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『大好き』に届く話

一番の友達っていうこの距離感

作者: 真白まろ

2017/1/18 改稿

「ねえ見て見て。空一面に。凄いね」

「おう。そうだな」

 俺と優馬は今、星を見に来ている。

 男子六人でキャンプの夜、丁度キャンプ場が山だったので、日頃から仲のいい俺と優馬は外に出ていた。

「きらきらしてるね。すっごく綺麗」

「おう」

 相槌を、打ってみる。

 俺達は、あまり話さない。

 というか会話をしない。

 お互いに、一方的に話をする。

「……お前さ、最近どう」

「え、急にどうしたの。最近って? 僕変な噂でも流されてるかな」

 特にこれと言って聞きたいことは無かった。

 会話はしなくても、なんだかんだ一緒にいるし、特別な変化がないのは知っている。

「ええっと……そうだな。最近僕ね、アロマキャンドルとかぬいぐるみ好きだよ」

「それ、昔からだろ」

「違うよ。両方最近だよ」

「そうかよ」

 優馬は昔、女友達が多かったせいか、可愛いものが好きなのだ。

 俺は別に人の趣味に興味はないが、周りに、優馬の趣味をどうしても突っ込みたいというくだらないことを考えるやつが山ほどいたので、一蹴してやったのを覚えている。

 助けたのではない。

 俺の周りにいたから迷惑だった。

 ただ、それだけの話である。

「今のお気に入りはね、くまかなぁ」

 おそらくふりふりの服を着せられた綿の塊に思いを馳せる優馬に少し疑問を抱く。

 ぬいぐるみ、か。

「ぬいぐるみって何がいいんだよ」

「ええ、いい所ばっかだよ。可愛いし、可愛いし、可愛いし……」

「可愛いしか出てこねえんじゃん」

「違うよ!」

 俺の一言はぬいぐるみ好きの優馬を少し怒らせたようで、長々とぬいぐるみの良さを語り始めた。

 めんどくさいな。

 俺はぬいぐるみの利点とかそういうの聞きたかっただけだ。

 ほかは興味無い。

「ぬいぐるみいるとあったかいし、寂しくないし」

「うるせえなぁ。女子みたいな事言ってんなよ」

「僕は男ですが! うるさいって言うのに関しては聞いてきたのそっちだからね!」

「あーはいはい。悪かったよ」

 またまた語り始めたので放っておく。

 優馬との付き合いは長くなる。

 けど俺は何も優馬のことを知らなくて、それに俺しか優馬のことを知らない。……それが真実ってのはなんだか寂しいのかもしれない。

「ぬいぐるみが必要だな」

「興味湧いてくれた!」

「食いつくな。鬱陶しい」

「嬉しかったの!」

 今度は友達と趣味が合ったことの喜びについて聞かされる。

 こいつ本当にうるさい。

 星を眺める。

 俺は星のことなんてこれっぽちも知らない。

 星とか星座の名前も詳しくないし、何がどこに位置してるとかも知らない。

 でも、星は身近な所に存在していて。

「お前星だな」

「はい? え、何の話」

「お前は寂しいやつだってこと」

「酷い」

 多分俺はこれからもこいつを知らないままで、これからもこいつの隣にいるんだろうな。

 それだけは、分かるよ。

 星が明日も空に現れるように、優馬も俺の前に現れる。

 そんな日常が続くのは、楽しくて。

 この距離が丁度いい。

 この距離が、俺と優馬なんだ。

一番の友達って大切ですよねっていうお話でした。ご愛読ありがとうございました。

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