってジャンプし、頭に雷の爪を突き立て放電した。
だが、頭を思い切り振られて振り落とされてしまう。
「うニャーー!」
「フリーダ!」
落ちていくフリーダをアリスが慌てて助けにいった。
「うう……ありがとアリス」
「こんな怪物どうやって倒したら……」
突如、ヒュドラの頭の一つが消し飛んだ。
三人が振り返るとそこには銃を構えたユーマと、エレーナがいた。
「みんな、大丈夫かっ!」
「「ユーマ!」」
****
作戦本部にいるエレーナと悠真に、今にもドラゴンが近付きそうになっていた。作戦本部は街の外壁の上にあるので、ここを突破されるということは街に攻撃を許してしまうことになる。
ここは最終防衛ラインなのだ。
「ユーマ、下がっていろ」
「いや、おれも戦いますよ。遠距離武器もありますし」
悠真が懐から魔銃を取り出し、ドラゴンに向けて弾丸を放つ。ドラゴンは魔銃の一撃を浴びて地上に落ちていった。
「それは——! まさか『魔銃バルバトス』か!?」
「え、ええ……知ってるんですか?」
「そいつも生前、リザリオが所有していた武器だ」
まさか。ということはもしかして、最初から収納に入ってたものは全て……? いや、今は考えてる暇はないな。
「なんで前勇者が持ってたものがおれの元にあるのかわかりませんが、まずはこの戦いを乗り切りらないと」
「ああ、考えるのはその後だ」
壁に迫ってくるドラゴンを一通り倒して、マップを見る。
前線の部隊がほぼ壊滅していた。アリスとクラウスは——よかった、まだ無事だ。フリーダも前線に向かってるのか。
「前線がほぼ壊滅しています。おれも前線に行きます!」
「……わたしも行こう」
「エレーナさんも?」
「ユーマがほとんどドラゴンを落としてくれたおかげでここはなんとかなりそうだからな。わたしもかつて勇者と旅をした者だ。並みの兵士よりは強いぞ」
悠真とエレーナが飛行板に乗り前線に向かう。下手にマップが見れてる分もどかしい。速く、もっと速く。
「——エレーナさん! 避けて!」
「なにっ!?」
悠真とエレーナの横をとんでもないエネルギーを帯びた光が通過する。
振り返ると山が一つ消し飛んでいた。
「これは……想像以上の怪物のようだな」
「怪物すぎるでしょ……」
三人とも、無事でいてくれよ。
——見えた!
悠真の視界がヒュドラを捉えた——でかい!
フリーダが頭にしがみついているように見える。振り落とされたぞ、やばい!
悠真は魔銃を構える。
「挨拶がわりだっ!」
魔銃の攻撃でヒュドラの頭が弾けた。
これは——思ったよりいけそうだぞ!




