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さて、新大陸

「ふーっ。やっと着いた」

 ググーッと伸びをする悠真。久しぶりの地面だった。なんだかまだ揺れてるような感覚だ。なにせ丸四日、船上に居続けたのだから。

 他の三人も各々身体を動かしたり伸ばしたりしていた。


「で、ここはどこなの?」

「おいおいユーマ、どこに行くかわからず船に乗ってたのかよ」

 クラウスが呆れ顔になった。


「ここは北の大陸で一番西に位置する港町ラハルクだ」

「ふーん、なんだか今までの街よりなんていうか……都会だな」

「ああ、ヴォルツやウィベックなんかは、言っちゃ悪いが北の大陸に比べたら辺境の国なんだよ」

 なるほど。つまりは田舎だったわけか。


「北の大陸の方が魔法技術なんかも進んでいますしね」

「そうだねー。でもわたしはヴォルツ好きだよ!」


 魔法技術か。なんか便利な乗り物ないかなー。車とかあったら楽なんだけど。


「さて、それでどうするんだ? また聞き込みか?」

「そうだなー、とりあえずギルドだな」


 ギルドは大勢の人でごった返してた。

「すごい人だな」

「ギルドの活気がその街の活気を表してるというからなー。それでもこの街は大陸の中じゃまだまだ田舎の方なんだぜ」

 ヴォルツは相当田舎だったってことか。


「お、お前らさっき船から降りてきたやつらだな」

「田舎から凱旋かー? わざわざご苦労なこった」

 男たちがニヤニヤ笑いながらこっちを見てきた。どこのギルドにでもこんな連中はいるのか。


「ニャニャ! 失礼なやつらだな。ユーマの強さを知ったら泣いて逃げ出すに決まってるのに!」

「いいよフリーダ。ほっとこうぜ」

「あまり騒ぎを起こしてもよくないですし、ユーマのいう通り、相手にしなければなにもしてきませんよきっと」

 あんな連中をいちいち相手にしてるとキリがないからな。


 ギルドで聞き込みを開始する。「黒い鎧を来た男がどこに行ったか知らないか」と聞いて回るが、これだけの人だと案外目立たないのか、覚えてるやつがいなかった。


 聞き込みをしている悠真たちの元にさっきの男たちがやってきた。


「黒い鎧の男のことなら知ってるぜぇー」


「ほんとですか? 教えていただけたらお礼はしますので、教えてもらえませんか」

「あんたがお礼してくれるのかぁ? だった教えてやるよ」

 男がアリスの腰に手を回してきた。


「ちょっと、やめてください!」

「おーい? 黒い鎧の男のことを知りたいんだろ?」

 アリスが嫌がっても男は強引に自分の体に引き寄せた。


「おい。離れろ」

 悠真が男の手を掴んで握りしめる。

「ぐああ!」

 男は腕の痛みに思わずアリスを離した。


「てめえっ! 覚悟はできてんだろうな!」

 男が悠真に向き直る。


「あーあ、大変なやつに喧嘩売っちゃったな。あいつ」

「そだねー」

 クラウスとフリーダがニヤニヤしながら騒ぎを傍観している。

 あいつらもちょっとは動けよな。


 男が叫びながら悠真に殴りかかってきた。

 さて、うまく手加減できるかな。


 悠真は男のパンチを避けてカウンター気味に顔面にパンチを叩き込んだ。

 男は声にもならない声をあげて、テーブルや椅子をなぎ倒しながら五メートル近く吹っ飛んでいった。


 うん、うまく手加減できたな。


「おい、なんの騒ぎだ」


 野次馬たちの後ろの方からごっついおっさんが出てきた。

「ギルド長!」


 なんだか偉い人みたいだな。大丈夫かなおれ。捕まえられたりしないかな。


「騒動の一部始終は聞いたよ。まあ相手に非があるようだが、あまりやりすぎるなよ」

 あれでやりすぎになってしまうのか。これ以上の手加減は難しいぞ。

「すみません」

 とりあえず素直に謝っておく。


「どうやらお前ら、黒い鎧の男について聞き回ってるようだな。やつを追ってどうするんだ?」

「あの男のことを知ってるんですか?」

「知ってるもなにも……なんだお嬢ちゃん、やつと何かあったのか?」

「まずこっちの質問が先だぜ。黒い鎧の男について知ってることがあったら聞かせてくれよ」

 クラウスは強気に交渉し始めた。おれだったらギルド長のおっさんの迫力に負けてとてもじゃないけど対等に話を持っていく自信はない。


「いいだろう。まず、あいつは勇者だ」

「「それは知ってる」」四人の声がハモった。

「お、おお……そうか。じゃああいつが勇者になったのは最近ってのは、知ってたか?」

「……どういうことです?」

 悠真は自分だけがそれを知らなかったのではないかと、三人の顔を見るが、三人とも怪訝な表情をしていた。誰も知らなかったってことか。


「もともとの勇者が神様に選ばれたのは二年ほど前なんだが、それから一年後、その勇者が死んじまったんだよ。それで次の勇者にどうやらあいつが選ばれたってわけだ」

「えー、でも勇者が簡単に死ぬっておかしくない?」

 フリーダのいう通りだ。そんな簡単に死ぬようなやつを神が選ぶとは。それとも魔族や魔神ってやつがよっぽど強かったのか?


「なぜ元の勇者様は死んでしまったのですか……?」

「それはわからねえ。ただ、前勇者の仲間の一人があの黒い鎧の男、レイだよ」

 レイという名前なのか。なんだかようやく勇者の情報を捕まえた気がするな。


「やつが元は勇者の仲間の一人だってのか……。あんなやつが」

 クラウスの言うことももっともだ。なぜあんなやつが前勇者の仲間で、現勇者に選ばれたのか……。神様の考えることはようわからんな。


「やつのことをもっと知りたかったら、ここから北の軍国、ドミクシンに行ってみるといい。そこに前勇者パーティにいたエレーナという女性がいるはずだ」


「ドミクシンのエレーナさんですね。ありがとうございます!」

「ああ、そうだ。ドミクシンは雪国だ。しっかり備えて行った方がいいぞ」

 まじかよ。雪の中歩くのは流石に辛いのでは。

「なんか、ドミクシンに行くための便利な乗り物とかありませんかね?」

「ああ、魔導列車が通ってるから駅から乗っていくといい」

「おお! そんなものが!」

 どうやら雪の中を歩いていくなんて苦行をせずに済みそうだ。


「では魔導列車が出てる駅まで行きましょう!」

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