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その盗賊、美少女でチートだけど中身はおっさん  作者: 渡邉 慶太朗
はじまりの盗賊
8/9

みんなのヒミツ

 飛行船の内部は漆喰のようにコーティングされており、その質感は日本の一般的な住宅と何ら変わりが無かった。床は大理石で埋め尽くされており、天井には照明らしき発光体が埋め込まれている。電気とは違う、暖かな光が空間を満たしている。

 どこをどう見ても機械類が無いのだが、この物体はどのような原理で飛行するのだろうか、甚だ疑問である。

 入口の正面には豪奢な木製の扉があり、その左右には細い通路が伸びている。

 チーが扉を開くと、そこには巨大な楕円形の机と椅子が並べられていた。上座の背後には徽章が描かれた巨大な旗が掛けられている。

 社長であるチーは上座に座る。その右隣りにウー姐さん、左にエンリケ。どうやらこの二人がツートップで間違い無いらしい。エリカはウー姐さんの方に向かっていった。


「エンマ君は、とりあえず暫定的にウー姐さんの隣ね」


 私は軽く頷いて、ウー姐さんの隣に腰掛ける。すると何やらフカフカした感触が私のケツを包み込んだ。

 穴の開いたクッション。シゲクリニックという文字。これは治療用の……。


「あっ! しまった……!!」


 エリカは顔を真っ赤にしてドーナツ型のクッションを回収した。たかがドーナツ型のクッションに対して顔を真っ赤にして過剰に反応するその理由、私は気付いてしまった。

 どうやら元々ここはエリカの席だったらしい。そして、この可愛らしいお嬢さんは痔を患っているらしい。

 図らずともデリケートな地雷に触れてしまったようだ。適切な対処が求められる場面だが案ずる事は無い。私の中身は29のおっさんである。膨大な知識と経験によって最適な回答が導き出される。


「骨盤矯正クッションか。女性は気にするからな。骨盤やら姿勢やら」


「ま……まぁね!」


 時すでに遅しである。必死に取り繕っているが、動揺が隠せていない。私は全く気にしないのだが、年頃の女性にしてみれば、痔である事を他人に知られるのが恥ずかしいと感じるのは当然だろう。


「んーとね、それは痔の治療用のクッションだよ?」


「言わないでよ!!」


 チーが頬杖を突きながら放ったその一言で、私の渾身のフォローとエリカの遅すぎた誤魔化しが全て吹き飛んだ。それにしても結構デリケートでプライベートな問題だと思うのだが、ハッキリと言いすぎだろう。


「みんな知ってる事だからね。今隠した所でいずれ知る事になるから。それに……アタシ達は家族も同然。エンマもこれから家族になるんだから同じさね。それにアンタは隠し事が苦手なんだから、余計な心配が無くなってスッキリしただろう。むしろ感謝しな」


「いや……確かにそうだけど……でもエンマ君には知られたくなかったなぁ」


 チーの容赦ない言葉に涙ぐむエリカ。そりゃあ年頃の女の子なら隠したいと思うのが当然だろう。ましてや知り合って間もない異性が相手なら尚更。

 というか私は家族になる事が確定しているのか。同意した記憶が無いのだがな。


「遅れました!」


 息を切らしたシュナイダーが部屋に駆け込む。顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうなエリカを見て、困惑している。


「何があったんですか?」


「いつものアレだ」


 エンリケが面倒そうに答えた。いつもの事なのか……。


「あぁ、また社長が姫の事をイジったんですね」


「失礼な小僧だね。アタシはただ家族の心労を取り除いただけだよ。ちなみにエンマ、その男は同性愛者だから気を付けな!」


「あ、大丈夫です。エンマさんは外見が女性なので対象外です!」


 エンリケの隣に座りながら爽やかな笑顔をこちらに向けるシュナイダー。白い歯が印象的な好青年。真面目そうで顔も整っており、身長も高い。 まぁ間違い無くイケメン。モデルでもやっていそうな雰囲気。女性からすれば最高の優良物件らしき彼。

 それがまさかのホモである。


「とりあえず全員揃ったね。ウー。会議開始だ」


 ウー姐さんが立ち上がり、澄んだ声で宣言する。


「えー、只今より第5回全体会議を開始する!」

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