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神のお告げ

「じゃあおれも入るよ」

 悠真は会話を区切って祈りの部屋に入ることにした。部屋に入ると以前と同じように光の球体が浮かんでいた。こいつがアーティファクトなのか?

 前回と同じ要領で台座にプレートを置き、目を瞑る。


(人の子よ、そなたがこの世界に生きている証をここに刻もう)

 なるほど。前回と全く同じセリフだ。定型文ってことだな。

(そなたの名前はユーマだ)

 名前はどうやってわかるんだろう。そんなこと言ったらステータスもか。古代の技術ってやつなのか。その後、前回と同じようにステータスが読み上げられた。


 名前 :ユーマ

 種族 :ヒューマン

 歳  :26

 レベル:42

 属性 :雷、光

 魔力量:620

 スキル:身体能力常時10倍、収納(ストレージ)取り寄せ(アポート)、魔銃術、光剣術、???


 ステータスプレートに刻まれたスキル欄を見ると、確かに『魔銃術』がスキルに加わってる。さらに『光剣術』というスキルまであるな。特に何かあったわけじゃないと思うけど。

 聞こえてきた説明によると『魔銃術』は魔銃を扱えるスキルとのこと。ヴォルツ国王が言ってた通りだな。『光剣術』というのは光の剣を扱えるスキルとのことだった。光の剣っていうと、『光の剣クラウ・ソラス』

 のことか?つまりあれもスキルがないと扱えない武器だったってことだ。あれもアーティファクトなのか……?


「そうだ!」

 悠真は慌てて頭の中で念じた。

(この前反応してくれたよな?元の世界に帰るにはある道具が必要だと聞いたけど、何か知らないか!?)

 悠真の頭の中はシーンと静まり返っていた。やっぱりこれはただのアーティファクトなのか。定型文を返すだけのAIみたいなものなのか。

(その道具は今やこの世界には半身しかない)

(!?)

 悠真は部屋の中をキョロキョロと見回したが誰もいなかった。やっぱりただのアーティファクトじゃない。悠真だけに答えるのか、他の人はアーティファクトに問いかけるなんてことはしないから気づいてなかったのか、いずれにしろやりとりが成立する「何か」がそこにいた。前回は気づかなかったが、確かにステータスをただ読み上げるだけの時と、声が違う気がする。男とも女とも取れない不思議な声だった。

(半身しかないって、それじゃおれは帰れないってこと!?)

(前回も言ったが、まずはこの世界を知るのだ。そしてユーマ、君自身が感じた通りに行動して欲しい。せっかく呼んだのに、そう急いで帰らなくてもいいじゃないか)

(呼んだって、あんたがおれを呼んだのか?あんたは一体何者なんだよ?)

(この世界の人の神だよ。『人神(ひとがみ)』と呼ばれている。とにかく、まずはこの世界に何が起きているか自分自身の目で確かめて欲しい)

人神(ひとがみ)……?いや、おれはさっさと帰りたいんだって!)

 もう声は返って来なかった。なんとなく気配が消えた感じがする。この世界に何が起きてるかって言われても……。


 それ以上はいくら頭の中で念じても無駄だったので、悠真は部屋を出た。

「なんか長かったな」

 クラウスが不思議そうな顔をしていた。アリスも横で同様の表情をしていた。

「ああ、なんでもないよ」

「そうか?ステータスはどうだったよ」

「ああ、スキルが増えてた。ヴォルツの王様のいうとおり『魔銃術』を習得していたよ」

「前回はなかったんですよね?いつ習得したんでしょう?」

 アリスが首を傾げた。

「わからない……。銃を持った時から使えてたから、少なくともそれ以前ってことにはなると思うけど」

「まあわからないことを考えても仕方ねえよ。レベルはどうだった?」

 クラウスがあっけらかんと言った。

「ああ、42だったな」

「42!?」

 クラウスとアリスが同時に声を上げた。

「え、どうしたの?」

「42なんて、生涯かけて達成するレベルですよ!」

「ここらで活動している冒険者が引退する頃にようやく辿り着くレベルだ」

「おお、まじか。魔族を2体倒したからかなぁ」

「きっとそうですね……。やっぱりユーマはすごいです」


「それより、二人とも人神って知ってる?」

「知ってるも何も、この教会も人神様を信仰しているんですよ?祈りの部屋も人神様に祈りを捧げるための部屋です」

 アリスが悠真を心配そうな顔で見る。隣にいたシスターが「この人頭でも打ったの?」って目で見てきてる。そうか、この世界ではきっと常識中の常識なんだろうな。日本に住んでて総理大臣の名前も知らないアホの子を見るような目だ。

「あとで詳しく聞かせて」

 悠真はシスターの訝しむ目を見ながらアリスに耳打ちした。アリスはコクリと頷いた。


「この世界の人たちはみんな人神を信仰しているの?」

 悠真たちは教会を出て通りを歩いていた。

「ええ、獣人なども含め人族の神様が人神様です。皆一様に人神様を信仰しています」

「他にも、魔族の神の魔神や、竜神とか、それぞれの種族に信仰する神様がいるって話だ」

 クラウスがアリスに続けて言った。

「言い伝えではアーティファクトやダンジョンは人神様が作られたと言われています」

「ほんとのところはわかんねえけどなー」

 クラウスはどうやらそこまで信心深くはないようだ。

「人神様の恩寵受けたものが勇者になると言われています。勇者様は魔族の神である魔神を倒すために人神様から使命を託された人間なのです」

 そういやウィベック国王もそんなこと言ってったっけ。悠真の中の勇者のイメージは無茶苦茶な悪人だった。あんな行動するやつが人神に認められるのか?なんだか頭が混乱してきた。

 クラウスは苦虫をかみつぶしたような顔をしている。あの勇者のことを思い出してるに違いない。

「本来アーティファクトなんかも勇者様を助けるために作られたものと言われています」

(なんでそんなものがおれの収納(ストレージ)にあるんだ)


「だいたいわかったよ、ありがとう」

 アリスは、「いつでも聞いてください!」と勢いづいていた。それにしてもそんな人神がなんでおれを連れてくるんだろう。人神自体の言い伝えはあるのに、別の世界から渡ってきたという情報は極端に少ない。人神が別の世界から人を連れてくるのはこれが初めてってことなのか?

 悠真の頭の中にぐるぐると考えが巡っていた。

「ユーマ?大丈夫ですか?」

 悠真の様子にアリスが横から心配そうに顔を覗き込んだ。

「ああ、大丈夫大丈夫」

 仕方ない、とりあえず人神のいう通りまずはこの世界のことを知ろう。あの言いようからしてこの世界には「何か」が起こってるらしいからそれを知るところからだな。

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