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怪奇小説  野井戸 殺人事件  作者: 御影神吾
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六 遺体回収 その2

「野村刑事!どうだ!『弾帯』はあったか?!」


と外に声を掛け様子を伺っていた。遺留品台帳を見ながら野村刑事が


「ハイ捜査課長有りました!是でしょう?」と半分ちぎれかかった皮製の帯のような物を持って来た。


「鬼頭さん、これが『弾帯』と思うが是がどうかしたのか?」


「ハイ、右側の実弾ケースに『印鑑』があるはず…エート象牙で『佐川』と彫られていると聞き覚えています。調べて下さい。」


私が答えると警官が腐食しているホックを外し中から泥で汚れた『印鑑』を取り出し「確かにこの中に有りました!」


と皆に聞えるように叫び係官に渡していた。その『印鑑』は正しく佐川と刻印され長い間、土中に埋もれていても手を加えると今も使用しているように「象牙』独特の光を保っていた。


「鬼頭さん、これ以外に証拠の品は?」


「バンドの『バックル』は有りましたか?!富永正治との会話で、模様は聞いていませんが、神戸大学の『校章』と覚えています。」


野村刑事!『バックル』はあったか?!」


「課長、二個回収しています!一個は軍隊の物ですから、大学関係のは、これでしょう。と云って『神大』をもじった白銅製の『バックル』を捜査課長に手渡した。


「ホウこれか?かなり錆びているが『神大』と読めるな…」


特記事項として『髑髏』及び遺骨の表面に、多数の切り傷又は刺し傷らしき痕があり、鑑識官が入念に調べたが、何故こんな傷が付いているのか?首を傾げるばかり…唯云える事は、殺害の時、鋭利な刃物で数回も突き刺して出来た傷と思われ、其処迄、犯人は被害者を憎んでいたのか?又精神異常者か?この件に付き疑問の残る調査となったようです。ドロを取り出し野積みにされた井戸周辺ではでは、ヘドロ独特の悪臭が漂い、井戸底ではマスクをした警官が巻尺を持って、池の内部を計測していた。


暫くして捜査課長から

「今当方の関係者と協議した結果、君の調書は全て非科学的で色々疑問点も多いが、一昨日から明け方迄の短時間に、井戸の中での事前工作をする事は不可能、特に髑髏等は蓄積した沈殿物の下にあり、池底に溜まっていた、木の葉等の沈殿物の状況を詳しく調べた結果、今回が初めての発掘だと確信した。


「処で私は姫路署に籍を置く『水野』です。」と云って名乗り名刺を渡されると、是を見た他の署員の方々も待っていたかのように、


「同じく鑑識官の『柳田』です。」


「加古川警察署、署長の『池崎』です。」


「小野警察署、署長の『武田』です。」


と次々名刺を渡され…警察官の態度が今迄と違い、これで私も普通の人間だと証明された事に安堵したものです。


「鬼頭さん、貴方は被害者と、犯人の氏名を知っていると担当警官から、聞いていますが忘れぬうち其処のノートに記入して下さい?」と言って机を促した。


「分かりました。」私は昨日のメモを取り出すと、

「先ず住所氏名を書いて下さい、後は貴方の記憶どおりで結構です。」と云われ。


私は、井戸の中で聞き覚えた事柄を思い出し、事細かく記帳を済せ警官に渡すとメモを見た警官は

「これで全部ですか?良く覚えていますね?」その調書に目を通し捜査課長に渡していた。


捜査課長はそれを読み、回収した遺体、遺品を鑑別し、各署長と協議を行なった後、

「皆此処に集まって呉れ!本事件の今後の捜査活動に付き、打ち合わせと注意事項を伝える!本事件の捜査本部は、姫路署内に置く、本日此処で遺体を収容したが、特に『髑髏』との会話に付いては後日公表するので絶対他言せぬように、今マスコミに知れると非科捜査云々で突付かれ、その対応次第では、姫路署の威信に関し、多大なる悪影響の恐れを含んでいる事を考え、各自、肝に命じ、自覚ある捜査に徹して頂きたい。今後の捜査に当たり、容疑者と被害関係者等の氏名は、報導機関等に知られぬよう留意して、捜査活動を行って下さい。今後の対応は、姫路署内に専用窓口を設置するので、宜しくお願いします。

連絡事項並びに注意事項は以上です。何か質問はないか!」


「犯人に気付かれた場合、どの様に対処すれば良いですか?」


「常に監視を付け本人の把握及び『別件逮捕』の準備をして置く事…それと他府県に犯人が住んでいる場合、姫路署員を派遣して地元の警察には後日依頼するので、その積りで行動せよ!」


「報道関係に知れた場合の、対処方法は?」


「井戸から遺体が出てきた事実は伝えてよし、これを隠すと返って、批判を呼ぶので…但し『髑髏』との会話、証拠品の『印鑑、バックル等』の出た事は伏せて呉れ、特に被害者及び、容疑者の氏名と事件の概要に付いては、現在捜査中で判明していないと云って断る事、宜しいですね。」


それでは遺体等は丁重に扱い『髑髏』は、氏名が分かる表示をして、遺留品共々姫路署に運ぶ準備をして呉れ…鑑識官!他に調査したい事がありますか?」


「殆ど完了しましたが、井戸の周辺を調べたく思います。是以外に遺留品の有無確認の為?」


「分かつた!手の空た署員を使って作業に掛って呉れ!以上解散!」


多数の警官が、綺麗に草を刈り取った井戸の周囲に散り、文字どおり草の根を分け虱つぶしに物探しをしたが、回収物品も無く、井戸の周りは安全上、二重三重のバリケートを張り、全ての作業が終った。


現場を引き上げる前に水野捜査課長は、部下を連れ連隊長の幕舎に伺い会話をされた後私の処に来て、

「鬼頭さん!今日はお疲れ様でした。今連隊長にお礼を申し上げ、今後の捜査協力許可を頂いたので今後度々招請しますがよろしくお願いします。」と言われたので、


「分かりました!」今後の捜査活動について協力する事を伝えました。


自衛隊関係者にも集合が掛かり、連隊長在席の元、第二係主任『尾方三佐』から、先程の捜査課長の注意事項が再度述べられ、今後警察に協力する旨、周知徹底された。


私は、山本三曹と病院に戻ったが、看護婦さん達が噂を聞き付け、事ある度に仔細を求められたが、私は井戸に落ち込み、自力で脱出した事に留め聞かせた。


私が体験したこの非科学的な出会い…自衛隊に入隊しなければ…今頃は美しい瀬戸内の備讃瀬戸での漁獲の自慢話、漁師仲間と時を忘れて酒を飲み、、嫁取り話や、四季折々の村の行事、特に秋祭りのリーダ及び役割分担と踊りの練習日の日割り等、協力し合って日々過ごしているだろうに…然し考えれば今も瀬戸内の島での生活ならば文字通り島国根性…山に架かる雲の状況で翌日の天気及び波の状況を知り、又美しい夕日で長期の天候を当て正に島国根性は育成されたが…然し私は島を離れ、姫路部隊に配属、その天空に聳える姫路城を朝夕望み、今から四百年前この地で織田か?毛利か各大名の駆け引きの戦さ、軍馬の嘶き、武士の動きを想像するとそのドラマの中に己が潜入?目前に豊臣秀吉の軍師『竹中半兵衛』『黒田官衛』の軍略説明と相手城主の動き特に『三木城主・別所長春』『取鳥城主・吉川・』『備中高松城主・清水宗治』等の兵糧攻め又は、水攻め等の苦難に追い込まれ一族郎党の動き等を学ぶ事で、私の将来に関予するだろう人生教訓を知る機会も得ました。


人生は正しくドラマ、時、場所、その時に於かれた行動、人々との出会い、各々、目に見えぬ個々の運命がある事を体験しました。


日々の生活においても予期せぬドラマとの遭遇…その中から想像もしない今回の異常体験で聞かされた被害者の無念の叫びを肝に命じ、これらの事件がらみを説き明かす為、警察関係の署員との出会い会話等を考えると又別な精神的負担等々を抱えての入院…終生忘れられない、療養生活となりましたが院後の治療での回復も早く六日後には退院を迎え、病院関係の皆様に御礼を述べ、同期生の待つ姫路部隊に帰り日々の訓練に入って行った。


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