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怪奇小説  野井戸 殺人事件  作者: 御影神吾
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八 裏付け捜査 その2

七 裏付け捜査(その二)


『冨永正治』の調書は、地元小野署、竹内、丸山警部が担当、以下の報告を記載します。


本件は、昭和二十一年九月五日、被害者、冨永正治、当時在席していた神戸大学校より、長期無断欠席の連絡で判明、学校から連絡を受けた両親は驚き、縁戚及び友人達からの聞き取り調査をおこなうも手掛かりがなく後日、身内友人達の協力を得て、下宿、友人宅、本人の立ち寄り先と思われる場所を探し求めたが何処からも情報は得られず、同年九月十二日、小野署に父親が、捜査願いを提出、小野署は直ちに神戸、明石、近隣警察に捜索を依頼する。


同年十月十五日、加古川市別府町の海岸で砂に埋もれていた衣服類を漁師が発見、地元派出所に届け被害者の親元に連絡、後日両親が息子の被服と確認したので、この状況から判断した警察は遊泳中の事故死と断定、後日、地元の猟師達が遺体の収容に努めたが、母親の嘆き悲しみは言葉で言い尽くせぬ状態…捜索船より波間に向かって「正治!正治!」と大きな声で泣き叫び、半狂乱の状態が続き、捜索に加わった漁師達も皆、貰い泣きしたそうです。


このような雰囲気でしたので、捜索日程も二日程延ばし…協力したが…遺体の回収は出来ませんでした。後日何処かの海岸に打ち寄せられる事を期待したが、その連絡も何処からも無く、月日も流れ、昭和二十六年十月八日、両親の手続きで、地元村役場に死亡届が出され、受理されていた。


註…両親の話を要約すれば、


『富永正治』は、昭和二十一年八月二十五日、夏休み終了前、神戸大学水泳部合宿の為、午後二時過ぎ、家を出て荒木巌の牛舎に行き、渋谷熊吉と合う。


同日、荒木久子宅を伺い、午後三時半過ぎ久子と別れた後、渋谷熊吉宅に立ち寄り手荷物を持った正治が『青野ヶ原』に向かうのを確認、午後四時五十分前後、国鉄青野ヶ原駅前に屯する若者達の中に、富永正治らしき人物の存在を駅員が確認しており、それ以後の足取りが消えている事が判明していた。


特記事項として、富永正治に付いては、小野署に任意同行を求め『川田、宮本』両刑事が、昭和二十一年八月十八日、午後二時三十分より三時二十分と、同月二十二日、午前十時より十一時迄の、計二回、荒木巌氏失踪前の行動を調査上、荒木巌が博労慰労会に行く前に煙草乾燥場に立ち寄った事実を知り、ここで荒木巌氏と渋谷熊吉がどの様な話をしていたのか?話の内容と、博労慰労会の日時行動予定等を、その場に居た富永正治から聞き取り、後日その話の内容を種々検討した結果、荒木巌失踪に関する重大な情報が含んでいる事実を知り、近々再調査を予定していたのに…まさか参考人の富永本人が海で行方不明になるとは?当方も重要な情報源を失うと共に今後、二人の捜索活動を余儀なくされ、人員配置上、困惑したと記されていた。


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