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神様の影

「これからどうするんだ?」

 悠真たちは街の宿で食事を取っていた。ユーマの問いにクラウスが答える。

「うーん、ギルドで勇者について聞いてみたんだが、どうやらあのあとはこの街に立ち寄ってないみたいなんだよな」

「一体どこに向かったんでしょう」

 アリスが頬杖をついて小首を傾げる。

「ここら辺で他に大きい街はないのか?」

 悠真の質問に再びクラウスが答えた。

「ここからずっと東に行くと、ベーゼルという街があるな。まだヴォルツの領土内だ」

「あ、聞いたことがあります。確かその街には獣人も住んでいるのだとか」

 アリスが手を合わせて嬉しそうに言った。

「獣人か、本格的にファンタジーだな……」

 悠真がボソッと呟いた。

「じゃあ、とりあえずそこを目指したらどうかな?」

「ああ、そうだな!」

「ええ!」

 悠真の提案にクラウスとアリスは頷いた。


「そういえば、ウィベック国王にもらった魔法書、どうする?」

 悠真がもらった本を机に出した。かなりの年代物に見えるが、不思議と装丁など見た目はしっかりしていて、傷んだ様子がない。

「おれはそこまで魔力量が多くないからな、魔法を覚えても使いこなせるかわからんからパスだ」

 クラウスが興味なさそうに言った。さらにクラウスはニヤリと笑って続ける。

「売っちゃってもいいんだぜ?」

「ダメですよ、魔法書で習得できる魔法は普通では使えない固有魔法ですよ。きっと旅の役に立ちますよ!」

 慌ててアリスがクラウスを止めた。そんなに貴重なものなのか。

「じゃあアリスが読むか?」

 悠真はアリスの方に本を差し出す。

「いえ、これは国を救ってくれたユーマたちへのお礼です。ユーマが読んでください」

「そう?じゃあ……」

 悠真がパラパラと本をめくり始める。すると次第に本から光が放たれ始めた。悠真の頭の中に文字が流れ込み出した。

「うおっ」

 悠真が思わず声をあげた。やがてその魔法の名前が浮かんで来た。


転送(テレポーテーション)


 光はゆっくりと静まり、本から光が失われた。

「どうですか?ユーマ」

「どんな感じだ?」

 アリスとクラウスが悠真を見つめていた。どうやら本の光は悠真にしか見えてなかったようだ。

「ああ、『転送(テレポーテーション)』 だそうだ」

「まじかよ!」

「すごいです!」

 アリスとクラウスがすごく驚いてる。クラウスなんか椅子から転げ落ちそうになっていた。確か魔族も使っていたよな。

「すごいのか?」

「先ほども説明しましたが、魔法書で覚えられる魔法は固有魔法なので、そもそも珍しい魔法なのですが、『転送(テレポーテーション)』 は知られてる中でもかなり便利な魔法ですよ。固有魔法と言っても、珍しいだけであまり使い道がない魔法などもありますから」

 アリスが興奮気味に説明する。

「おお、じゃあ当たりの魔法書だったんだな」

「そうですね、魔法書は読むまでどんな魔法を習得できるかわかりませんから」


 頭に流れ込んできたイメージによると、どうやら視界に入っている範囲か、一度でも通った空間に瞬時に移動できるものらしい。つまり、今この場所にはどこかから転送できるだろうが、この場所の2メートル上には転送できない。おれが一度でもジャンプして2メートル上の空間に到達すれば問題ないだろうけど。

 また、移動距離によって消費する魔力量が異なるらしい。距離が長いほど魔力消費が激しいんだろうな。おれの魔力でどこまで移動できるんだろう。


 悠真はアリスたちに『転送(テレポーテーション)』の説明をした。

「なるほど、『転送(テレポーテーション)』の万能ではないのですね」

「このまま一気にベーゼルまで行けるかと期待しちゃったよ」

 クラウスは露骨にガッカリしてる。勝手に期待しといてそりゃないんじゃないの。


「さーて、そろそろ部屋に帰って寝ますか。明日は祈りの部屋に行ってみようぜ。おれもレベル上がってるだろうし、更新しておきたいんだ」

 クラウスが椅子から立ち上がるとそう言った。

「そうですね。ユーマも更新しておくといいですよ。魔族を倒したんだからきっとすごくレベルアップしてるはずです」

(そういえば、『魔銃術』とかいうスキルも本当にあるのか見ておきたいな)

「そうだな、行ってみよう」


 翌日、悠真たちは教会にいた。

「あ!あなたは!」

 教会から出てきたシスターが悠真の顔を指した。

「ああ、この間はどうも。覚えてくれてたんですね」

 悠真はペコリと頭を下げた。

「忘れられませんよ。あんなの、初めてだったんですから」

 シスターが少し戸惑いながらそう言うと、アリスがギロリと悠真の方を見た。

「ユーマ?一体このシスターと何があったの?」

「やるなぁユーマ!」

 クラウスはニヤニヤと笑っている。悠真は慌てて顔の前で両手を振った。

「いやいや!ちょっとシスター!なんでそんな含みのある言い方するんですか!?」

「あ、ごめんなさい。ステータスプレートについては守秘義務があるので、つい遠回しな言い方になっちゃって」

 このシスター、なかなか天然だぞ。


(ユーマのスキルか、確かに気になるな。こいつの強さは異常だからな)

 クラウスが一瞬真面目な顔をしたが、誰も気づくことはなかった。

(ユーマさんのスキル、数多くのスキルを見てきたシスターも驚くほどなのね)

 アリスもクラウスと同じように、シリアスな表情になった。


「それで、祈りの部屋を使わせてもらいたいんだけど」

 悠真がシスターに言うと、前回と同じように祈りの部屋の前まで案内してくれた。祈りの部屋には先にクラウスが入り、次にアリスが入った。クラウスもアリスもレベルが上がったこと以外は特に変わりないようだった。

「そういえば、祈りの部屋で聞こえてる声、あれが神様なんだよな?」

 悠真が聞くと、アリスとクラウスが顔を見合わせた。

「そうですね、正確には神様を模した魔導器です。あれも古代のアーティファクトなんですよ」

 アリスが答える。

「え、そうなのか?」

「ああ、仕組みはわからないが、部屋に入ってる人間のステータスを解析して読み上げているんだ。それをプレートに刻んでるってわけ」

 今度はクラウスが答えた。

「じゃあ会話とかは?」

「会話はできないです。一方的に読み上げるだけですね」

「……?」

 悠真は、確か以前に元の世界に帰る方法を質問した時に会話が成立していたはずだと思った。しかし、変なやつだと思われるのも嫌だったので黙っておくことにした。

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