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再びヴォルツ

「しかし、この二国間の移動はめんどくさいんだなー」

 悠真たちはウィベックから再びヴォルツに向かうために、馬車に乗っていた。国王が悠真たちのために用意してくれていたのだ。

「ウィベックとヴォルツの間には魔物の森がありますからね……。馬車で行くにはどうしても迂回して行く必要があるのです」

 アリスが申し訳なさそうに言った。クラウスはすっかり眠りに入ってる。

「お、見えてきた」

 城塞都市ヴァレタが見えてきた。こうやってあの都市を見るのはもう二度目になる。

「もう着いたのか?」

 クラウスがいつの間にか起きていた。まだ眠いのか、目をこすっていた。


 馬車から降りると悠真は思い切り伸びをした。狭い馬車での移動は慣れないものだ。まあ一日中馬に乗って移動するよりはマシだけど。

「ヴォルツ国王が心配してるだろう、早めに顔を見せて安心させてやれよ」

 クラウスがアリスを見て言った。

「そうですね」

 アリスが答えたので、悠真はちょっと宿で休みたいなと思っていたが、そのまま城に向かうことになった。


「おお、無事だったか!」

 ヴォルツ国王はアリスの顔を見ると顔を綻ばせてそう言った。魔族が襲ってきてから数日と経っていないので城の中はまだ荒れていた。

「ご心配、おかけしました。おかげさまで国が落ちずに済みました。お父様、お母様も無事です」

 アリスは事の顛末をヴォルツ国王に話した。アリスが話している間、国王は神妙な顔をして聞いていた。周りの兵士たちは魔族に国が乗っ取られかけたということを聞いてひどく動揺していた。


「そうか……。よく無事で。クラウスもよくやってくれた。後ほど褒美を持って来させよう」

 全てを聞いた王様が口を開いた。

「して、そなたはここで魔族と戦ってくれた青年ではないか?」

 国王が悠真の方を見た。

「ああ、はい。その節はどうも」

 悠真は軽く頭を下げた。

「やはりか。あの時は本当に助かった。礼を言う」

「いえ、そんな……」

(この人も結局大した情報持ってなかったんだよな、あの時の苦労は一体……)


「ユーマとか言ったかの?」

 国王の問いに、はあ、と悠真は気のない返事をした。

「お主、一体何者だ?魔族を一人で倒すなんて聞いたことがない。それに魔銃を扱うとは……」

「魔銃を扱うって、誰でも使えるでしょう?」

 悠真は首を傾げて言った。

「魔銃は、『魔銃術』というスキルがないと扱うことができん。そのスキルがないといくら魔力を込めても魔銃は反応せん」

「え?そんなスキルなかったと思うんですけど……」

 悠真が頭を自分の腰に携えた魔銃を見ながら答えた。『魔銃バルバトス』と『光の剣クラウ・ソラス』は収納(ストレージ)に入れるために膨大な魔力を必要とするので、悠真は収納(ストレージ)に入れずに持ち歩くことにしていたのだ。

「ふむ、もう一度祈りの部屋で確認した方がいいかもしれんな」

 王様は立派なヒゲを撫でながらそう言った。


「王様はなんでそんなに魔銃に詳しいんですか?」

 悠真が王様に問いかける。

「わたしも古い本で読んだことがあるだけだ。魔銃は古代のアーティファクトで、いくつかあるダンジョンの中に眠っていると。ダンジョンを攻略し、認められたものだけが魔銃を扱えるスキルを得られるという」

 それを聞いたクラウスがチラリと悠真の方を見る。

(アーティファクト……。ユーマは一体……?)

 クラウスもアーティファクトの存在は知っていたが、見たのは初めてだった。

 王様が言葉を切って続けた。

「ユーマよ、その銃をどこで手に入れたのだ?」

 王様は責めるような口調ではなく、純粋に疑問に思ってるようだったが、悠真はなんとなく自分が責められているように感じてしまった。

「いや、自分でもちょっとよくわかりません……」

 悠真はつい下を向いてしまい、言葉の最後の方はしょぼしょぼと小さくなってしまった。

「おじさま、ユーマはわたしたちを助けてくださった。それで良いではありませんか」

 見かねてアリスが助け舟を出した。

「ああ、すまなかった。責めるつもりはなかったのだ。そうだ、ユーマとクラウスには褒美を取らせよう」

 王様がそう言うと、兵士たちが大きな袋を持ってきた。そこには大量の金貨が入っていた。

「クラウスは金で良いのだったな」

「はい、ありがとうございます」

 クラウスは袋のズシッとした重さに思わず口元が緩んだ。

「ユーマは、何が望みかな?」

 悠真は、少し考えたが、帰りたい以外に望みが思い浮かばなかった。

「世界地図……とか」

 とっさに悠真はそう言った。悠真は、この世界を知らなすぎたので、まずこの世界を知りたいと思った。今まではなんだかんだ言ってすぐ帰れるだろうとタカを括っていたため、この世界について知ろうともしなかったが、なんだか勇者を追って旅することになってしまったので、長居することになりそうだなと思っていた。


「世界地図か」

 王様が困ったような顔をした。

「このヴォルツは世界でも辺境の地でな。世界地図が出回ってないのだ。この辺りの地図で良ければあるのだが……」

 そんなものなのか、と悠真は思った。そういえば日本地図は伊能忠敬が歩いて測量して作ったんだっけ。この世界には航空写真なんてないだろうから、地道にこの世界を回って測量していくしかないってことか。だとすると、その地図も正確かどうかはわからないな。

「では、この辺りの地図を頂けますか?」

「ああ、もちろん良いが、そんなものでいいのか?」

 悠真はコクリと頷いた。

「わかった。すぐに手配しよう。今日は疲れただろう、城の中はまだゴタゴタしてるので街の宿を取ってある。ゆっくり休むといい」


 悠真たちは王様にお礼を言って、そのまま宿に向かった。

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